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ブルークローバー ―ヒュメラ犯罪対策班―  作者: クレキュリオ


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8/10

Episode4 Game Hedgehog ~ゲームの世界~

「ジョークロンさん、ナイス!」


 夏樹恋歌は自室で、ゲームをしていた。

 ボイスチャットをしながら、チーム戦を楽しんでいる。

 ゲーマーでもある彼女は、プライベートはゲームしかしない。


 ネットゲームで対戦することは、彼女の生きがいだ。

 居候ゆえ生活費が浮くので、課金も躊躇いない。


【サイカーさん、リュウさん! 一気に攻めますよ!】


 チームリーダの声が、ヘッドホンから聞こえる。

 加工されているが、隠せるのは性別くらいだ。

 テンションの上昇が、恋歌にも伝わって来る。


 キャラクターを動かして、一気に勝負を仕掛ける。

 相手の体力から、この一撃で勝負が決まるはずだった。


【うっ! ぐわぁ!】


 ヘッドホンからその悲鳴が聞こえた瞬間。

 声の主のアバターが、ゲームから消滅した。

 切断を意味するメッセージと共に。


「カツミさん? どうしたんだろう……?」


 通信障害で切断してしまう事は、よくあることだ。

 だが最後に聞こえた悲鳴が。全員の動きを止めた。


***


「恋歌……。そんな私用で、動ける訳ないでしょ……」


 アリスは呆れながら、恋歌の意見を却下した。

 彼女から昨夜の出来事を聞き、調査を頼まれた。

 同じ場所に住んでいるので、仕事前にも依頼されたのだが。


「あの悲鳴は普通じゃありません。しかもあの後、二人も同じ現象が起きました」

「まあ、事件なんでしょうけど……。それは普通の異能力事件じゃないですか?」


 アリスが退けている理由は、DNAコネクタ関連でないからだ。

 彼女達の部隊は、コネクタ犯罪の対策班である。

 普通の異能力犯罪は、他の部隊や警察に任せている。


「マッチングではなく、フレンド戦でした。しかもクローズサーバー」


 アリスが助け船を求めて、ユウキの顔をチラ見する。

 読書中のユウキは、溜息を吐いて立ち上がった。


「知り合いだけで、部外者が立ち入れない対戦ってこと」

「あ、ああ……。なるほど……」


 アリスは微妙な表情で、頷いた。

 恋歌は机を叩いて、彼女に食い下がる。


「顔も本名も知りませんが、前のゲームからの付き合いです。不正を行う人たちには思えない」

「でも実際不正は起きている訳で……。コネクタと関連が……」

「今任務抱えてないじゃないですか! 良いでしょう?」


 アリスは微妙な顔をした。確かに任務はない。

 コネクタ対策班を増やすため、現在様々な研修が行われている。

 小規模の事件は経験のためと、別の部隊が敢えて担当するのだ。


 現在自分達が担当するような事件は、発生していない。

 暇と言えば、暇なのだが。


「恋歌。警察の資料にアクセス。ゲームタイトル、昏睡状態、副作用で検索してみて」

「え? うん。ちょっと待って」


 恋歌は能力を使って、データにアクセスしてみる。

 すると、いくつかのデータが、該当する。


「プレイヤーが数名、原因不明の昏睡状態で。コネクタ使用の副作用が確認された……」

「でもコネクタ自体は、発見されていない。これはもう、僕ら案件だ」


 目を丸くしながら、ユウキを見つめるアリス。


「なぜお前がそんな情報を? 恋歌への愛ゆえ?」

「黙れ。親友の友達が、有名なプレイヤーなんだ。この間、実際に現場に立ち寄った」

「否定はしないのですね。しかも微妙に遠い関係なのが、怪し……」


