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ブルークローバー ―ヒュメラ犯罪対策班―  作者: クレキュリオ


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9/10

Episode4 Game Hedgehog ~データ化能力~

「久しぶりに見ましたね。あっちの人格」


 アリスは遠目で戦いを観察していた。

 近接攻撃が全て効かない以上、自分は不利だ。


「エルはデスゲーム専門の、ゲーマーだからね」

「リアルな戦いが、最大のデスゲームってことですか」


 夏樹恋歌は二重人格者である。

 データを得意とした恋歌としての人格と。

 状況判断が得意な"エル"としての人格が存在する。


『まさか……。アンタがあの有名なゲーマーだったなんてね……』


 ハリネズミは体の針を、一斉に放出した。

 一本でも刺されば、ゲームのデータが注入される。

 針が多過ぎて、普通に回避するのは不可能だ。


「こんな弾幕、薄すぎるぜ!」


 恋歌もとい、エルは鎌の持ち手と、刃の部分を動かした。

 刃の先端に持ち手がくっ付いて、弓の形に変形した。

 三枚のメダルを出現させて、弓に向かって投げつける。


「ディバイトウィンド! ブォン!」


 エルの弓に、光の矢が装填された。

 弦を弾き、手を離すと同時に矢が分裂を始める。

 矢が針を相殺する。ハリネズミの針を破壊してく。


「触れてデバフなら、触れずに攻撃してやるまでだ!」


 エルはハリネズミの胴体を確認した。

 飛んだ針は、新たに生えてくることはない。

 針を飛ばせる量に、限界があると分かった。


 二枚のメダルを出現させて、再び弓に投げつける。

 弓は緑の風を纏い、周囲のものを吹き飛ばした。


「サイクロンスプリーム!」


 エルは弓から竜巻を放った。

 緑色の回転する風が、ハリネズミを吹き飛ばす。

 ハリネズミは体を崩し、飛んだ先で針が壁に刺さった。


 エルは武器を鎌に戻し、三枚のメダルを投げつけた。

 鎌が赤紫の光を帯びる。


「針の無い所なら、防御力が低いはずだぜ!」


 エルは鎌を投げ飛ばした。

 空中で回転しながら、鎌はハリネズミの胴体を切り裂こうと近づく。


『くっ!』


 鎌が当たる直前、ハリネズミは緑色の粒になった。

 そのまま吸われるように、空中に投げられた何かに吸い込まれる。

 ハリネズミを完全に吸収したなにかは、携帯だった。


「自分の携帯を犠牲に、ネットワークに逃れやがったか」


 エルは瞳を閉じて、上体を前に倒した。

 目を開けると瞳の色が元に戻り、雰囲気が大人しくなる。

 戦いが終わって、恋歌の人格が表に出たのだ。


「これを解析すれば、犯人の正体が分かるかも」

「奴の携帯なら、マズいかもね……」


 静観していたユウキが、近づきながら言った。

 毒は引いたが、体力が回復する訳じゃない。

 体をふらつかせながら、携帯の画面を見つめる。


「正体がバレても問題ないってことかもしれない」

「犯人の目的は達成されたか。もう達成間近という事ですね……」


 ユウキとアリスは、手がかりとして薄いと考えていた。

 恋歌もここで逃げられたのは、痛手と分かっている。

 それでも彼女は、携帯の情報を探ってみた。


 犯人を捕まえるというよりも、その正体を知る為に。

 本名が分かれば、ゲーム内のアカウントも知ることが出来る。


「携帯の持ち主は、"九頭祥吾"。ゲーム会社の人間ですね」


 恋歌は検索能力と携帯の情報で、持ち主の特徴を探った。

 まずは警察のデータと、照合してみる。

 その中の情報を閲覧して、恋歌は息を飲み込んだ。


「九頭祥吾は、最初の被害者だ……。まだ病院で眠っている……」

