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四宝姫伝  作者: 桃姫
2章
18/37

18話:始まりを告げる火柱

 アルカディア・ヘル・ディスタディアと言う女性が持っている宝石。様々な役割を果たす宝石だが、彼女がそんなものを持っている理由について少し触れておこう。ディスタディア王国は古来より、特殊な力を持つ石を近隣諸国に売り、国の生計を立てていた。その力を持った石は、強力なあまり、様々な国での戦争を誘発した。それを危険に思った古きディスタディア王は、石を城の奥に封じた。その後、徐々に、出回っていた石は、消えていく。しかし、三つだけ、近隣諸国に残った石があった。ディスタディア王国が自国で保持している一つと併せて、計四つの宝石。それらは、特殊な力があった。それが、今、姫が各自で保持している、藍騎が集め求めた四つの宝石であるのだ。そして、残りの宝石は、アルカディアが封印を解き、自らの道具として多数保持している。「通訳石」や「転移石」など、力は様々。彼女が、この宝石を持つことは、彼女の父も認めたことである。そして、それはすなわち、彼女が父に認められたことでもあるのだ。


 朝食を終えた藍騎は、シルフィリアとアルカディアに家で大人しくしている様にと言う旨を伝えた。

「それは私が大人しくないと言うこと?」

「あたしは了解~」

シルフィリアは文句を言いながら、アルカディアはあっさりと、家に居ることを了承した。


 いつもの時間に家を出た藍騎は、いつもより早く教室についた。当然のことながら、歩く速度や体力が違えば、いつもと同じ時間に出て歩こうが、早く着くのである。

「あら、今日も早いのね」

教室で話しかけられた。誰だろうと首を傾げる藍騎。

「あのねぇ……。昨日も話しかけたじゃないの」

呆れた声でそう言われて、ようやく、思い出す。「昨日の、ちょっと古風な名前でるーの親友の姉の」、と妙子のことを思い出す。

「おはよう、妙子」

「え、ええ、おはよう」

少し言いよどんだのは、名前で呼ばれることに慣れていなかったが故だろう。藍騎は、異世界で勇者として崇め讃えられていたので、「さん」付けや苗字で呼ぶのはダメと言われていた。その癖がまだ抜けきっていない所為で無意識に呼んでいるのだろう。

「知ってる?向こうの公園で火事があったのよ」

「ん?そうなのか?」

藍騎は当然知らなかった。まだ、ニュースにもなっていない。妙子がそれを知っているのは、来る途中に公園、いや、元公園を通ったからである。

「かなり大きな火柱が上がったのよ。近くにいた人は、何か可愛い子が近くに居たとか言ってたけど、それ所じゃなく火を消しなさいっての……」

愚痴交じりに呟く妙子を尻目に、藍騎は、冷や汗をダラダラ流していた。嫌な予感、悪寒を感じ取ったのだろう。

「おい、妙子。火柱って、どの位だった?」

「え?噂だと、木の高さを超えてたって……」

「木の高さ以上の火柱」

藍騎は確信に至った。その火柱を起こした犯人。近くにいた人が目撃した美少女。そこから導き出せる結論は、

「おいおい、予知夢ってやつかよ、ロゼ」

「え?何か言った?」

藍騎の呟きに反応した妙子に、

「何でもない」

とだけ言った。しかし、心情的には何でも無くは無かった。ロゼリア・バル・シェリクスがこちらに来ているという事実を知り、驚きと絶望と焦りが生じていたのだ。

「あいつのことだから、早く見つけねぇと、町ごと焼き尽くすかも知れねぇな」

「焼き?何よく分からないこと言っているの?」

目敏く藍騎の呟きを拾う妙子。しかし、藍騎は、その問いに答えない。いや、答える時間がなかった。藍騎の目端には、窓の外にある一本の火柱が映っていた。あれは、間違い様の無い、ロゼリアの炎。

「悪い、用事が出来た」

鞄も持たずに、藍騎は、教室から飛び出た。

「な、何なのよ……」

妙子の呟きは、誰にも届かなかった。


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