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四宝姫伝  作者: 桃姫
2章
29/37

29話:ドラゴニュート

 ――デルタミア王国歴四百四十四年、白空の月も、もう終わろうとしている頃。藍騎は、空を飛んでいるそれを見て、興奮していた。

「スゲェ……。本物だ……!本物だよ!」

それは、ある種、憧れの存在だろう。所謂、龍。それも、東洋の伝承で見られるような蛇型ではなく、西洋で言われるドラゴンやワイバーンのような羽と角を持つ龍である。

「格好良いな!まさに最強って感じだぜ!」

藍騎は、叫ぶ。すると一頭の龍が舞い降りてきた。ドスンと言う音と、砂煙が上がる。藍騎は、降り立ったそのドラゴンを見て、目をキラキラと輝かせる。

「やべぇ、本物だ……。凄すぎる!」

そんな藍騎に向かって、龍が声をかける。

「おい、人間の坊主。俺たちは、そんなに凄いか?」

「ああ、凄ぇよ!なんたって、龍だぜ!ドラゴンだぜ!」

そんなふうに答える藍騎に、龍は、よく分からないと言いた気な声で、

「意味が分からん。我々は、そんなに凄いものなのか?お前は、三国で、四律魔典を退けた勇者と聞くが」

「そんなに凄いもんだよ!ドラゴンと言えば生態系のトップだ。勇者だ何て言われてるが、所詮人間だ。ドラゴンと比べるなんて恐れ多いぜ。それほどまでに凄いんだよ」

藍騎の言葉に龍は、大声で笑った。

「ハッハッハッハ!そうかそうか!我々は、それほどまでに凄いのか!中々に面白い話だ。ふむ、お前を我が娘と合わせてみたくなった」

藍騎は、「えっ、龍の娘?」と戸惑ったが、会わせてもらえるなら会いたいところだった。少しでも強い仲間が欲しいからだ。

「呼んだかい、オヤジ」

砕けた口調に反して、艶かしい容姿をした美しい女性。

「おう、リンテス。コイツについていけ」

「コイツ?」

そう言って、藍騎の方を見る。

「あんたは?」

「お、俺は、紫藤藍騎」

「シドウアイキ?」

聞きなれない言語の名前に、リンテスは首をかしげた。

「名前に意味はあるのか?」

今まで聞かれたことのない質問に、藍騎は戸惑いながらも、昔、小学校の家庭科の宿題で出た自分年表を完成させるさいに親に聞いた答えを語る。

「藍騎って言うのは、俺の国の言葉で藍色を意味する文字と馬なんかに乗るって意味の文字なんだけどさ。藍は『青は藍より出でて藍より青し』って言葉があって、藍って青い花から取れた染料は、藍より青いってことから転じて弟子が師匠を超えることなんだ。俺は、その超えられる師匠なんだが、まあ、いい弟子を作れるほど強くなれって意味だ。騎は馬に乗り、騎士のように強くなり愛しき人を護れるようにって意味。要は、強くなって愛しい人を護れる男になれよ、って意味で親がつけてくれたんだ」

「なるほど、良い名前だ。藍騎。ワタシは、リンテス・バルド・デルタミア。リンテスは、ワタシたちの古代言語で『祝福』と言う意味だ」

古代言語とは、「龍言語」のことで、龍族が会話のために用いた、この異世界において、最も初めに話された言語だと言われている。

「ワタシは、ちょっと出で立ちが特殊でね」

リンテスは、徐々に容姿を変貌させる。まず羽が生え、角が生え、そして、全身が鱗に包まれていく。そして、完全な龍になる。

「ワタシは龍と人間の間に生まれた子なんだ。と言っても信じてもらえないか」

「いや、信じるさ」

この異世界で一般に龍と人の子が信じられないのは、巨大な龍と龍に比べれば遥かに小さい人間がどうやって、龍との間に子を作るかがわからないからである。しかし、藍騎は、知識として、強大な力を持つ龍が人へ変身できることを知っている。

「へぇ、理由は?」

「理由なんて簡単だ。そこの龍が人へ変身できるからだろ?」

藍騎は、さも当然と答える。まあ、藍騎のようなゲームやラノベを少しでも知る人間は、そう言ったファンタジーに対する知識が豊富だ。特にロールプレイングゲームには、ドラゴンは欠かせない。よって、ドラゴン関係であれば、とても強い、人語を話せるものもいる、人へ変身できる、など、様々なゲーム内知識があるのだ。

「人間の坊主よ。何故知ってる?龍の掟で知るのは龍族だけのはずだが?」

「そうなのか?俺にとっちゃ常識だ」

堂々とした態度で答える藍騎。

「それにしても、龍と人のハーフか。ドラゴニュート……と言うより、変身型ドラゴニュートか」

ドラゴニュートとは、龍人と言われるものだ。特徴として、鱗に覆われていたり、角があったりと概ね、亜人とされる種族だが、リンテスは、完全な人間と完全な龍になれる。だから、間の存在であるドラゴニュートではなく、変身型ドラゴニュートと定義したのだ。

「ふん、呼び方などどうでも良い。それにしても、我が娘を恐れず、否定もしないとは、お前、見所のある奴だ。流石、三国を救った勇者。ふむ、我が娘、この国の姫であるリンテスを連れて行くがよい」

「えっ、姫……。えええええええええええ!」

藍騎は、姫であることを気づいていなかったようだ。

「ふむ、では、頼んだぞ」


 こうして、藍騎は、リンテスとであったのであった――。


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