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俺が《フリーター》で彼女は《勇者》で。  作者: 鷹津翔
第五章 譲れないもの
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第64話 考えるより動け

 その日の夜の事。

 事を終え、割り当てられた部屋に戻った番野は、明日からの計画を練っていた。

 それは、まず明日何をするかより始まり、美咲の救出、やがてはそれより先の事の見通しを立てておいて大まかな方針を決めておこうというのだ。

 とはいえ、明日の予定は既に本人の中で出来上がっている。

 今番野が思案しているのは、美咲の救出についてだった。

 居場所も何も分からないのに計画を立てるも何もないと大抵の人は考えるだろう。言うまでもなく、番野もその一人だ。

 だったら何故そんな無意味だと思っている行動をわざわざ行うのか。番野には心当たりがあるからだ。

 いや、正確に言うとそれはそれは有力な情報でも何でもないただの予想に過ぎない。だが、そんな物でも信じないとならない程に番野は追い詰められていた。

「くそっ!! どうすれば良いんだ……。どうすればあいつを助けてやれるんだ……」

 番野は頭を抱える。

 先日の襲撃者。そして、村に度々現れるという盗賊。番野はそれらが同一の盗賊団の人間によるものだと睨んでいる。それは美咲を攫った犯人にも共通しているとも考えていた。

 しかし、そうだと考えるといくつかの不確定要素が発生する。

 まず一つは、盗賊団の本拠。これは情報を集めていけばいずれ分かる事ではあるが、最も憂慮すべきは盗賊団の戦力だ。

 美咲を救出するにあたって、盗賊団との戦闘はまず避けられない。そうなると、当然上がってくるのは戦力差の問題だ。

(まあ、前の戦闘で出てきた奴みたいなのが最低でも一〇人はいると考えていた方が良いだろうな。そして、もちろんそれ以上に構成員はいる筈だ。とすると、まず戦力差は歴然。いくつか作戦を考えておく必要があるが……)

 そうして、番野はまた考え込む。

 すると、ドアがコンコンとノックされ、向こうからシーラが番野に呼び掛けた。

「ちょっと良いかい?」

「はい。どうぞ」

 答えると、すぐにドアが開けられシーラが顔を見せ、番野の側まで行くと、飲みなと言ってホットミルクの入ったコップを置いた。

「ありがとうございます」

「良いんだよ。で、どうなんだい? 少しは良い案が思い浮かんだのかい?」

 言われ、番野は驚いた表情を見せる。

「不思議かい? ま、そんな思い詰めた表情をしてたら自ずと分かってしまうというもんさね。で、どうなんだい?」

「いえ。ハッキリ言って全くです。早く、あいつを助けてやらないといけないのに……」

「…………。言うようだけどね、ちょっと考え過ぎじゃないのかい? もっと楽に考えると良いよ」

「考えるななんて、そんなの無理ですよ。だって、仲間が連れて行かれたんですよ? そんなのーー」

「アタシが持ってかれたのは、実の息子だけどね」

 悲しみとも怒りとも取れる感情を言葉に込めてシーラは言った。

 番野はハッとして口を噤む。

「ま、だからどうだって事でもないんだけどね。こんな異常な状況になった時は誰でも慌てちまうもんさ。だけど、こういう状況だからこそ根を詰め過ぎないというのも一つの手じゃないかとアタシは考えるね」

「こういう状況だからこそ……」

「ああ。そうする事で見えてくる物もある。アタシが勧める方法は、考えるより動けだ。気分転換にもなるし、動いている時に偶然答えを見つけてしまうかもしれないしね」

「なるほど。考えるより動け、か」

 その時、外で男の怒鳴り声が響いた。

「盗賊だー!! 盗賊が出たぞー!!」

 それを聞いた番野は、内心でも、表情でも笑った。

 そして、不敵な笑みをシーラに向けて言った。

「シーラさん。俺、ちょっと今から体動かしてきます」

「ああ。気を付けて行ってきな」

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