プロローグ 俺、《フリーター》になりました
『こんな世界なんて終わってしまえば良いのに』
『こんな世界で生きるなんざゴメンだ。死んだ方が幸せだ』
『こんな世界面白くも何ともない』
『そうだ』
『ここじゃない、別の世界に行ければ良いのに』
こんな事を思った人間は、今一度自分の目の前の光景を見てみると良い。
もしかすると、そこには何も書かれていない真っ白な封筒が置いてあるかもしれないからだ。
そして、その封筒を見つけたらまずは封を開けて中の手紙を取り出して欲しい。
恐らく、その手紙には宛先も差出人も書かれておらず、ただこんな文章が書かれている筈だ。
【自分が今いる世界に絶望したか。
こんな世界なら死んだ方が幸せだと思ったか。
こんな世界は面白くないと思ったか。
別の世界、異世界に行きたいと思ったか。
ならば喜べ。
汝にはその資格がある。
もし今より素晴らしい『世界』へ行きたいと願っているのなら、目を閉じて己の願いをこの手紙に込めろ。さすれば汝の前に新たな『世界』が広がるだろう】
ある者は疑いながら、ある者はすがる思いで、ある者は刺激を求めて、ある者は期待に胸踊らせ、その手紙に願いを託した。
これこそ、人生をやり直す為の究極の近道であり、異世界への片道切符である。
そして、異世界に召喚された人間にはそれぞれ異なる職業が振り分けられる。
被召喚者は、振り分けられた職業を駆使して異世界を生きていく事になるのだが、その多くがこう思うのだと言う。
『ああ。あんな事願うんじゃなかった』と。
そしてまた一人、少年が招待状に招かれた。
「ハロー異世界! グッバイ『現実』! って、ん? 何だこの紙切れ。えーと、【あなたの職業をお伝えします。あなたの職業は、《フリーター》です】。
は?《フリーター》!? なんだよ急に!?」
これは、異世界に召喚され、《フリーター》となってしまった不運な高校生、番野護の物語である。