15話:異世界の国
瑠凪が飲み物を取ってきたところで、母親以外の全員で話を進めることにした。
「まず、話の始まりは、ゴールデンウィークだな。俺は、ゴールデンウィークに、勇者になった」
瑠凪がソーダを豪快に噴出した。
「うおっ、汚ぇな。後で拭いとけよ。それで、だが、まあ、なんやかんやで、異世界を救うために、四人の姫さんに会い、四つの国を巡り、四つの宝石で、四天王的なのを倒して、世界を救ったんだ」
四天王ではなく、「四律魔典」と言う自称だったのだが、藍騎は、思い出したくないため、あえて「四天王的なの」と表現した。
「そう言う夢を見たの?」
瑠凪が真顔で、机を拭きながら、首を傾げて、真剣に言った。
「現実だわ!」
思わず瑠凪の頭を叩いてしまった藍騎。
「妹に手を上げるとか……」
瑠凪は頬を紅く染めた。どうやら興奮しているらしい。瑠凪の性癖は少々、いや、結構変な様だ。
「はいはい、怒んな、怒んな」
どうやら勘違いしているであろう藍騎は、やはり藍騎。鈍感と言うのは、主人公になるなら必ず持っているスキルなのだろうか。
「それで、アルだが、本名は、アルカディア・ヘル・ディスタディア。ディスタディア王国の姫様。天使と悪魔のハーフで背中に黒い羽と蝙蝠の羽が付いてる。まあ、特徴的には、サキュバスかな?」
「うぉおお、サキュバス!兄ぃ!サキュバス!」
瑠凪は大歓喜である。
「じゃあ、こっちはエロフ?エロフなの!」
「落ち着け、エルフだ。そう易々と触手やオークにやられねぇよ」
そんな無駄なやり取りをしながらも、説明は続く。
「シルフィリア・イリス・シンシア。シンシア王国の姫様。ぶっちゃけエルフだ」
「エロフ!エロフ!」
高いテンション過ぎて暴走する瑠凪。「エロフ」と言う呼び方は、エルフがあらゆるファンタジー系の美少女ゲームで「エロフ」と呼ばれるに相応しい行動をとるが故である。もしくは行動を行われるが故。なので、一部美少女ゲームゲーマーには、人気の高い種族である。ちなみに、だが、シンシア王国の民が全員、このような耳を持つわけではなく、一部王族のみがこの耳を遺伝する。
「セルヒリア地方では、シンシア王国やディスタディア王国よりも西にある国は、あまり亜人っぽいのはいねぇけどな。レルファリスとかは、ほとんど人だし……」
レルファリス帝国の民は、一見人間に見えるが、所謂「鳥人」と呼ばれる種族の一種である。それも、羽が分からないように、普段は普通の手をしているが、羽を必要とするときに、手が腕ごと羽に変わると言う変わった種族である。
「ビスタリアは、人住んでないから除外するにしても、主に、亜人は、シンシア王国やディスタディア王国、フェルキス王国、クランテ共和国、デルタミア王国、ケルキルタ諸島くらいだったな」
位置的には、シンシア王国の北西にディスタディア王国。南西にレルファリス帝国。東にフェルキス王国。フェルキス王国の北にクランテ共和国。東にデルタミア王国。南にケルキルタ諸島となっている。
「まあ、そんな感じの亜人がいっぱい住んでる世界を救って、戻ってきたんだが、どうやら、今度は姫様たちがこっちの世界に来ちまったらしいって言うのが現状だな」
「兄ぃ?何で兄ぃが選ばれたの?」
藍騎が勇者として選ばれた理由は、定かではない。しかし、一つ言えるのは、彼の中にある「力」が関係しているのだろう。
「知らん」
紫藤藍騎と言う人間の中に、少なくとも「四律魔典」と互角に戦えるだけの力があることは確かなのであるから。
「知らないの?」
この日の話し合いはそこまでとなった。




