ヴイネント国立貴族学園と秘書兼執事
朝日が登り始めて、世の中奥様方が朝食の支度をしている頃、ローズクォーツ邸は朝から慌ただしい。ティアナはパーティの後にした馬車の中で深い眠りについてしまった。そのため、そのままラブドにベットに寝かしつけられた。
昨日の朝のようにラブドに起こされ、昨日はお風呂に入れなかったので、朝 からお風呂に入っていた。
ティアナが浴槽に浸かって昨日の疲れをいる時のこと。
コンコン・・・
扉をノックする音にティアナは返事をするとラブドが入ってきたのだがティアナは、入浴中とはいえ裸でいる。
「キャーーーー!ラブドの変態!」
ティアナは傍に置いてあった桶でラブドにビシャッとお湯をかけた。
「お嬢様・・・お急ぎくださいませ。お時間が迫っております」
ラブドは髪をかきあげると顔に着いた水滴を拭った。
「 えーーー!髪の毛あらってないよー・・・」
「宜しかったらお洗い致しましょうか?」
ピクッとティアナが跳ねる。パチパチと瞬きをするティアナは少し考えて、顔を上げた。
少し戸惑いながらも頷く。
ラブドはティアナに浴槽に浸かったまま、前を向くよう伝えるとラブドはティアナの後ろに膝立ちになると髪を濡らしていく。
「お嬢様、目を瞑っていてください。泡が目に入ってしまいますよ」
「うん」
ラブドは手のひらにシャンプーをのせ、手で泡立てティアナの頭を洗って行く。シャンプーにバラの香りの香料が入っているのか甘い香りが漂う。
シャカシャカ・・・
丁寧に頭皮を洗う。頭を覆う泡をティアナの目に入らないように濯いでいくと香料を入れてあるオイルを髪に染み込ませるように塗っていくと髪を乾かしていく。髪が乾くと濡れないように髪をまとめて止めた。
「終わりましたよ。ティアナお嬢様が今日からお通いになる学園の制服は置いてありますから、そちらにお着替えになりますよう」
ラブドは髪を洗い終わるとゆっくり立ち上がると出て行った。
「ふう・・・着替えないと学校に遅れてしまうね」
浴室を出るとすでに、制服が木製の人形にに着せられ置いてあった。
制服は白を基調としたAラインの長袖のワンピースで肩は少しふんわりと手首にボタンが付けられ袖の淵や襟元には青い線が入っていてリボンも青、スカートの丈がちょうど膝が隠れる長さで靴下は黒のソックス、黒のパンプスだ。
「よいしょ・・・着れた~って・・・靴これだよね。高!ヒール高!」
迷った末ラブド呼んでから履くことにした。
「えっ・・・と、ラブドは、どこかな?」
考えているとラブドが姿を現すと無言でティアナを横抱きにして、靴を手に取ると歩き出す。ティアナはいきなりのことでポカーンと口を開けてラブドに捕まるしか無かった。
ラブドはしっかりとティアナを落ちないに進むと玄関ホールを向けるといつものように馬車の横にカルト、ウラド、レンジュがいた。
レンジュはティアナが来るとゆっくり馬車の扉を開けてお辞儀した。二人とお辞儀をするとラブドはゆっくり馬車のソファにティアナを降ろし座らせると、馬車を出すように馬車の従者につたえる。
「申し訳ございません。お時間がありませんでしたから。靴を履きましょう」
「えぇ、構わないわ。それよりヒールが高くて歩けそうにないわ」
ラブドはティアナの左足を少し持ち上げると、ゆっくり履かせるともう片方の右足にも履かせた。
「大丈夫です。常に私がいますし、 ティアナお嬢様は五大貴族ですから、執事に手を添え歩いても、不審に思うものはいませんからご安心くださいませ」
ティアナは少し肩の力を抜くと、そう、呟く。
「まもなく、ヴィネント王立貴族学園につきます」
「え?もう?」
ローズクォーツ邸から馬車に乗ってから10分だらずで着く場所にヴィネント王立貴族学園はあるようだ。窓を見るとちらほらと前を行く馬車がある建物の敷地内に入っていくのが見える。そこにあるのがヴィネント王立貴族学園だ。
外装は宮殿のような創りでティアナの邸宅とはまた違う創りで、まるで別世界に来たような感覚になる。
