32話:ミーサ
ロゼリアとの戦いも行った「柊公園」。そこに、マリネスと藍騎はいた。
「こちらは戦う気は皆無なのですが、なんだか戦闘したほうが良い気配ですね。ミーサ!」
スッと、どこからとも無く、ミーサが現れる。
「ミーサ、ミーサ・ジン・シェイドか」
ミーサ・ジン・シェイド。漆黒の髪を短く後ろで束ねた髪型。口元を覆うように布が巻いてあり。格好は軽装。忍装束と言うとイメージしやすいか。いや、むしろイメージしにくくなった気がしないでもないが。布と布の間に見える肌は雪のように白い。その上には、鎖帷子が装備されていて、肌を護っている。
「コイツは、割と、苦手なんだよな」
そうぼやきながら、藍騎は、覚悟を決める。
「我が祈りよ、大地に轟け!『獄偃月刀』!」
藍色の光を纏いながら、地面より出でた偃月刀。「バルムンク」。実際、普通に言われるバルムンクとは形が完全に異なる。それは、「コールブランド」同様、藍騎が勝手に名づけたからである。普通に言われているバルムンクは、幅広で黄金の柄に青色の宝玉が埋め込まれた剣である。あくまで、別物であるため、藍騎の「バルムンク」は、長い柄の先に三日月状の刃が取り付けられた、偃月刀である。
「我が祈りよ、海風になびけ!『大海の翼』」
そして、蒼色の光とともに背中に蒼い翼が生まれる。その翼は、空へ飛ぶためのものであり、加速をするためのものでもある。飛翔し加速する。どこまでも速く行くための力。
「行くぜ」
藍騎は、翼による加速でミーサに向かって飛ぶ。しかし、ミーサは、あっさりそれを避ける。そして、クナイとナイフの中間のような形をした武器を投げてくる。
「危なっ!」
それを何とか躱し、「バルムンク」を振るう藍騎。
「速いな」
ミーサは、それだけ呟き、高速で振るわれた藍騎の「バルムンク」の上に乗っていた。
「うおっ、こんな真似マジでする奴がいるとは……」
藍騎は呟き「バルムンク」を横に薙ぐ。ミーサは、上に跳んだ。
「空中では避けれないよな!」
悪役っぽい台詞を言いながら藍騎は、「バルムンク」を上に振り上げる。その刃先がミーサを捕らえる。が、ミーサは、「バルムンク」の切っ先を脇の下で挟んで止める。
「うげ、そんなんありかよ!」
「翼はもいだほうがいいか」
ミーサは、藍騎の翼に手をかける。しかし、触ることは出来ない。この翼は、藍騎の「魂力」によって顕現された翼である。無論、「バルムンク」も同様に、「コールブランド」と同じように呼び出したものである。そう、「コールブランド」は片鱗であるというのは、そういうことである。
「そういうこと。なら、来よ『沈暗黒』」
ミーサも同様に、「魂力」を使い、一本の黒い短刀を呼び出した。
「この刃は、命を刈り取る刃」
着地したミーサが猛スピードで跳躍し、一瞬で藍騎の目の前に現れる。そして、その刃が藍騎の首を刎ねようと迫る。
「バルムンク!」
藍騎は、「バルムンク」の柄の部分で刃を防ぐ。
「我が祈りよ、天に届け!『天神王剣』!」
藍騎は、一本だけだときついと判断し、「コールブランド」を呼び出す。
「そこまでですね。ミーサ、下がりなさい」
マリネスが、ミーサを下げる。
「やはり強いですね。魂に刻まれた『秘宝』。それがある限り、こちらに勝ち目はないということです」
そう、藍騎は、「秘宝」を持つ。「バルムンク」や「コールブランド」のことだ。
「勇者、聞きたいことがあります。フェルアは、そちらの元にいますか?ロゼリアは、何も起こしてないところを見ると、そちらが回収したことが分かるのですが……」
「いや、フェルアは知らないな。こっちもセイがまだ合流してないしな」
「そうですか、では、フェルアを見つけるまで協力体制といきませんか?悪い話ではないでしょ」
真意の分からない笑みでマリネスが藍騎に告げる。藍騎は、暫し考えて、部屋割りを決める。
「お前とミーサは同じ部屋になるがいいか?」
「それは、泊めてくれる場所も確保できるということですか?」
藍騎は、「ああ、そうだ」と頷く。藍騎の決めた部屋割りは、四部屋をシルフィリアとアルカディアで一室。マリネスとミーサで一室。リンテスが一室。ロゼリアは藍騎の部屋と言うふうに分けている。残った部屋が一室あるが、何かあったときにまとまっていてくれた方がありがたい。
「ええ、じゃあ、案内してもらえます?」
「ああ」




