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俺が《フリーター》で彼女は《勇者》で。  作者: 鷹津翔
第四章 王都動乱
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第46話 雷竜の剣

「ところで少し話が変わるが、君は、雷竜という生物を知っているかい? 」

「は? 」


 シュヴェルトの突然の問い掛けに、番野は思わず間の抜けた返事を返していた。


 シュヴェルトはその反応を見て当然だと言わんばかりの様子で話し始めた。


「まあ、知らないのも無理はない。これはそれ相応の教養のある人間しか知らない情報だからな」

「おい。今それとなく俺を教養の無い人間だって言っただろ」


 番野が半目で訴えるが、シュヴェルトはそれを無視して説明を始める。


「この竜にはいくつか素晴らしい特徴があってね。彼らは決して死なない(・・・・)。まあ、正確に言えば死んでも蘇るんだがね。

彼らは雷雲から産まれる。そして、彼らの体内には、雷雲から生まれたことで特殊な発電器官が備わっているんだ。その器官から発せられた電気が雷となるんだが、まあこの話は今は関係ないからよそう」


 続けて、シュヴェルトは自分の剣を撫でながら言う。


「彼らは死ぬ時、その発電器官を次の自分に“受け継ぐ”。すると、受け継がれた器官は代を重ねる毎に強化され、さらに強力な発電と放電が可能になる。そして、私の愛剣にはその発電器官が使われていてね。これに使われた竜の年齢は、およそ一〇〇〇年。つまり、これが意味するところはーー」


 そして、柄に手を掛け宣言した。


「この剣は、雷神のいかずちに匹敵する……!!」


 剣を抜き、投げつけるような勢いで地面に突き立てる。


(これはっ……、あの時の! )


 その行動が番野の記憶を刺激したその直後、凄まじい爆音と閃光が戦場を席巻した。


「ぅ〜……!!? 」


 閃光はその後も視界を純白に染め、爆音は耳をつんざき平衡感覚を奪う。


 番野は剣を杖にして何とか転倒を免れるが、敵であるシュヴェルトにはそんな事情は関係ない。地面に突き立てていた剣を抜き、一直線に番野目掛けて走る。


 そして、視界を奪われ何も見えていない番野に容赦の無い斬撃が浴びせられた。


「ぐ、があああああ!!? 」

「まずは一撃……」


 右胸を深く抉られ出血と痛みで思わず倒れ込む番野。

 斬られた右胸を押さえるが、ぼたぼたと血液が指の隙間から浸み出して地面に落ちる。


(ま、ずい……!! この出血と傷……、持ってあと三十分くらいか……? こすい手使ってきやがって、とは言えない。殺し合いだもんな……)


「か、あぁ、あ……」


 膝に手を付き、笑う膝を押さえつけながらなんとか番野は立ち上がる。


 シュヴェルトは剣から滴る血を振り払って、虫の息ながらも立ち上がった目の前の敵に賛辞を贈った。


「その出血でよく立ったな。君は素晴らしいよ」

「そ、りゃ、どうも……。こっちは見ての通り虫の息だ。手加減してくれよ……? 」

「それでは要望に応えて、すぐに楽にしてやる」

「それは、要望に応えてるとは言わないんだよっ!! 」


 首目掛けて振られた剣に全力で剣を叩きつける。


「なっ……」

「はああっ!! 」


 番野の攻撃の重みに耐えかねてシュヴェルトの態勢が揺らいだところに、番野はここぞとばかりに攻撃を叩き込む。


(このタイミングなら確実に入るっ)


 が。


「…………」

「ーーッ!! 」


 その攻撃がヒットした箇所は、シュヴェルトの首でも脇腹でなく、彼女が瞬時に背に回した剣の腹だった。


(背面受け!? だがおかしい。今のは完全に入るタイミングだった筈だ!)


 顔を驚愕の色に染める番野に、シュヴェルトは背面の剣を腕一本で支えながら言う。


「人間の神経系は脳から送られる微弱な電流を受けることで効果を発揮する。つまり、脳からの命令という名の“電流”が伝わるのが速ければ速いほど身体も速く動く。それだけではない」


 さらに、その位置を止めたまま正面に向き直り、剣を片手で押し込んだ。


「ぐうっ……!? 」


(なんて力だ……)


「筋肉を刺激すれば、こうやって一時的な強化もできる。もはや、力と速度で圧倒的に劣る君にはもう勝ち目はない。諦めて投降することだ」

「っ……!! 」

「何。君のことは気に入っているから悪いようにはしない」

「は、ははは……」


 半ば勝利を確信しているような物言いに番野は乾いた笑いを漏らし、シュヴェルトを見据えて言った。


「冗談じゃないぞこの野郎! こっちにだって引き下がれない理由があるんだよ!! 」

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