幾つもの馬車が玄関の前で止められ、ここの生徒が建物の中に従者を連れて入って行くのをティアナは遠目から見る。
ティアナの乗っている馬車も、玄関で止められると玄関に向かおうとしていた生徒がティアナの馬車を見ると立ち止まり、ティアナの馬車にお辞儀をした。
馬車の中にいたティアナは何事かと驚くが、すぐに自体を把握した。
つまり、五大貴族の馬車はその家の宝石が付けられているため他の馬車より、豪華な創りになっているため、生徒はティアナの馬車だと、気づいたのだ。
玄関に着くとラブドがサッ降り、ティアナが座っている側の扉を開け、ティアナに手を差し出す。ティアナはその手を支えに降りると、ると優雅に建物の中に入って行った。
学校内は昨日のパーティ同様、ティアナの話で持ちきりだった。
だか、悪く言うものは少なからずいるようだ。
「新たな五大貴族の伯爵のお姿をご覧になられまして?」
「ああ、あんな小さな小娘に何ができるというのだ」
「 旧五大貴族の伯爵の次に地位があったNo.2のフィリップス家を差し置いて今の地位にいる。あの子に何の利点がありますの?」
「けれど、昨日のパーティでは、落ち着きのある行動をしておいででしたわ」
「元は一般庶民だとは思わせない立ち振る舞いだった」
教室内でいろんなティアナの話をしている一方、ティアナはこの日最大の緊張感に体を支配されていた。
ティアナとラブドは学園長室の前に立っていた。
ラブドの後ろにすっぽり隠れているティアナを前に出そうとティアナを少し押すが必死に首を振った。
「ラブド・・・胃が痛い」
「お気持ちは分かりますが、今は我慢してください。事前にカーネリアン侯爵から胃薬を受け取ってありますから」
ラブドはそう言うと学園長室の扉をノックした。
その瞬間ティアナはラブドの燕尾服をキュッと掴んだ。
「どうぞ、お入りください」
キィーー
軋む音を立てながら扉を開けるラブド。ティアナは勇気を出して入った。
「学園長、お初にお目にかかります。今日からヴィネント王立貴族学園に編入することになりました、ティアナ・クラン・ローズクォーツと申します」
学園長は頷くとティアナをソファに座るように促すとティアナの目の前のソファに腰をかけた。
「ローズクォーツ女伯爵様、ようこそ我が学園へお越しくださいました。話は王家から伺っております。この学園は貴族の学校、クラスの編成は爵位ではなく各爵位の地位で決まっておりますわ」
ティアナは頷くのを確認して話を進める。
「各爵位を3分割にし、一番したの位の地位の者、つまり下級。真ん中の地位の者が中級。上のものが上級とし、下級がCクラス、中級がBクラス、上級がAクラスとなります」
ティアナは頷くと学園長は微笑み、席を立つ。
「つまり、私はAクラスということですね」
学園長は頷くとラブドにあるものを渡した。
渡したものは同じ物が2つ。赤色のバッチで赤く塗られ真ん中に、金色でAと書いてあった。
「それは、ローズクォーツ女伯爵様とその従者、ラブドさんの右胸に付けてくださいませ。学年クラスの示しとなります」
バッチの色は青が3年、緑が2年、赤が1年となります」
ラブドはティアナの前に跪き、ティアナにバッチを付けた。
「私からのお話はここまです。お分かりかと思いますが、貴方が編入するクラスには伯爵のNo.2のフィリップス家の娘さんがいらしゃいます。お気をつけて」
ティアナは微笑み、その顔に怪しく微笑みも残し、学園室を後にし、編入するクラスにラブドの案内で移動する。
キーンコーンカーンコーン・・・
学園内に朝のクラスの連絡時間の鐘が鳴る。
「朝の連絡をはじめるぞー!クラス長挨拶!」
「起立、礼!」
生徒はクラス長の挨拶に合わせお辞儀をするとせきについた。
「み、皆も知っていると思うが、五大貴族、ローズクォーツ女伯爵様がこのクラスに編入なされる。な、仲良くするよすに」
生徒は緊張した顔つきになる。それはそのはず、学園で無礼があれば、一家で路頭に迷うかもしれないからだ。
反対に、ティアナとお近づきになれば地位が上がる。
