24話:四律魔典「フェルキス強襲」
――フェルキス王国歴四百四十二年、ブラオの月。「四律魔典」は、フェルキス城に来ていた。参謀はマリネス。特攻はロゼリア。奇襲はミーサ。陽動はフェルア。四人の目的は、フェルキス城にあるとされる「蒼き宝石」、またの名を「ガブリエル」。かつてディスタディア王国にあったとされる四つの宝石の一つ。
「けっ、あたしは、勇者を殺しに行くぜ」
ロゼリアがマリネスに言う。しかし、マリネスは、
「ダメよ。貴方は、あくまで兵隊を全員相手にしなさい」
「何でそんな面倒なことしなきゃなんねーんだ?」
ロゼリアは不満そうに言う。マリネスは、あくまで笑みを浮かべて、
「貴方じゃ勝てないからよ」
とさらりと言った。ロゼリアは、激昂するが、つい二ヶ月前に引き分けたことを思い出して何も言えなくなった。
「フェルア。貴方はか弱い子を演じて敵を引き付けときなさい」
「うん、分かった」
無邪気な笑顔で明るく答えたフェルア。彼女こそ、四人の中で、最も性格の悪い「悪女」である。その実態を藍騎は、この異世界で知ることはなかったが。
「最後にミーサ。貴方は侵入し、ガブリエルを奪ってきなさい」
「了解」
ミーサは、短い答えを返すと、すぐさま行動に出た。
フェルアは運がなかった。彼女の本心は、何重にも被った猫で隠れているのだろうが、それは所詮、表しか見られない人間にしか通用しない。人の心を見透かす、「真偽を見抜く魔女」にして、果てない水の使い手「悠久水天」の称号を持つフェルキス王国の姫には、まったく通用しなかった。
ロゼリアは、フェルキス王国の兵隊の大多数を相手に、よくやっていたと言える戦果を挙げた。
ミーサは、宝石を護るシルフィリアに足止めされ、目的達成ならず。
そして、マリネス。彼女は、藍騎と対峙していた。
「はじめまして、勇者さん。私は、『四律魔典』の一柱。『氷結深蒼』のマリネス・エデン・フェルキスよ」
「フェルキス?!お前、この国の……」
藍騎は、マリネスの本名を聞き、驚きの声を上げる。
「ええ、かつて、この国の姫だったものよ。才能不足で妹に継承権を奪われてからは、国を出たけれどね」
祖国への反乱。それを平気でやってのける女。それがマリネス。
「ふふっ、勇者。私は、貴方と戦う気はないわ。そうね、いいことを教えてあげましょう。今、仲間が、宝石を奪いに行っている。おそらく、シンシアの姫と戦っているでしょう。救いに行きなさいな」
「はっ、敵の言ってることを信じると思うか?」
藍騎は至極当然なことを言う。
「ええ。信じると思いますよ。ふふっ、私は、貴方の味方ですもの。それと、これ、貴方のものでしょう」
マリネスが見せてきたのは、ロゼリアとの戦いのさいに砕け散った、藍騎のネックレスである。
「それは砕けたんじゃ……」
「修復しましたよ」
あっさりと告げるマリネス。にこやかに、それでいて、どこか嘘っぽい。
「貴方の大事なものかもしれませんからね」
「いや、えっと、ありがとう」
「いえいえ、それでは、向こうの手助けに行ってきてください」
藍騎は、走ってシルフィリアの応援に駆けつけた。
その後、マリネスは、或るものを城から盗み出していたのだが、それは別の話だ――。