「という事は、この携帯は被害者から盗んだものってことですね……」


 携帯が本人のものでないなら、手がかりにならない。

 確かに被害者を襲うには、一度実体化する必要がある。

 彼らから携帯を盗むことなど、容易な事だ。


「まだ手がかりならあります……」


 恋歌はゆっくり深呼吸をする。

 この先を口にするのは、気が重い。

 ネットだけとは言え、繋がりを否定することになる。


「奴は私達の作戦を、知っているような態度でした」

「確かに。実体化した割に冷静だったし。こっちへの対応も完璧だった」

「つまり……。私が連絡したフレンドの中に。あのハリネズミが居るってことです」


 恋歌が遊んでいたゲームは、五対五の対戦ゲームだ。

 両陣営がフレンド。恋歌を除けば容疑者は九人。

 アカウント名が分かれば、運営会社に連絡して情報を得られるだろう。


 この九人の中で、被害者全員とネット面識がある人物が犯人だ。

 犯人は対戦中に、襲っていたのだから。


「でも九人とも、操作されてましたよ? あの状態で潜んでいたなら……」

「あ……。確かに一人棒立ちになりますね……」


 プレイヤーがコントローラーを握っていない。

 なのでゲームの世界に入ったら、キャラクターが動きを止めるはず。

 だが実体化ギリギリまで、キャラは動いていた。


 今回もクローズドサーバーで、フレンド対戦を行った。

 部外者は対戦サーバーに、アクセスできないはずだ。


「恋歌……。九頭祥吾の異能力を調べてくれないか?」

「え? うん。でもその人、被害者じゃ……」

「凄くバカバカしい予想なんだけどさ……」


 ユウキは二人に自分の意見を、説明した。


***


 真夜中の病院。九頭祥吾の病室に、一人の男性が侵入した。

 手には刃物が握られており、音を立てぬようゆっくり近づく。

 九頭のベッドの前で、彼はニヤリと笑った。


「九頭祥吾さ~ん。診察の時間ですよ~。起きてくださ~い」


 挑発するような口調で、男性は刃物を構えた。

 九頭は目をつぶりながら、動く気配がない。


「早く起きないと……。これを使いますよ?」


 男性は刃物を持ち上げた。

 先端を九頭の胴体に向ける。


「良いんですか? 本気ですよ?」


 男性は刃物を強く握りしめて、ゆっくり振り下ろす。

 その瞬間、九頭の腕が僅かに動き出した。


「やっぱり。やらないと分かっていても。声だけなら怖いよな?」


 男性……。ユウキは病室の電気をつけた。

 ベッドで寝ていた九頭は、舌打ちしながら起き上がった。


「昏睡状態って、そりゃそう見えるよな?」


 ユウキはデバイスの画面を、九頭に突きつける。

 そこには個人の異能力データが、表示されていた。


「意識がネットワークに飛んでいたんだから」


 ユウキは中指を、九頭に向けた。

 九頭はニヤリと笑いながら、懐からコネクタを取り出す。


「アンタは被害者と偽って、ゲームのサーバーに意識だけを飛ばしたんだ」

「僕の異能力は、意識をデータ化して、ネットワークに送ることだからね」

「お前はデータ化した後で、コネクタを使ってヒュメラになったんだ」


 ユウキは当初、ヒュメラになってからデータ化したと思っていた。

 だがハリネズミの能力を知れば、逆だと分かった。

 現実世界からもアイテムを持ち運べるなら、ゲーム内でヒュメラ化も可能だ。


「僕達が戦ったのは、アンタの意識だけがヒュメラになった存在だ」

「そう。彼女が実体化能力を持っていたから。都合よくつかわせてもらったよ」

「クローズドサーバーに入れるのも、立場を考えれば当然だよ。なあ、運営さん?」


 九頭は元気そうに、立ち上がった。

 点滴を引き抜いて、コネクタを構える。


「凄いよ。携帯落としちゃったとは言え、良く気づいたね……」

「九頭祥吾。僕はずっと前から、お前を追っていた」


