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16話:悪夢
――フェルキス王国歴四百四十二年、ロートの月。藍騎は、走っていた。別の言い方をするなら、戦っていた。もしくは逃げていた、だ。迫り来る炎を纏った刃からひたすら逃げていた。
「燃えろ!」
鋭い刃が藍騎に迫る。剣を振るうのは、薄く焼けた小麦色の肌を持つ美少女だ。ただし、容姿だけなら、と言う言葉が必ず付属する。彼女の赤紫色の髪は美しく、炎を反射している。ただでさえ大きな目は、大きく見開かれている。口元は攣りあがり、鋭い獣のキバのような歯が見えている。狂気と言う言葉がこれほどにまで似合う女がいるのだろうか。彼女の名は、
「へっ、あたしは、『四律魔典』が一柱!『赫灼紅魔』のロゼリア・バル・シェリクス様だよっ!」
自称「四律魔典」にして、自称「赫灼紅魔」のロゼリア・バル・シェリクス。藍騎が逢った中で、最も好戦的で、戦いを愛していた少女。そして、藍騎が知る限り、最も藍騎のことを愛して止まない少女でもある。彼女は、なんと言ったって、強者を愛する。そして、藍騎は、この上なく愛する「最強の存在」なのだから……――。