 ユウキはアリスの後頭部を、本で叩いた。


「データに関する異能力者が、ゲームを使って悪さしているってこと」

「でもなんでヒュメラに? 私もデータに関する能力はあるけど、コネクタは必要ないよ?」

「似た異能力者と戦ったことがある。人間の姿だと、ゲームでは人型キャラと扱われる」


 恋歌は『あっ』っと、何かに気づいた。

 ゲームに詳しくないアリスが、解説を求める顔をする。


「グラフィックがないから、画面に表示されないってこと?」

「姉ちゃんにも分かるように言うと。ゲームの中だけ、透明になれるってこと」


 ユウキは溜息を深く吐いた。

 恋歌の説明もだが、普段ゲームをやらないアリスに説明が面倒だ。


「えぇ……。そんなことの為に、コネクタを使います?」

「昏睡者の症状からして。多分嫌がらせが目的じゃないんだろう」


 ユウキの口ぶりから、独自に事件を追っていたらしい。

 当然だ。彼は必要以上に人へ干渉しないが。

 仲間を苦しめる人間に、一切の容赦をいれないのだ。


「私、罠を仕掛ける。そいつはゲームで襲い掛かるんでしょ?」

「でも、透明なんですよね? 来たところでどうやって……」


 恋歌が珍しく、自信ありげに笑った。

 アリスも思い出す。彼女の本当の異能力の事を。

 あらゆるデータにアクセスできるのは、能力の一部でしかない。


「データへの干渉と、現実世界へ実体化が可能。それが恋歌の能力でしたね」

「はい。ゲームには入れませんけど。見えない敵の察知と、それを可視化出来ます」


 ここ最近実戦をしていないので、恋歌も忘れがちだったが。

 彼女も本来は戦う側なのだ。アリスに戦い方を教わった、弟子とも言える。


「直ぐに準備しますね。フレンドたちにも協力をお願いします」


 恋歌は駆け足で、ヒュメラの対策を行った。

 普段は安楽椅子タイプだが、偶に活発的になる。


「はぁ……。アドバイスしたものの、家主に一言許可が居るでだろう……」

「ん? どういうことです?」

「恋歌がゲームするのは、僕の家だ。そこで犯人を実体化させるから……」


 アリスは今日のユウキに、溜息が多いのになっとくした。



***


 恋歌は自室にこもり、ゲームを開始した。

 フォロー役として、ユウキとアリスも同席。

 犯人が実体化したら、即戦闘に入るつもりだ。


「恋歌、無理すんなよ」


 ユウキが心配する声をかけた。危ないだけじゃない。

 クローズドサーバーに、犯人は入ってきた。

 そこにアクセスできるのは、フレンドだけだ。


 例えネットワークに入れる能力があったとしても。

 サーバーが繋がってなければ、入ることは出来ない。

 犯人はフレンドの誰か。恋歌が拘る理由はそれだろうと、ユウキは考えていた。


「ユウ、もう来たらしいよ」

「早いな……。やっぱり……」


 先ほどフレンドに、メッセージを送った。

 犯人もそのメッセージを見た。だから素早く、対応してきたのだろう。


「今から……。今から実体化させるよ?」


 恋歌がパーカーを掴みながら、二人に確認する。

 二人共頷いて、戦闘態勢に入った。

 恋歌が異能力を発動して、パソコンの画面が強く輝く。


『なるほど。ルナさん。貴方、女性だったんですね?』


 パソコンから粒子が飛び出し、部屋の中央に集まる。

 粒子が結合した結果、茶色いハリネズミが姿を現した。

 鳥やトカゲと違い、大きさ以外はハリネズミに近い姿だ。


「驚かないんですね? 突然、現実世界に戻されても……」


 恋歌は苦しそうに、ハリネズミを見た。

 このヒュメラは、最初から罠があることを知っている。

 否定したい疑惑だが、これで確定した。


『残念です。こんな事になって……。貴方は……』

「おい、勝手に完結すんな。お前の相手はこっちだ」