 ユウキはデバイスの画面を切り替えた。

 そこには今までの事件の、犯人の顔写真が乗っている。


「和久を除き、今まで手ごわいヒュメラ達にはある共通点があった」

「全員とあるゲームをプレイして……。そこのメッセージからコネクタを知ったですね?」

「認めるんだな? アンタの正体がただのゲーム運営じゃなくて……」


 ユウキは九頭を睨みつけた。


「DNAコネクタの売人だ!」

「そこまで捜査が進展していたとは。偽装が裏目に出ましたね」


 九頭は自分の体に、コネクタを刺し込んだ。

 緑の光がコネクタから溢れて、肉体を変化させる。


「ですが半分外れです。私は"彼女"の代わりに、キャラクターを操作していただけで……」


 九頭の体は、巨大な蛇の形へと変化した。

 病室の天井に当たるほどの、巨体だ。


『私自身は貴方と戦闘した事はないのですよ』


 蛇の目が赤く光る。周囲の小物が、宙に浮かんだ。

 窓ガラスが勝手に割れて、小物がユウキに飛んでくる。


『彼女の計画は最終段階を迎えました。もうここに用はないです』


 蛇は割れた窓を通って、外に出ようとした。

 その後ろ姿を見て、ユウキはニヤリと笑う。


「お前さ。重要参考人を前に……。なんで僕が一人で来たと思う?」


***


 ゲーム会社のオフィス。誰も居ないくらい場所で。

 一人の女性が、パソコンを操作していた。

 

「残念ですが、アップデートは先延ばしになりますね」


 女性にライトの明かりが向けられた。

 恋歌とアリスが、女性と向き合う。


「道理で上手いと思ったんですよ。カツミさん」

「ふっ……。ルナさんも、開発者について来るとは中々ですよ……」

「最初の悲鳴は演技だったんですね? みんなの気を引くための」


 恋歌が事態に気づいたのは、悲鳴がきっかけだ。

 当然チームメンバーは全員、動きを止めた。

 止まったキャラに触れて、アクセス先に移動するのは容易だろう。


「貴方はプレイヤーから、技術の記憶をデータにして、奪った」

「なるほど。プレイヤーが昏睡状態なのは、データを抜かれたから」

「ユウに針が刺さったのに、意思があるのは。彼がプレイヤーじゃなかったから」


 恋歌は悲しそうな表情で、女性を見つめる。

 女性は腕を握りながら、体を震えさせる。


「なぜですか? 開発者である貴方が……。なぜこんなことを?」

「ゲーム開発は……。綺麗ごとだけでは出来ない……」


 女性は手を広げた。ハリネズミのコネクタが握られている。


「一生懸命作っても、少しでもバランスに不備があれば文句言われる……」


 女性はDNAコネクタを、体に突き刺した。

 肉体が変異して、ハリネズミの姿になる。


『無限の要求に応えるために……。こっちは毎日残業尽くしなのに!』


 ハリネズミは、一斉に針を飛ばした。

 針は恋歌達でなく、会社の壁に突き刺さる。

 針を媒介に、オフィスの様相が変わり始める。


「ほう。無機物にもデータ転送が出来るようになりましたか……」

「行きましょう、アリスさん。九頭が足止めされている今なら、カツミさんは逃げられません」

「ええ。まさか、データ転送とデータ化移動が別人の能力とはね……」


 ハリネズミとの戦闘後、ユウキ達は相談し合った。

 その結果、肉体をデータ化させる能力と、データを送り込む能力は別物と判断。

 彼女の能力はデータ転送で、データ化して移動は別人がさせていると推理した。


 ユウキが調査依頼した九頭の能力こそ、データ化してネットを移動できる力だ。

 それは自分だけでなく、別の人物にも可能だ。


「それじゃあ……。ハードモードを攻略してやるぜ!」

「音速以下のハリネズミ。お前の運命を、決めてやろう!」

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