Ⅳ
そして、人間は悲劇を迎える。翌朝、想像していた通り悲劇はやってきた。
男は研究所でその時を迎えた。
「魔女が暴走したぞ!」
「早く、早く鎮静剤をッ」
「無効化の武器もあったはずだろ!?」
走り回る研究員。とうてい起こるはずのなかった事態に誰もがうろたえていたのだ。
「おい! お前も早く……なんだよ、それ」
男に話しかけた研究員は、いやに落ち着いた態度、そして手に持つ赤い宝石に違和感を覚えた。
「ああ、これか? 対魔法武器やらグッズは幸いにここ、研究所にしか保管してない。よかったよ」
男は笑う。どうやら魔女は城の外に出たようだ。
ああ、ならもういいかな。こんなもの、あっても仕方がないのだから。
男は笑う。そして願う。
もう、こんなものを作らなくてもいい世界に願いを寄せて。
「燃えちまえ」
研究所から火が上がり、研究資料もたくさんあった宝石も、そして対魔法武器も消失した。
そして、魔法を研究できる人間も焼け死んだ。
森はその様子を静かに見守っていました。
一人の男を受け入れ、そして数年後、また一人の男を受け入れました。
今度やってきたのは女の子。女の子を受け入れるより先に、森はもう一人、男を受け入れました。
そして、最後に女の子を受け入れました
迷いの森と呼ばれたその森は、今でもそこにあり続けます。
この話は
「僕と彼女」に続きます。




