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俺が《フリーター》で彼女は《勇者》で。  作者: 鷹津翔
第1章 異世界の洗礼
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第6話 《フリーター》、初体験をする。

「う? う〜ん……。なんだ、何が起こったんだ? 」


 魔法陣の光に包まれた後、番野つがのは青々とした広大な草原を背にして目を覚ました。


 つい先程まで森の中を歩いていた番野は、自分の置かれている状況が理解できず、慌てて体を起こそうとする。が、体の上に何かが乗っているため起き上がる事ができなかった。


「なんだこの重いもんは……」


 番野は手を自分の体と重しとの間に入れて押し上げる。その時、番野の両手が柔らかい、弾力のある塊に触れた。

「んぅっ……」


(何かエロい声がしたな……。って、ん? 声がした? それに、この感触は……)


「むにゅ? て、ま、まさか……! 」


 そして、番野は先程「重い」と言ってしまった『もの』が何かを改めて確認する。


 その『もの』はとても端整な顔立ちをしており、ロングストレートの柔らかい色合いの流れるような茶髪がその『もの』の体に沿って広がっているので、少し成長の早めな少女の体のラインが髪によってくっきりと浮かび上がっている。


 さらに、服装は動き易さが重視されているために下着の上には薄手のシャツと、白を基調としたジャケット。そして、赤がメインのスカートを身に付けている。


 そのせいで、今番野の両手にはいたってダイレクトな感触が伝わっているのだ。

 つまりそれは少女であり、もっと突き詰めて言えば


「みさ、っ……!! 」


 美咲みさきぃ!? と、叫びそうになったところで番野は口を閉じた。


(危ない危ない。あのまま叫んでたら死亡ルート一直線だった……。まあ何はともあれ死亡ルートは避けられた訳だから、安心して美咲を俺の上からどかそう)


 そうして、美咲を自分の上からどかそうとした番野だったが、美咲をどかして地面に下ろす行程で手を滑らせて地面にドサッと落としてしまった。


 それによって美咲が「おふっ」と間抜けた声を上げる。


(や、やってしまったぁぁああああ!!?)


「ぅん? あれ、ここは……? 」


 そんな番野の考えを知ってか知らずか、目を覚ました美咲はキョロキョロと周囲を見回し、置かれている状況を理解した。


「どうやら、森からは抜けれたらしいわね。あとは誰がアレをやったのかを突き止めなきゃ」


(はぁ良かった〜。気付かれてなかったか……)


「ねえ。私が眠ってる間に何かあった? 」

「い、いや!? なんもなかったぜ! 」

「そう? なら良いんだけど」


 先程の出来事がバレそうになって、一瞬顔中に冷や汗をかいた番野は美咲の注意が他にそれた事でほっと安堵の息を漏らした。


 だが、そうそう安心してもいられない。なぜなら、番野と美咲はまだ自分達を森の外へ出した人物の見当すらついていないからだ。


 それに、番野は気になっていた。自分達を森から出した何者かがなぜそうしたのか、何か狙いがあっての事ならなぜまだ仕掛けて来ないのか。それは美咲も同じのようで周囲に気を配っている。


(俺達をこんなところにわざわざ移動させたって事は、そいつには何か狙いがあるはずだ。それに、ここに移動させたって事は、そいつはこの近くにいるという事になる。だがどうしてだ……? 森の中ならまだしも、こんな遮蔽物しゃへいぶつの無い開けた場所でどうして見つけられないんだ? )


 ここで番野は自分達がすでに『誰か』の術中にはまっている事に気付いた。


「美咲! 」

「うん、分かってる。対処は私に任せて」

「頼りになる《勇者》様だぜ」


 2人の間に緊張が走る。いつ、どこから攻撃が来ても対処ができるように。

 すると、『それ』はすぐに来た。


 だが、『それ』はただの攻撃ではなかった。いや、“攻撃ですらなかった”。


 岩すら砕くのではないかと思わせる強靭で巨大なあご、大型トラクター2台はゆうに越す体躯たいくに、それをおおう鎧のような鱗。

 そして最も特徴的なのは、『それ』そのものの雄大さ、恐ろしさを象徴する両翼りょうよく


「おいおい……。こんな展開は初めてだぜ……!! 」

「そんな、ウソでしょ!? 」

「ゴァァァアアアアアアアアア!!! 」


『それ』は、まるで影のように黒い、漆黒の竜だった。

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