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ヤンさんとの話は続く。
また現実に打ちひしがれていると、
「まぁ、とにかくだ、今回ここに来たのは、物を売ること、それとこいつに生産の基礎を教えてやってほしいんだ」
「生産系とっているのに生産の方法教えるのかい?」
「こいつはいろいろ作れると聞いてテンション上げておいて、なにも調べてないんだ」
「……残念な子やなぁ」
その可哀そうな子を見る目はやめてほしいっす。
「とにかく、簡単な基礎だけでも教えてやってくれないか?」
「いいよ。おもしろい子だし」
「……いいですか?」
「いいけど、生産系はなにを取ってるん?」
「【錬金師】と【裁縫師】と【料理人】です」
「ほう。【裁縫師】は専門外だけど、【錬金師】と【料理人】はまかしとき!」
「あ、ありがとうございます!」
やっぱりこの人は頼りになりそうだ。……好きにはなれないが。
「といっても、どのジョブでも、基礎の基礎は同じやと思うよ」
「というと?」
「生産は、生産するものにあった道具と、生産したい材料を用意すれば、あとは自動でも作れるのよ」
「え?でも、自由度が高いって」
「例えがないとわかりづらいだろうから、【錬金師】の《調合》で『下級ポーション』を作る例を教えてあげるよ」
「は、はい」
「まず、《調合》をするには、道具にこの『調合セット』が必要なんだよ」
といって懐から出したのは、調合といえば!なすり鉢とすり粉木、あと、液体を入れるビーカーのようなもの。
「で、材料として必要なのが、『薬草』が2つ、水がこのビーカー1杯分。それとこのビン」
「ビンですか?」
「そうなのよ。このゲーム、生産したポーション類は入れ物を用意しておかないとなのよ」
「それは面倒くさそうですね」
「そんなことないよ。ビンは『ガラス砂』を《錬金》して作れるんだ。しかも『ガラス砂』は1袋で30L、その量で10個作れるから、1個3Lなんだ。しかも飲んだポーションのビンは空きビンとして持てるからね。売るときに、持ってきてくれたら買い取るっていえばみんな持ってくるよ」
「そうなんですか!」
「まぁ、割って使われるとなくなっちゃうからどうしようもないけど。って『下級ポーション』の作り方だったね。とはいっても、このすり鉢に薬草と水を入れてすり合わせると、光りだして『下級ポーション』が出来るの」
「……っへ?」
「で、ビンをすり鉢に触れさせれば、勝手に中に入るから、これで『下級ポーション』の完成」
「……へ、へぇー」
もっといろいろするのかと思ってた。
「《料理》も大体同じで調理器具と材料の違いでいろいろ変わるんだ。あと、一度完成させれば、結構ショートカット出来るよ」
「……なんか物足りない」
「ははっ!これが物足りなかったら【鍛冶師】になるといいよ。設計図を書けばその形に出来るから」
「もっといろいろ出来るかと思ってた」
「自力でいろいろやろうとした人もいたらしいけど、失敗品しかできなかったって嘆いていたよ。あ、そうそう、失敗品といえば、DEXが低いと失敗しやすいらしいよ」
「DEXはそれなりにあるので問題ないです」
「まぁ、頑張ってみなよ。あと、今言ったことは全部作業部屋に書いてあることでもあるから」
「作業部屋?」
「生産したくても、家とかないし、路上でやるわけにもいかないから、生産者用の建物があるんだよ。そこの共同部屋なら道具の貸し出しもしてるしね」
「共同部屋があるってことは、個人部屋もあるんですか?」
「あるよ。ただ、値段はかかるし、道具は個人で持ち込みだから初心者にはお勧めしないね」
そうか……そんなところがあるのか。
「とりあえず、行って試してみるしかなさそうですね」
「そうだねぇ。でも、もう夜だし、君みたいに狩りもする人が戻ってくるから、道具の貸出ありの共同部屋は混んでるかもね」
「え!?」
「そんなあなたに!こちらの『初級錬金セット』と『初級調合セット』、『初級裁縫セット』さらには『初級料理セット』はいかがでしょう!」
「突然の販売!?」
しかも営業スマイルである。
「YES!これさえあれば、個人部屋に入って作業し放題です!しかも今回はNPCの店では各500Lのところを各300Lでお売りしましょう!」
「安っ!?……くはないけど、なんで安いの?」
そう聞いた瞬間、さっきまでのテンションに下がり、
「……いやね、君みたいな初心者がNPCの店で道具を買ったはいいけど、持ち込みで道具を使うのが、お金のかかる個人部屋くらいだし、君みたいに生産の現実を見て、戦闘ジョブ中心にしようとする人が、お金にしようと売りに来たんだよ」
「そのうち使うだろうから残しておけばいいのに」
「みんな長期的ではなく、目先の楽しみなんだろうね。それに1枠とはいえボックスも埋まるからね」
「そうかぁ。ならそのおこぼれにあずかって買っておこうかな」
「まいど」
「でも、所持金的に1つしか買えないなぁ」
「なんだ。『借金システム』知らないの?ブリザード、教えておいてあげなよ」
シャキーンシステム?
借金。いやな言葉ですよね。でもあえて使っていきます。なぜなら、いいイメージの言葉だとホイホイ使っちゃいそうなんで。
そんな借金システムについては次回。
もっとどんどん進めたいけど、どうしても説明が長くなりがちに。説明することが終われば話はどんどん進め……たいです(願望