14話:アルカディアへの感情
藍騎は、アルカディアとの出会いを思い出して、頬を引きつらせた。藍騎としては、「家族だ」と言う感じのことを言っていたのだが、愛の告白みたいな台詞だったな、と今更ながらに自分の語彙力を嘆いていた。
「永遠の愛!兄ぃ!どんな告白したの?」
「そりゃあもう、『世界一美しいお姫様だけ』とか『滅茶苦茶綺麗』とか『愛するよ。何よりも、君の事を』とかだよ~、ねぇ」
概ね間違ってはいない。しかし答えたのは、アルカディアだったので質問の矛先と回答者が噛み合っていない。しかし藍騎は何も言えなかった。別に否定する部分はない。そして、何より、その話を聞いたシルフィリアの般若が如き憤怒の表情が恐ろしくて口を開けなかった。
「藍騎は、そうやって、セイもリンも口説いていたのかしら?」
シルフィリアの言葉に、藍騎は慌てて返した。
「そんなわけねぇだろ!お前もアルの事情についてはある程度知ってるだろ?だから、その……」
徐々に萎んでいく声。
「アルの事情と言われても、彼女がハーフであることぐらいしか聞いてません」
藍騎の表情が徐々に焦りで曇っていく。
「そ、そうだっけ?まあ、こいつにも色々あるんだよ。だから、まあ、その、何だ……。告白って言うか、なんて言うか……」
その話に、急に別の方向からの割り込みが入る。
「ていうか、セイリもリンテも来てるの?」
アルカディアだった。
「分かんない。お前、いつ来た?」
「こっちで言う一時間ぐらい前、かな?」
シルフィリアがやってきたのが、今日の昼すぎとなる。既に二時間を越えたところだ。となると、来ている順番、時間がランダムならば、もはや、来ているとも来ていないとも断定は出来ない。
「法則性、規則性は無いんだろうな……」
がっかりとした藍騎の声が響く。そして、暗い話題を無理矢理方向転換する。
「つーか、一時間前にこっち来て、何で則、るーと友だちになってんだ?」
藍騎が言った「るー」とは、瑠凪のことである。昔は「るーちゃん」と呼んでいたのだが、高校二年生の春に、流石に恥ずかしいと思い「るー」と変えたのだ。
「う~んとねぇ、偶然だよ。藍騎の匂いがする方に行ったらルナちゃんがいたんだよ」
「それ、偶然じゃねぇから!てーか、俺の匂いって?!」
アルカディアを始めとするディスタディア王国の民は、異性、それも意中の異性に関する察知能力は異常で、嗅覚も視覚も聴覚も、その人のことならば、異常に鋭くなると言う特徴がある。まさしくそれは、サキュバスやインキュバスのそれである。
「俺ってそんな臭う?」
そんなことを知らない藍騎は、やや困惑気味だった。
「う~ん、そう言う意味じゃなくて~」
伝えたいことが言葉にならず困るアルカディア。
「ねぇ、兄ぃ?そもそも、アルちゃんって、何?」
知らないで友だちになったのかよ、と言う思いを心に押さえ込み、藍騎は言う。
「それを説明するには、大分時間がかかるぞ?」
「マジ?ちょっ、ソーダ取ってくる」
話が長いと言った瞬間に飲み物を取ってくるあたり、話を聞く気はあるようだ。