そのためか、クラス担任の先生にも緊張感がうつり、先程から言葉を噛んでいる。
「それでは、中にはいってもらいましょう。ティアナ・クラン・ローズクォーツ中に入れ」
数分前から廊下で待っていたティアナはラブドが観音開きの扉を開けると中に優雅に入ると、ラブドを引き連れ担任の隣に立つ。
「ティアナ・クラン・ローズクォーツと申します。今日からこのクラスに編入となりました。これからよろしくお願いしますね」
ティアナは軽くスカートの裾を持ち上げお辞儀をした。
「えっとー席はカーネリアンとフィリップスの間が空いているな。そのに座れ」
ティアナはチラリとラブドに目をやるとラブドは頷くとティアナは歩き出し、アーシャとフィリップスの間の席に向かい、ラブドに椅子を引かれ座る
「ご機嫌麗しゅう。ティアナ、今日は顔色が優れていらしゃいますわね。学校がおわったら王城で会議だとか。お父様から聞きましたわ」
「ええ、おかげさまで。そうですの、昨日のことで緊急の会議をすることになりましたの」
ティアナはクラスメイトの視線を感じながら話していく。産まれた時から貴族だったかのように、言葉に詰まることなくアーシャとの会話を楽しんだ。
『こんにちは。初めまして、ローズクォーツ女伯爵。私、キャサリン・ フィリップスですわ』
(ドイツ語!)
不意にドイツ語で話しかけられるティアナは一瞬目を見開く。アーシャは何てことを!
という顔のアーシャに微笑みドイツ語で話しかけてきた人物に視線を向けた。
『ご機嫌よう。貴方がフィリップス伯爵の娘さんね。これから、よろしくお願い致しますわ』
ティアナもドイツ語で滑らかに話した。生徒、先生、従者は動揺を隠せずさわめく。
「うふふ、驚かせてごめんなさいね。私、昔ドイツで暮らしていましたの。だから話せて当たり前ですわ」
というティアナを睨むキャサリンに対してアーシャは楽しそうに笑っていた。
こうして、ティアナの新しい学園生活がはじまった。
1時間目、2時間目を苦なく過ごして、休憩の時間をアーシャと楽しんでいると廊下が騒がしくなる。ティアナは面倒くさそうにため息を着く。
「カーネリアン侯爵・・・そこで何をなされているの?」
「え?お父様?!」
名前を呼ばれ、申し訳なさそうに顔を出したのはカーネリアンだ。傍らに燕尾服を来た男性が傍に居た。
「すまない。ローズクォーツ女伯爵、本来ならば、貴方が学校が終わってから会議なのだが、女王陛下に急な外交が入ってしまってな」
ティアナはカーネリアンに微笑み、立ち上がる。
「その前に、会議を済ませ、そして、私の執事と護衛の者を女王陛下の護衛として連れて行きたいという事ですわね。カーネリアン侯爵」
カーネリアンは頷く。クラスメイトはティアナの発言に息を飲む。ティアナが持つ頭の回転と理解に驚く。だが、本当はティアナが予知をして、先に述べただけだが、真実を知らない者はティアナが理解したものだと思い込むだろう。
これもまた、ティアナの策略の一つに過ぎないのだか、先程、ティアナが述べた事は真実だ。これで、ティアナを見下す者も減るだろう。
「ああ、そうだ。女王陛下郊外の間のティアナの執事、護衛に関してもそこで話し合われるこになった、時間がない急ごう」
「ええ、分かったわ」
カーネリアンはティアナの返事を聞くと歩き出し、ティアナもラブドの手を借り歩きだした。クラス内は呆然とティアナ達を見送る。
学園を抜け、ティアナは町並みを走る馬車に揺られながら、今回のことを考えていた。まさか、こんな事態になるとは思いもよらなかった。
『今回は私せいで優秀な人材を奪ってしまった結果ね』
ボソリと呟くティアナを少し戸惑った顔で見守っているラブドも少し、落ち着きがないような顔でもあった。
それもそうだろう、ラブドも先程のティアナの発言で初めて知ったことだった。
王城が見え、橋を渡って行くと既にお城に仕える使用人が待っていた。
馬車を降り、使用人に促され王城へと入って行くと案内されたのは先日ティアナが真実を知ったあの会議部屋だ。
