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四宝姫伝  作者: 桃姫
2章
20/37

20話:太陽と煉獄、連なりし魔典

「けっ!面白ぇ!」

ロゼリアは、紅の炎を纏わせた「プロミネンス」で藍騎を殺しにかかる。それを藍騎は、振り払った「コールブランド」で弾き飛ばす。「プロミネンス」が纏っていた炎が藍騎に飛来する。

「あちぃっ!」

高温の炎を手首に浴び、怯むが、藍騎は、それでも、ロゼリアに攻撃を仕掛ける。

「ウォオオオッ!」

防御など考えず、唯、攻撃のために、大振りで隙の大きい攻撃を藍騎は放った。

――ドシャン

そんな音ともに、先ほどまでロゼリアの後ろにあった木は切り倒された。しかし、ロゼリアは、藍騎の攻撃を躱していた。

「ふんっ!これで終わりだぜ!」

ロゼリアが黒い炎を纏わせた「ゲヘナ」を藍騎目掛けて振り下ろす。

「ちっ!」

藍騎は、咄嗟に「コールブランド」を地面に突き刺し、それを軸に、自身の身体を剣の向かい側に剣の上を通して移動した(何を言っているかと言うと、藍騎は、地面に剣を突き刺し、柄に体重をかけ逆立ちのように柄の上になってから逆側に着地したのだ。様は、柄の上で側転したと言うこと)。

「けっ!外したか……。でも、これなら、どうだっ!」

ロゼリアは、紅の炎と黒い炎を融合させた。それに併せ、剣も同様に一つに混じる。

「『紅黒煉獄(ゲヘナ・ブレイズ)』っ!」

「おいおい、そんなのありかよ」

藍騎の動揺に、ロゼリアは舌なめずりをしていた。そして、一つになった剣を両手で握る。カランカランと両の手に付いたままの枷がぶつかり音が鳴る。

「紅と漆黒の炎に焼かれて死ねぇ!」

「簡単に死んで堪るかよっ!」

ロゼリアの剣が放つ高熱の紅き炎と禍々しい黒い炎を藍騎は、「コールブランド」で撥ね退ける。剣と剣がぶつかり合い、キィンキィンとけたたましい高音が辺りに響く。

「炎天導け『太陽』、地獄導け『煉獄』、紅の夜、漆黒の空、我が魂に『炎』は燈る」

ロゼリアが何かを唱えた。

魔典煉獄(グリモワール・ゲヘナ)

そして、様々な炎が生まれる。それは、所謂、魔術や魔法と呼ばれるものである。その威力は、絶大だ。敵が魔術を使えば、それが普通の人ならば絶体絶命の危機と言えるだろう。しかし、は藍騎、普通ではない。藍騎は、もはや、人を超える存在。超人と言っても差し支えない存在。右腕に力を集める。そして、拳を突き出す。

「ウオォラ!」

それは、ただのパンチだった。藍騎は拳を突き出しただけだった。しかし、ロゼリアの放った炎の魔法は、消し飛んだ。

「げっ!相変わらず出鱈目なやつ!だけど、そこが、いい!」

再び剣を振るうロゼリア。藍騎は、「コールブランド」で迎え撃つ。ギュイィンと音を立てて、「コールブランド」が震えた。強く上から打ち付けられたことによって、その衝撃は、藍騎にも伝わる。藍騎の両の手が痺れる。

「へっ、どうだ?これで剣は持てねぇだろ?」

ロゼリアは、自身満々に無い胸を張って藍騎に告げる。

「まだだぜっ!」

藍騎は思いっきり地面を蹴り上げる。無数の小枝と木の葉、土が頭上を舞う。それが一瞬だがロゼリアの視界を奪う。

「これでも喰らえっ!」

藍騎は、己が剣を蹴り飛ばす。真っ直ぐにロゼリアに「コールブランド」が飛ぶ。

「なっ」

ロゼリアは、自身に当たる寸前に急所を避けるように、横に転げて躱した。ロゼリアの右肩に鋭い痛みがはしり、血液が吹き出る。そこに、藍騎が馬乗りになり、ロゼリアの両腕をガッチリ押さえる。

「油断大敵、だぜ」

「くっ!離せよ」

少し頬を赤らめロゼリアが言う。この態勢を考えれば分からないでもない反応だろう。藍騎は、腕を押さえている関係上、どうしても態勢的に顔が近くなってしまうのだ。その様子を傍から見れば、藍騎がロゼリアを襲っているように見えなくもない。そんな態勢。

「まったく、ロゼ。お前までこっちに来るとはな……。正直言って、お前とは二度と会いたくなかったんだが……」

「ふんっ、運命って奴じゃねぇの?あたしと勇者は運命の赤い糸で結ばれてるんだろうぜ」

「なるほど、運命、ね」

だったら、そりゃ、「fate」じゃなくて「doom」なんだろう、と、どこかで聞いたことのあるような台詞が藍騎の頭の中に浮かんだ。

「とりあえず、お前は連れて帰んぞ」

「あっ、おい!」

藍騎は、ジタバタずるロゼリアを無理矢理抱きかかえ、所謂、お姫様抱っこで、その場を駆け出した。


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