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四宝姫伝  作者: 桃姫
プロローグ
4/37

4話:来訪の知らせ

 昼休みとなり、皆、様々な場所で食事を始めた。藍騎は、教室では食べる気にならなかったらしく、公舎内をうろついていた。

「あら、紫藤君。何か、雰囲気変わった?」

後ろからかけられた声に藍騎は振り向く。

「祷村先輩じゃないですか。お久しぶりです」

立原高校のマドンナである祷村香織(いのむらかほり)と藍騎が知り合いなのには訳がある。

「久しぶりって、たったの六日程度じゃない」

藍騎が香織と知り合ったのは、藍騎がこの高校に入学したその日である。この人に関しては、藍騎は他の女子生徒と完全に別枠で考えているため、「女子に話しかけられたことは無い」の「女子」と言う枠の中には入っていない。

「六日、ですか。まあ、俺の体感は久しぶりなんですよ」

藍騎としては四年ぶりだ。

「う~ん、背伸びた?性格も何か少し違う感じがするよ?」

藍騎としては、あまり変わっているつもりは無いが、「男子三日会わざれば刮目せよ」と言う言葉があるように、三日で変わるのだ。それが四年だったら自分でも気づかぬうちに変化していてもの無理は無い。

「そうですか?」

藍騎は自分では気づかないと言うように答える。

「あ、そうだ。ゴールデンウィーク何してたか話そうよ!」

非常に答えにくい質問だ。藍騎は、「家でごろごろしていた」と答えようとした。だが、それは、大きな声によってかき消された。

「いえ、ですから、何をおっしゃっているのか分かりかねますゆえ、お引取りください!」

この声は、英語の担当教員だ。何があったのかと、香織と藍騎は声の方へ行くことにした。

「だから、私は、ここに人を探しに来たといっているだろう!」

そんな声がした。藍騎が四年間で慣れ親しんだ異世界の言葉。

「これは、異世界(むこう)の言葉じゃないか?!」

藍騎の驚嘆の声。それはそうだ。何故、異世界の言葉を使う人間がいるのか分からないということだ。

「か、彼は何を話しているんだ?」

英語教員の言葉に藍騎は、英語教員の近くに居た男との間に割り込んだ。

「どうも、人を探しているとのことですが?」

藍騎は異世界の言葉で男に問いかけた。

「おおっ!キミは、私の言葉が理解できるのだね!」

男は大げさに喜んだ。そして、藍騎にとって驚愕の事実を告げる。

「私は、人を探しています。名をシルフィリア・イリス・シンシア様。我が国の姫です」

藍騎は一瞬思考停止に陥った。そして、思った。

(あのじゃじゃ馬姫!こっちに着やがったのか!)

彼が心の中でじゃじゃ馬と揶揄するのは、シルフィリア・イリス・シンシア姫。四つの国のうちの一つの国の姫だ。

「シルフィの行方に心当たりは?」

男に聞き返す藍騎。男は、暫し訝しげに藍騎を見る。それもそのはずだ。異世界の人間が、姫のことを愛称呼びすればこうなるのは必然。

「シルフィリア様をそのような呼び方をするとは、無礼であろう」

男は藍騎にものを頼む立場であるのに、それを忘れて姫への無礼を問う。見上げた忠誠心である。しかし、男は気づく。

「む、そ、その顔。ま、まさか……勇者、藍騎様でございますか」

男の顔が蒼白に染まる。

「ああ、俺は、紫藤藍騎だ」

そして、藍騎の言葉を聴いた瞬間、泡でも吹いて失神するのではないかと思うぐらいに身体がよろめき、白目を剥く。

「も、申し訳ありません。とんだご無礼を」

男は、深々と頭を下げる。藍騎は、申し訳なさそうに顔をしかめ、

「いや、構わない。それよりもシルフィの行方に心当たりは?」

「勇者様、貴方様には、いつも救われてばかりです。シルフィリア様の行方は私にも分かりません」

男は、本当に死にそうな顔をして言った。どうやら知らないらしい。「しかし、本当にシルフィは部下にも国民にも愛されているな」と改めて実感した藍騎だった。

「そうか。分かった。俺も探そう」

「ありがとうございます。私は一応、この異国、いえ、異界を探してみるつもりです」

男はそう言うと去って行った。

「あ、あの人なんて言ってたの?と言うか、何語?」

香織の疑問に藍騎はあっけらかんと言った。

「人探しだったみたいですよ。まったく、セルヒ語は、難しいですね」

「せ、せるひ語?」

香織はセルヒ語を知らないので当然といえば当然の反応である。セルヒ語とはセルヒリア地方を中心に使われている言葉でその中にはシンシア王国も入っているため、先ほどの男も、セルヒ語を用いた会話をしていたのだ。

「まあ、何は、ともあれ、あのじゃじゃ馬姫を見つけねぇと……」

ボソリと人に聞こえないよう呟いた藍騎の声は、誰にも届くことなく風とともに消えた。


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