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俺が《フリーター》で彼女は《勇者》で。  作者: 鷹津翔
第五章 譲れないもの
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第61話 再びの転移

「!!?」

 その時、番野は砲弾が撃ち込まれたのかと錯覚した。

 大木すらも震撼させる大音量の爆音とほぼ同時にとてつもない衝撃波が一瞬で地面を伝導し、森全体を振動させる。

(そんな……! もう来たっていうのか!?)

 番野は連盟軍が攻め込んで来たのかと思い、即座に臨戦態勢を取り、次にいつ砲弾が撃ち込まれてきても対処できるように耳を澄ませる。

 それから一〇秒、二〇秒と過ぎ、番野は一旦態勢を解いた。

 が、緊張は解かない。

(とりあえず、様子見がてら音のした方に行ってみるか)

 そう思い、番野は音の響いてきた方向へ針路を変えて走り出した。

 やがて、番野は森の中でその一箇所だけ草木も何も生えていない大きな窪地に出た。

 だが、番野はその窪地の先にある光景を見て愕然とした。

(いや、これは自然にできた窪地じゃない……。ここは隕石が落ちた跡みたいにクレーター状になっているが、この先に続いている地面の裂け方はどう見ても斬撃痕だ)

 しかし、番野が知っている中でこのような出鱈目な破壊痕を残せる人物はいない。

 可能であるとしたらシュヴェルトか美咲だろうが、シュヴェルトは王都に、美咲は番野が手合わせした中で言えばここまでの力は持ち合わせていない。

 番野は念のため窪地の周りを見て回った。

 そして、見つけた。

 この窪地に向かうように、人間のあまり大きくはない足跡が地面を深く抉るようにして付いているのを。

(という事は、にわかには信じられないが、これは美咲がやったって事だよな? だが、あいつにこんな力は……)

 そこまで考えて、番野は首を振る。

(いや、今問題視するべきはそこじゃない。今問題なのは、足跡がここからどこにも付いていないって事だ)

 とすれば考えられる可能性は自ずと絞られてくる。

 ここで大きな戦闘が行われて、美咲の身に何かが起こった可能性が番野の頭にはまず第一に浮かんだ。

(いくら美咲が普通の状態じゃなかったとはいえ、あいつが倒されるという事は相当な実力を持ってる奴と当たった事になる)


「そう。我々のような者に狙われた事を悔いるのだな」


 それは突然現れた。

「何っ!!?」

 何の前触れも無く、唐突に現れたそれは、言うなり非常に鋭利な刃で以って背後から番野の喉を刈り取らんとする。

 しかし、背に夏目をおぶっている番野は両手を塞がれている為、剣による迎撃は不可能だ。

 だから、番野は迫る凶刃を噛み付いて止めた。

「なんと」

「ふきあい!(隙あり!)」

 予想外の行動に驚嘆する何者かに、番野はバックキックを敢行した。

 が、何者かはそれをするりと躱し、番野との距離を置く。

「逃がすかよっ!」

 だが、そう易々と敵を逃がす番野ではない。

 たった今入手した敵の短剣を片手で持つと、振り返りざまに投擲する。

「ほう。面白い」

 すると、何者かはそれを首を横に捻るだけの必要最小限の動作で避けてみせ、不気味に口元を歪ませた。

 しかし、口以外を覆う仮面のせいで顔まで確認する事は叶わないが、声から判断する限りは男である。

 と、そこで番野は不意に舌に痺れを感じた。

(あの野郎。武器に毒を塗ってたのか)

 そう判断し、ぺっと地面に吐き出した。

「ふむ。良い判断だ。今貴様が吐き出した毒は、強力な神経毒で体内に入ればたちまち神経系を犯していく。だが安心するがいい。我々は貴様らを捕らえに来たのであって殺す為の毒は使っておらぬ」

「捕らえに来た、だって? それは一体どこからの依頼だ?」

「そのような事を喋る訳がないだろう」

「オーケー了解、もうそれで十分だ。お前の言い方とお前の来るタイミング的に、誰かがバックにいる事、そしてそいつが大体どんな奴かも予想がついた」

「ふむ……」

 そうして謎の男は考えるように顎に手を当てる。

 やがて手を離し、とつとつと言った。

「なるほど、貴様のその頭脳、そして戦闘センス。危険と判断し、ここで排除する」

(おっと、そう来た? ちょっと今は分が悪いぞ……)

 そう、表情には表さずに番野が思っていると、不意に背がもぞもぞと動いた。

 すると、背に引っ付いている小動物は番野に耳打ちする。

「転移の準備できました。ランダムですが、もういつでもいけます」

「大丈夫なのか?」

「なんとか。いつまでもしょげてはいられないので」

「了解。そんじゃ、今すぐ頼む」

 番野が背中越しに言うと、足元に人一人分程の大きさの魔法陣が広がった。

「ーーッ!! させるものかっ!!」

 直後、それがなんであるかを瞬時に判断した男は咄嗟に攻撃を仕掛ける。

 が、

「その位置からじゃ、もう間に合わない!」

「……!!」

 そこで、男が一度距離を置いた事が仇となった。

 しかして残り数センチのところで短剣は空を切った。

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