 ユウキが装備を構えて、ハリネズミを指す。


『悪いけど、まだ捕まらない。やるべき事があります』

「それを完遂させる気はない。事情なんて、知らないからね!」

『こちらも、事情を話す気はない』


 ハリネズミは身体の針を、飛ばした。

 ユウキは分身剣で迎撃して、針を切り落とす。


「場所を変えよう。僕の家を壊されたくない」


 ユウキはこの場の人間を、瞬間移動させた。

 誰も居ない広場に出て、被害を抑える。


「ちなみに移動したのは。またゲームに逃げられないようにするためだ」

『私に勝つつもりで? 残念だけど、ニュービーでは無理ね』

「人生というゲームなら、常にハードモードで攻略しているぜ」


 ユウキは素早く距離を詰めて、ヒュメラに剣を振り下ろす。

 金属音と共に、彼の腕は弾かれた。

 筋肉が振動して、思わず剣を離しそうになる。


「堅ぁ! その針、ダイヤモンドかなにか?」

『違う。レジェンダリーだ』

「はあ? ゲームじゃなく、現実だぞ?」


 ユウキの左腕が、突如剣に引っ張られた。

 重量に引かれて、地面に剣が突き刺さる。


「ウェ!? 重ぉ! なんで!?」


 ユウキは剣を持ち上げようとするも、微動だにしない。

 ハリネズミが勝ち誇った笑い声をあげる。


『私はデータ化するだけじゃない。データを現実に持ち込み、肉体を通して送ることも出来る』


 ハリネズミから一本の針が、飛び出した。

 ユウキの足に刺さり、緑に光を注入する。

 ユウキは目を大きく開きながら、膝をついた。


『毒付与のデータだ。ゲームのものだから、死には至らん』

「こいつ……。ゲームの力を現実でも使えるってことか……」


 ユウキの体を支える力がなくなっている。

 ゲームの毒状態は、体力を徐々に減らしていく。

 現実の毒と特性が違い、戦う力を奪っていく。


『針を刺す必要はない。私に触れた瞬間、データ転送を行える』

「近接攻撃は、全部ダメって事かよ……」

『安心しろ、命を奪う気はない。少し眠っていて欲しいだけだ』


 ハリネズミがゆっくり、ユウキに近づく。

 ユウキは抵抗する力すら、急激に失われているようだ。

 次の針攻撃を回避する力は、残されていないだろう。


「ユウ、これ飲んで」


 恋歌が飲み物を取り出して、無理矢理彼に飲ませた。

 ユウキはむせて、咳を出す。

 

「おい、これじゃあ"飲んで"じゃなく、"飲め"じゃないか」

「ゲームを使う敵なら、私の得意分野。ここは私に任せて」


 恋歌はアリスに目線を送った。

 アリスは隊長として、頷いた。


「ゲーマーとして、ゲームを悪用する人は許せない」


 恋歌は両手を前に突き出した。

 彼女の手に、ドットの様な粒が集まる。

 粒が集合仕切ると、一本の鎌が召還された。


 召還と同時に周囲に強い風が吹いて。

 恋歌の瞳が赤色に変化した。

 彼女は雰囲気の変わった、自信ありげな笑みを向ける。


「残機ゼロで、攻略してやるぜ!」

『な、なんだ? 雰囲気が……』


 恋歌はその場で鎌を、振り回した。

 その軌道と同じ斬撃が、ハリネズミを切り裂いた。

 斬撃は強度の高い針を、何本か折る。


『なっ!? レジェンダリーのデータを含んだ針を……?』

「この武器は、"俺"がプレイするゲーム、最強の装備だ」


 恋歌は空間に出現した、メダルをキャッチした。

 コイントスの要領で、鎌に向かってメダルを投げる。


「お前と違って転送は出来ないが。自分のデータなら、実体化も出来る」


 恋歌は親指を立てたピースをした。


「"ランカーゲーマーL"の力、見せてやるぜ!」

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