17話:悪夢は予兆となり、そして――
藍騎は、魘され、勢いよく起きた。
「な、何だ、夢か……。まったく、ロゼの奴……。こっちに戻ってきてまで思い出すとは。なんて存在感なんだ……」
藍騎は、ロゼリアと出会ったときの夢を見た所為か、酷く汗をかいていた。
「あの貧乳め……。絶対に、二度と会いたくないな……」
先ほど、容姿の説明では触れなかったが、ロゼリアには、胸があまり無い。それに関して本人は、全くと言っていいほど気にしていない。
「あん時は、あちこち軽い火傷ばっかだし、足とか肩とか切られたし……。ああ!思い出したくもねぇ!」
嫌な思い出ほど心に強く残っているのか、一つのことを思い出すと連鎖的に、ロゼリアとの戦いの日々の記憶が蘇ったようだ。
「見た目は可愛いのに、性格がおかしいからな……。あれで性格がもう少しまともだったら……」
ぶつぶつと願望を呟く藍騎。時刻は六時半。時機に母親が朝食ができたことを知らせに来るだろう。
「本当、何で性格は残念なのか……。戦闘狂の代表って言っていいくらいに戦闘しか頭にねぇし。もっと、女の子っぽかったらなぁ……。いや、女の子っぽいあいつは想像できん。やっぱりなんだかんだで今のあいつが一番好きなのかな……」
なお、この、一番好きと言うのは、一番いいや一番ましと言う表現であり、決して、恋愛感情を表しているわけではない……はずである。
「ああ、思い出したら痛くなってきた」
藍騎は、背中に少し大きめの切り傷が残っている。致命傷で何とか回復させたが、傷跡が消せ切れなかったものである。無論この傷を付けたのは、ロゼリアである。
「最後に別れ際に『愛の証明』とか言われたなぁ~……うっわ、死にてぇ~。どんな痛い奴だよ」
藍騎とロゼリアは、最後まで戦っていたのだ。まあ、倒して、収監されたのだが。
「絶対殺しに行くって言われたし……」
他にも、「あたし以外の奴に殺されたら承知しねぇからな」や「必ず、絶対、確実にお前の元に行ってやる」などとも言われている。もしかしたら、本当に、ロゼリアは、藍騎に恋をしていたのかもしれない。まあ、そんなことを微塵も考えないのが藍騎なのだが。
「ああ、やっぱ、二度と会いたくねぇ……」
一方、藍騎が起きる数時間ほど前。藍騎の住む町の東にある公園。この公園は、数ヶ月前に廃園が決まったものの、工事だ何だと、取り壊しが延び放置されている。それなりの敷地面積と施設で、一時期、人気の施設だったのだが、やはり、そんなものは一時の栄華に過ぎない。そして、その公園の奥。そこに、一人の少女が落ちてきた。
「ここは、どこだ?」
手首に枷をつけたまま、少女は天を仰ぎ見る。濁った星空に眉を顰める。
「星が、見えねぇ……」
乱雑に切った赤紫の髪とアーモンド形の大きな目。瞳の色は、黄金色。中学生くらいの身長に、あまり無い胸。肌は、浅く日に焼けた小麦色。そう、彼女の名前は、ロゼリア・バル・シェリクス。藍騎を求め続けた少女は、何の因果か、藍騎の世界にやってきてしまったようだ……。




