31話:リンテス、マリネス
リンテス・バルド・デルタミアと言う姫について。彼女は、龍であるが故に、強い力を持っている。それは、単体で「四律魔典」の二人の匹敵するほどである。では、藍騎はどうかと言うと、単体で「四律魔典」を凌駕するのだが、それは置いておこう。それほどまでに強い力を持つリンテスは、龍の魔法を使える。しかしそれは魔法である。例えば、詠唱と言うものを必要としないロゼリアの「魂力」を使う炎や藍騎の「コールブランド」と対峙すると、いくら力が強くとも攻撃をする前にやられてしまう。よって、彼女は、後方支援である。一般の魔法使いとパートナーの関係における、魔法使い。藍騎がパートナーにあたり、詠唱中の無防備なリンテスを護るのが藍騎の仕事である。そのような戦い方をしてはいるものの、実は前衛向きなのだが。
リンテスが合流した次の日。藍騎は、クラスで質問責めにあっていた。
「おい、あの美少女とはどういう関係なんだよ!」
「あんなことやこんなことしてるかチクショーめ!」
「お前もう帰れよ!家に帰ってイチャイチャしてろよ!」
「リア充なんて爆発すればいい!」
いや、質問責めと言うより、もう、男子の僻みを永遠聞かされる時間と化していた。
「紫藤、何事だ!まさか、男子と組み手でもやっているのか!」
岸谷が大きな声でやってきた。この状況を見て、組み手だという発想がそもそもにしておかしいのだが、この授業間の時間に柔道着を着ている岸谷もおかしい。この学校に、柔道部はあれど、柔道の授業はない。この学校では剣道なのだ。つまり、何故彼が、この時間に柔道着を着ているのか、皆目検討がつかない。
「組み手なんかしてねぇし……って、あれ、祷村先輩も一緒なんですか?」
「私も一緒に来たくは無かったんだけど、何の因果か、偶然ね」
岸谷の後ろに、ニコニコと笑っている香織もいた。
「昨日の噂聞いたから、ちょっと興味が湧いてね」
「あ~、昨日のは、リン……リンテスって言う知り合いなんで、シルフィとはまた別の奴でした」
「へぇ~、二人目」
「いえ、三人目です」
藍騎は香織と会話する。無論、藍騎は、嘘を一切言わない。
「三人。もう一人は、来てるの?」
「さあ?セイのことだから、来ててもうまくやってるんでしょうけど、どうでしょう」
未だ、藍騎の前に姿を現していない最後の姫についての話をする。
「そうなんだ……」
と言う香織の声は、別の声で上書きされた。
「あら、セイリスは、まだなんですね」
と言う透通った声に。振り返った藍騎が見たのは、銀色の髪と蒼色の瞳を持つ女性だった。歳は、二十代くらい。長身で、スラリと長い四肢。大きく実った、豊満な胸。腰元まである銀の髪は神々しく見える。顔立ちも整っており、日本人とは完全に異なる、外人の顔立ちだが、とても美しい。美しい以外、見た目に特段変わった点はない。その女性は、
「マリネス……」
「お久しぶりです」
藍騎は、思った。「会いたくねぇ」と思った奴が次から次へと、何これ、呪いか?と。
「随分と苦々しいお顔をなさっていますね。よほど、逢いたくありませんでしたか?こちらとしては、とても逢いたくて逢いたくてしかた無かったのですが……」
「四人目、じゃなさそうね」
香織の言葉。
「ええ、まあ、敵さんですよ」
そう言って藍騎は、まず、妙子に頼みごとをする。
「妙子。今日も帰りが早くなっちまいそうだ。鞄、家に届けてくんねぇかな?」
「え、ええ。いいけど、何が」
そこまで言った妙子の言葉を遮るように、藍騎が、言う。
「マリネス、場所変えて話そうぜ」
「ええ、構いませんよ。ああ!言っておきますが、こちらは、貴方と戦う気はありませんからね」




