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四宝姫伝  作者: 桃姫
1章
11/37

11話:宿泊の用意

 そんな過去から、彼は、香織に嘘をつくのを止めている。

「まあ、藍騎君が勇者で、歌姫さんが本物の姫だったとしても私は微塵も気にしないんだけど。まあ、強いて聞くなら、勇者藍騎君は、どのくらいの女の子と仲良くなったのかな?」

香織の問いに、藍騎は頬を引きつらせながら、

「えっと、シルフィとセイとリンとアルとカーとロゼとデルミちゃん……」

指折り数える藍騎。

「えっと、仲良くなった女の子でしたら十人くらいですかね?」

四人の姫やメイド、武器屋など数多の人にお世話になった彼は、数多の人と交友関係を持った。その中の女性だけを数えると軽く十人を超えているはずなのだが、まあ、藍騎の「仲良くなる」は、凄く親しいと同義であり、普通に話すなどは、「仲良くなる」の範疇に入っていないのでそう考えると十人ほどなのだろう。

「そ、そう。意外ともてるのね、勇者って」

実際勇者と言うのは、人気者であり、憧れの者であり、恋焦がれる的なのだろう。世界を救った英雄なら尚のこと。

「まあ、俺がもてるかどうかは置いておいて、今の問題は、シルフィの住む場所ですかね」

シルフィリアはこの世界では、一文無しの状態である。いくら姫であっても、通貨価値の違うこちらの世界では金のやりとりには参加できない。ましてや、言語も違うのだ。彼女が普通に家を探すことは不可能。そうなれば、信頼できる誰かの家に泊めるしかない。

「あら、藍騎君の家に泊めればいいんじゃないの?」

「うちは、妹も母も居ますからね。部屋はあるにはあるんですが言い訳が……」

藍騎の父親は、仕事の関係上、外国に派遣され、向こうで仕事をすることが多いため、基本的に家にはいない。だが、母親も妹も、普通に家に居るのだ。連れ帰ったらどうなることか、藍騎には予想が簡単につく。

「でも、藍騎君の家以外だと余計心配でしょ?」

香織の言葉も藍騎の思っていたことを的確に表している。

「そりゃ、そうですけど……」

「だったら持って帰れば……いえ、連れて帰ればいいじゃない」

「なんですか、持って帰るって、まあいいですけど」

そう言ってから藍騎は、自分の携帯電話の連絡帳から母親の電話番号を選び、電話をする。

「それにしてもいつ振りだよ、母さんに電話するなんて……」

藍騎が電話をすること事態珍しい。それに藍騎が母親に連絡をするのは、藍騎の感覚で約五年ぶり。前に電話をしたのは、入試の合格報告だ。

『もしもし?藍騎。どうしたの?』

「あ、母さん?空き部屋にさあ、泊まれる準備しといてくんない?」

『いいけど、何?友だちでも泊まりに来る?』

「うん、まあ、」

友だちかどうかはともかく、泊まる準備をしてもらうところまでこぎつけた。

『でも、藍騎が友だちを連れてくるなんてどう言う心境の変化?いっつも友だちを連れてくるのは瑠凪の方だったじゃない?』

瑠凪は、藍騎の妹である。交友関係の広い彼女は、多くの友だちを家に呼ぶ。

「特に理由は無いんだけど、そいつが困ってるから」

『分かったわ。一部屋でいい?』

空き部屋は六部屋もある。一階に二部屋。二階に四部屋。そのうち、二部屋が物置として使われている。元々それなりに広い家で、父親はほとんど家にいないので父親の部屋はない。二階に藍騎の部屋と瑠凪の部屋と空き部屋四つ。一階に夫婦の寝室とリビング、キッチン、空き部屋二つ、なお、空き部屋のうち、一室は和室。それが、藍騎の家の部屋割りだ。

「うん。一部屋だけ。頼んだから」

藍騎は、それだけ言うと電話を切った。


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