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四宝姫伝  作者: 桃姫
3章
33/37

33話:セイリス、フェルア

 藍騎が家に着くとそこは酷い惨状だった。シルフィリア、アルカディア、リンテス、ロゼリア、瑠凪、妙子、香織。この七人が集まっていたのだから仕方がない。さらにここに、マリネス、ミーサが加わり、「混ぜるな危険」のものと「混ぜるな危険」のものを混ぜてしまったような状況になる。

「カオスだな……ていうか、なんで祷村先輩がいるんですか?」

「あら、いたらダメかしら?」

居て当然と言うような顔で居る香織に藍騎は呆れていた。

「それで、事情の説明とかは?」

「受けたわよ。大変だったのね。勇者様」

からかうように「勇者様」などと言った香織だが、藍騎は、その呼ばれ方をあまり快く思っていないので、少し頬が引きつってしまった。

「これで残った見けなきゃならないのは二人か……」

藍騎は、深い溜息をつく。マリネスとミーサを案内してきたため、もう夕暮れである。最近藍騎は、まともに学校に行けていない気がしてならないのだろう。まあ、ゴールデンウィークに四年ほど行っていなかったのだが。


 一方、町の中のあるビルの路地裏にて。

「ああ、シルフィリア様は、どこに居られるのだろうか」

シルフィリアの傍付きである男は、ずっとシルフィリアを探していた。

「あら、貴方は、シルフィリアの側付きではありませんか。お久しぶりでございますわね」

「セ、セイリス様。ご無沙汰しております」

慌てた様子の側付き。まあそれもそうだろう。突如、一国の姫が目の前に現れたのだから。

「こんなところで何をしていらっしゃるのです?」

「いえ、シルフィリア様を探していまして……」

「あら、そうですの?あっ、そうです!藍騎様の居場所はご存知ありませんか?」

慌てている側付きとは対照的に落ち着いているセイリス。

「ゆ、勇者藍騎様でしたら、ここからさほど離れていない広めの学び舎と思われる建物にいらっしゃいました」

それを聞いたセイリスは、にこやかに微笑んだ。

「そうですか……では、夜が明けたら会いに行くとしましょう。貴方は?」

この「貴方は?」は、貴方はどうするのと言う意味である。

「は、はい、私は」

そこで側付きの姿は消えた。

「彼の役目は終わったのです。帰ってもらいました」

「役目?貴方はどなたですの?」

「そうですね……。女神、とでも名乗っておきましょうか」

姿は見えず、声だけが聞こえる。その不可解な存在にセイリスは、首を傾げる。

「女神、ですか。神を自ら名乗る不届き者ですわね」

「ええ、そうとも言えるわね。セイリス・エデン・フェルキス、ここから南方へ少し行ったところにフェルア・イーグ・プリズンがもう直現れます。合流した後に、勇者、紫藤藍騎の元へ向かいなさい」

女神の言葉に、セイリスは、暫し考え、結論を出す。

「そうですね、その真偽は、置いておき、あの悪女が町で暴れたら困りますわね。分かりました。(わたくし)は、フェルアと合流した後に藍騎様に会いに向かいますわ」

そう言った後、もう、女神の声は聞こえなかった。セイリスは、幻聴だったのかとも疑ったが、とりあえず、南方へ向かうことにした。


 南方、と言っても、方向が、まったく分からなかったセイリスは、年輪で方角を計ろうとするも、町中に年輪など見当たらない。仕方ないので、日の光が上がりだしたほうを、自分達の世界と同じ感覚で東と定義して、そこから導いた南へ向かった。


 そして、数分歩いたところにいたのは、フェルア・イーグ・プリズン。「四律魔典」の「風翠華迅(ふうすいかじん)」。小柄な身体と大きな瞳に桃色の頬。ぷっくりと艶のある苺のような赤色の唇。幼い体型ながらに胸はある。

「ん?なぁ~んだ、セイリスか。チェッ、ついてないな~」

「そうでわね。貴方の得意の猫かぶりも私には通じませんからね」

そう、セイリスは、「真偽を見抜く魔女」。先天的に相手の心を読む力を持っていたのだ。それに加え、最高峰の水の魔法。マリクスが、いくら「魂力」による力を持っていても、セイリスに劣っていたのはそれが理由だ。まあ、姫の権利を剥奪された理由は、もう一つあったのだが。

「貴方には、今から、私と一緒に、藍騎様の元へ来てもらいます」

「う~ん。勇者ちゃんかぁ~。いいよ」

あっさりと素直に許可が下りた。セイリスには、その理由が分かっていたが、あえて気にしなかった。藍騎を狙う女の数は、もう数え切れない。だから、気にしたって意味が無いと思っているのだ。

「さあ、行こうよ、セイリス」

「ええ、行きますわよ」


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