「ティアナちゃんいきなり呼び立ててごめんなさいね。急な郊外が入ってしまって」
悲しそうな顔をしながらティアナに話しかけるオリヴィアの後ろには見覚えがある人が二人立っていた。ティアナは軽く会釈し、指定の席に座った。
「今日の会議は郊外中のティアナちゃんの身の回りについてに絞りましょう。あれこれ話すと危険だわ」
一同一致で頷くとオリヴィアは不安そうな顔りする。だが、ここは不安そうな顔をしている場合ではない。
「ティアナさん、今回貴方の執事と護衛を借りることになってしまったわ」
ティアナは不安そうな顔をしているオリヴィアに首を振った。そんなことは構わないと、示すとホッとした顔だ。
「理由は今回の郊外は臨時会議で軍事や防衛のことが主に話されるの。いつもなら軍の指揮官長、騎士団長が一緒に参加するのだけど、当然のことで参加できそうもなくてね」
「だから、指揮官長候補と騎士団長候補を連れて行こうと考えたのだけどね。その候補は今はいない状態なんだ」
ティアナはハッとし、ラブドを見ると、当の本人は目を伏せている。ティアナは納得した。
「それは、使用人として引き抜いてしまったから・・・」
次第にティアナの声が小さくなる。
「ええ、だから元候補を連れて行こうと言うことに決まってしまったの。だから少しの間ティアナちゃんの家族を借りるわね」
ティアナはラブドの方を見て、ラブドをが頷くのを待つ。ラブドもしっかりとティアナを捉え頷く。
「うん、分かったよ」
フッと微笑むが、すぐにうつむいてしまった。
「あ、あのね。オリヴィア、今回の郊外・・・仕組まれた可能性があるんだ。だから、絶対無理しないでね」
「仕組まれた?!」
全員の声が重なる。
「うん、詳しくはわからないけど誰かが殺される。もちろん、オリヴィアじゃないよ。ラブド達がいるから、逆に返り討ちにあってたから大丈夫だと思うけど、用心はしておいた方がいいかもしれない」
一同唖然だ。ラブドのを険しい顔をしたがティアナが、ラブドに小さな拳でお腹に一発お見舞いした。だが、びくともしなかったのであった。
「まぁ、オリヴィアの安全面はいいとしてじゃ、ティアナちゃんの安全はどうするのじゃ」
ティアナ以外、あ、という顔になる。ティアナは苦笑いでいた。
「い、一応身の回りのことは出来るから、平気だよ。気にしないで」
ずっと丸くなっていた、物体が伸びた・・・というよりはシトリンが起きたのだが。
「・・・そうは・・・いかない」
ファイブライトがシトリンに頷く。
「そうだね。ティアナちゃんは伯爵のトップだ。護衛がいないと分かれば、好機と見て牙を向くよ」
うーんと考え込む。沈黙が流れる中、おずおずと口をティアナが開いた。困った顔をしながら。
「えっと・・・我儘かもしれないけど、顔見知りの方が・・・いいなと思ったけどいないよね・・・うん」
「そうだよな、見ず知らずの者が近くにいては気が休まらないよな」
何やら一人で納得してしまったティアナだったが、オリヴィアの後ろにいた白く燕尾服を着た二人のうち一人が口を開く。
「でしたら、我らにお任せを。女王陛下の執事と護衛はローズクォーツ女伯爵の使用人がなさるということでしたので我らは不要ですし、何より一度会っております」
口を開いた男はティアナに微笑むがティアナはポカーンと口を開けて頭の上に??が浮かび上がっていた。すると・・・
「あーっ!あの時の郵便配達員のお兄さんに装っていた人!」
男性はフッと微笑む。
「え?執事さんだったの?」
「ええ、こっちのものに身を覚えは?」
ティアナの眉間にシワがよると、あー!という顔になる。
「隣にいた無口なお兄さん」
という、印象にか無かったが怖がりなティアナにとってはありがたいことだ。
「彼等の名前は短髪の黄緑のストレートの方がティアナちゃんがいう郵便配達員のを装っていた、セシル・エリミス。同じく短髪で若干天然パーマのティアナちゃんがいう無口のお兄さんがアルパート・ロバーツよ」
ティアナは瞬きしながら頷くとポウッと瞳が輝くととこにいた全員に緊張が走った。