腐海の底(詩)
ナイフが体を切り刻む
たった13の命が尽き果てる
どうして逃げられなかったのか
それだけが悔やまれる
強い者から弱い者へと
卑劣さだけが強調される
動き始めた自我は止まらない
青黒い淀み
前兆はあったのに
止められなかった
助けられる者はいた
助けられる社会はあった
それでも丸裸にされ
闇夜にこっそりと
それは実行された
時に手の届かない物事がある
ビデオメッセージの前で
ひざまずく男
天地がひっくり返り
星が降り注ごうとも
救われない命はあった
今もどこかで
13の命が悲鳴を上げている
拾われないメッセージを
送り続けている
それに気付いてやるのが
おれの仕事で
あんたの仕事
逃げ込んだ先で
包み込んでやるのが
社会にできること
腐海の底には
人の生きる場所があると
少女は言っていた
どこにでも必ず逃げ場はある
逃げろ
立ち向かうことなしに
諦めることなしに
逃げろ
逃げろ