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俺が《フリーター》で彼女は《勇者》で。  作者: 鷹津翔
第四章 王都動乱
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第55話 再び戦場へ

「爆発っ!? まさか、もう来たっていうの!?」

「いや、待て」

 そう言って、慌てて飛び出そうとする美咲を止める番野。

 すると、美咲は振り返って番野に抗議した。

「なんで!? このままじゃ、あいつらがここに押し寄せて来るのよ? 流石の私も、戦いながら四人を守り通す自信はないわっ」

「いや、それは心配いらない。だから、少し待ってくれ」

 そして、番野はプランセスに視線を向けた。

 番野の意図を理解したのか、プランセスはコホンと咳払いをして話し始めた。

「番野様の言う通り、それについては心配いりませんわ」

「そ、そう。なら良いんだけど。じゃあ、行ってくるわね」

「まあ、もう少し待て」

「ーーっ! 今度は何っ!?」

 踵を返していざ向かおうと再び意気込んだ美咲は、またも止められた事で半ば怒った口調で言う。

 番野は、特に気にする様子もなく美咲に言った。

「ちょっと確かめたい事があってな。“そいつ”がこっち側かそうじゃないかで俺達の運命は大きく変わる」

「そ、そうなの? って、“そいつ”? “そいつ”って誰よ」

 首を傾げて言う美咲に「すぐ分かる」と言った番野は、再びプランセスに視線を投げた。

 すると、はいはいといった様子でプランセスは言った。

「ただ今お目覚めになった彼女の事でしたら、それも心配いりませんわ。彼女とは、既に地下で契約を結んでおりますので」

「よし。て事は、俺達に超強力なお助けキャラが付いてくれたって訳だ。こいつはいけるぞ……!」

 そう言って自信有り気な笑みを浮かべる番野に、未だ二人の話している内容が理解できていない美咲は、番野に言う。

「ねえちょっと、さっきから何の事話してるのよ? そんなに重要な事なら、仲間には話すべきじゃないの?」

「まさか、まだ分からないのか? 雷使いで俺の知ってる人間って言ったら、一人しかいないだろうが」

「んー……」

 番野にヒントを出され、考える美咲だが、そのきっかり一〇秒後に諦めた。

「誰?」

「アホか。そんなやつ、まだ一人しか会ってないだろ? シュヴェルト=リッター=ブリッツ。この国の憲兵団長様以外いないだろうが」

「あーあの、ーーって、雷使い? あの人、雷使いだったの?」

 そんな事は初耳だと言う美咲に、番野はシュヴェルトについて何も話していなかった事に気付いた。

「そういやあいつの事に関して何も話してなかったな。だが、今は話す余裕は無いから、とりあえずシュヴェルトが一時的に俺達の味方になってくれたと理解さてくれるだけで良い」

「ふーん。あの人が味方に、ねぇ〜。なら、私達が逃げられる可能性もかなり上がったんじゃないの?」

「ああ。限りなく一〇〇パーセントに近くなる。だが近くなるだけであって確実じゃない」

 そう。今のシュヴェルトは、番野との戦いで番野程ではないにしろ、一時戦闘不能になった程の傷を負っている。

 普通なら戦線から離脱するのが常識的で懸命な判断だが、彼女はそれを押して戦場に立っている。

 戦場に於いて、『IF』(もしも)の可能性は時に命取りとなる。

 いくら強力な力を持っていて、普段誰にも負ける事の無いような者でも、負傷し、万全の力が出せなくなっている場合、その可能性は高くなる。

 何故なら、人間は無意識のうちに負傷した箇所を庇ってしまうからだ。

 庇う事で、動きに無駄が生じ、結果隙が生まれてしまう。

 彼女も一人の人間である以上、心臓を突かれれば死ぬし、首を落とされても死ぬのだ。

 例え死に直結する物でなかったとしても、その分動きが鈍くなる。

 番野は、美咲に言い聞かせるように言う。

「確かにあいつの実力は折り紙付きだ。だが、今は俺との戦いの後で万全じゃなくなってる。まあ、それでも大抵の相手は倒せるだろうが、それでももしもって事がある。そのもしもを、お前が埋めるんだ」

 すると、美咲はむすっと拗ねたようにして言った。

「なんだかその言い方だと、私があの人より弱いみたいに聞こえるんだけど?」

「いや、俺は別にそういう意味で言ったんじゃないんだが……」

「ウーソ。冗談よ。そんな事ぐらい分かってるってば」

(こいつ……。さてはお姫様に遊ばれたのを俺で晴らそうとしてるな……?)

 しかし、ここでムキになって言い返すのは大人の対応ではない。

 番野は、至って冷静に落ち着いた状態で言った。

「そうかい。それじゃあ行ってこい」

「行ってきます」

 そう言う美咲は、先刻までとは比べ物にならない程余裕が感じられる。

(やっぱり不安だったみたいだな。それも無理はないが)

 番野はその美咲の様子を見て、安堵した。

 そして、美咲は悠々と戦場へ赴いていった。

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