1話:勇者の帰還
この作品には文体や表現に些か誤りがあるかもしれません。また、戦闘描写などは苦手なので、不満に思うかも知れません。
まだ未熟なので許していただけるとありがたいです。
「よくやってくれました、勇者藍騎よ」
何もない真っ白な空間に声が響く。否、何もない空間ではない。そこには一人の青年がいた。
「これで、俺は元の世界に帰れるんだな?」
青年は、先ほどの声に疑問を投げかけた。
「はい、貴方は、この世界で四つの国を巡り、四つの宝石を求め、四人の姫と世界を救いました。これで貴方に課せられた使命は終わりです。さらば勇者藍騎よ。また会うときまで」
空間が光を放つ。青年の、「また会うなんて不吉な言葉を残しやがって!」と言う声は、歪な破砕音でかき消されてしまった。
青年の名は、紫藤藍騎。二千十五年、彼は、勇者として、異世界に召喚され、約四年ばかしの旅をし、世界を救って、己の世界に戻ってきたのだ。
「はぁ、四年間、長かったな……」
そんな呟きとともに、藍騎は、懐かしき己が部屋を見渡す。いや、見渡すほどの広さはないのだが。藍騎は、四年と言う月日を向こうで経験している。しかし、それは、あくまで藍騎の感覚であって、
「って、ちょっと待て、今が、二千十五年五月七日だと……」
藍騎は、足元に落ちていた自分の携帯の日付を見て驚きの声を隠せなかった。彼が異世界に飛ばされたのは二千十五年五月二日が丁度終わった日。それから、四日後の五月六日が丁度終わったあたりの時間に帰ってきたらしい。今は、七日の零時三分だ。
「って、ことは、今日学校じゃねぇか!」
藍騎は少々困っていた。別に四年ほど異世界に行っていて、勉強が分からないとか言う心配ではない。むしろ、「勇者には学が必要です」と、異世界で散々勉強させられた彼にとっては、まるで言葉が違う国語と世界が違う世界史と情勢や政治が違う現代社会以外は、授業をサボタージュしてもテストで満点は確実であろう。問題はそこではなかった。
「やっべぇ、クラスメイトの顔とか自分の席とか覚えてねぇ……」
そう、彼は、実にキャラクター性に富んだ人たちと四年間も過ごしていたため、精々一年と少し足らずの間をともにしたクラスメイトなんてあまり覚えていなかったのだ。
「まあ、何とかなるか……」
座右の銘が「成るように成る」の藍騎は、もはや、思い出すことさえ諦め、ベッドに入り寝ることにした。
――ジリジリジリ!
などと言う五月蝿い音が聞こえ、藍騎は、泣く泣く起き上がった。
「まったく、ふぁあ~」
大きな欠伸を上げる。まあ、それも仕方の無いことだろう。随分ぶりに長時間の睡眠をとることが出来たのだから。睡眠時間がおよそ七時間半でも長時間と言えてしまうのが昨日までの彼の生活だった。
「ん?七時半?」
時刻は、七時三十五分になった。
「やっべぇ!遅刻だっ!」
藍騎の通う私立立原高校は、藍騎の家から走って三十分くらいの距離にある。しかし、まあ、普通に考えて、三十分間走り続けるなど、藍騎には不可能だった。だから、今までは余裕を持って七時には家を出て、八時二十分には何とか学校についている。それが、この時間だ。歩いたらとてもじゃないが間に合わない。
「学校に行かないわけには行かないか!ああ、もう、走って学校まで行くしかねぇ!」
藍騎は、走って家を出た。
十分後、藍騎は、汗もかかず、息も切らさずに学校の前にいた。
「どういうことだ?時計が狂っていたか?」
そうして、携帯の時間を確認するが、やはり七時四十五分。
「まっ、いいか。とりあえず教室に行こう」
何故、藍騎が十分で学校まで来られたかと言うと、本人が気づいているかは分からないが、異世界での冒険が彼を飛躍的に強くしていたからである。まあ、周りが強かった所為で、自分の強さが余り目立っていなかったから、彼は自分の身体能力の向上なんぞ気にしていなかったのかもしれないが。




