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ブルークローバー ―ヒュメラ犯罪対策班―  作者: クレキュリオ


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7/10

Episode3 Spider Judgement~罪と罰~

「俺は絶対生き延びてやる……。怪物なんぞに、殺されやしない……」


 廃線された線路のトンネル。そこがグループのアジトだった。

 リーダーの男が、罠を用意して周囲を警戒している。

 幹部クラスが全員、未知の怪物に殺された。


 物音が聞こえたので、そちらを振り返る。

 誰も居ない。警戒して、ゆっくり音の方へ近づくと。

 背後から糸に縛られた。リーダーはトンネルの外へ連れ出される。


『貴様の様な奴に、生きている資格はない』


 蜘蛛人間がリーダーを引きずる。


『貴様がやってきたことに比べれば、些細な犯罪だ』


 蜘蛛人間、和久は異能力を発動しようとする。

 致死量の電気を流して、トドメを刺すつもりだ。


「犯罪は犯罪だぜ。大小もねえ」


 青い剣が飛んできて、蜘蛛糸を切り裂いた。

 和久は溜息を吐きながら、バックステップをする。

 直後に立っていた場所に、飛び蹴りが来る。


『ファミレスで君達を始末出来なかったのは、大きかったな』


 冬木姉弟が同時に、線路上に立つ。

 和久はこの状況が想定出来たからこそ、二人を始末しようとした。


「う、うわああああ!」


 リーダーの男が、トンネルへ走った。


「お~い、そっちにはトカゲが居るぞ」

「ユウ、追いかけて両方捕まえなさい。こっちの蹴りは私が……」

「OK! 一人でやれんだな? 愚問だけど」


 ユウキは答えを聞かず、リーダーの男を追いかけた。

 アリスは剣を構えて、和久と向き合う。


『やはりお前には、俺の正義は理解出来ぬか……』

「法は法、罰は罰です。一つでも例外を許せば、裁きの意味がなくなります」

『ほざくな、若造が!』


 アリスは剣を地面に刺して、中指で和久を指す。


「隊長……。和久利根。さあ、お前の行き先を決めてやろう」

『俺の行き先は、地獄のみだ!』


 両者は互いに向かって、走った。

 和久が放つ蜘蛛糸の弾を、アリスは構わず走って回避。

 距離を詰めたところで、剣を振り下ろす。


『蜘蛛の武器は、糸だけでないぞ』


 和久は腕をクロスさせて、剣を防御した。

 背中の足を動かして、アリスに突き刺そうとする。


『この足一本一本が、強力な武器だ! ブォ!』


 足が動ききる前に、アリスは回し蹴りを行った。

 和久は側面に飛ばされ、大きく怯む。


「道具や能力だけに頼るなって、教えてくれましたよね?」


 アリスは一枚のカードをスキャンした。

 左手に炎のエネルギーを溜めながら。

 剣を和久に向かって、投げつけた。


 頑丈で重層なアリスの剣は、並の人間には受けきれない。

 怯んだ和久も防御しきれず、大きく仰け反った。


「ウェイ!」


 アリスは手に溜めた、炎を解き放った。

 火球弾が飛ばされて、和久の体を吹き飛ばす。

 即座に剣を回収し、追撃にかかる。


『やはり……。爪が甘いな』


 光の反射で隠れていた、蜘蛛糸が姿を現す。

 電気を帯びながら、アリスの進行方向に張り巡らされている。


「甘い。チョコレートより甘い」


 アリスは再び、手の甲から火球弾を放った。

 熱の影響で、蜘蛛糸が溶ける。


『まだエネルギーを、残していたのか!?』


 アリスの地体強い一撃が、和久に炸裂する。

 体に深く切り傷を作り、和久は吹き飛ばされた。

 膝をついて、体勢を整えている。


 アリスはその隙に、三枚のカードをスキャンした。

 【アクセル、ライトニング、エッジ】の力が融合されて。

 新たな技、【ターボスラッシュ】が発動する。


『まだだ……! まだ俺の正義は……!』


 高速で近づくアリスに、和久は蜘蛛糸を吐こうとした。

 だが口に向かって、三発目の火球弾が飛んできた。

 最初のものより威力は低い。だが蜘蛛糸を溶かすには十分な火力だ。


 打つ手なしの和久へ、アリスが近づく。

 雷を帯びた剣を構えて。すれ違いざまに斬撃を加える。


「ウェエエエエエエイ!」


 加速が入った、強力な一撃が和久を切り裂く。

 大きな切り傷を作り、蜘蛛人間は静かにアリスへ振り返った。

 なにも出来ず、悲鳴と共に彼女の背後で爆発した。


 ヒュメラは元の和久利根の姿に戻る。

 彼は膝をつきながら、体を抑える。


「なぜ……。俺が……。正義が負ける……?」


 体からコネクタが外れて、刺し込み口が壊れる。

 和久は地面に倒れて、気を失った。


「行き先は監獄に決めてやりました」


 アリスは空しそうな表情で、和久へ振り返る。

 

「私刑の正義は、必ず暴力の正当化になる。父が教えてくれた言葉です」


***


 トンネルに逃げた男は、即座に反対側からトカゲに襲われた。

 尻もちをついた状態で、トカゲに銃口を向けられる。

 

「これが本当の鉄拳!」


 サイコガントレットだけが空中を飛び、トカゲを殴り飛ばした。

 ガントレットはユウキの腕に戻り、装着される。


「ロケットパンチならぬ、サイコパンチだ」

『お前、なぜ邪魔をする!? コイツが何をしたのか、分かっているのか?』

「ああ。知ったうえで、守っている」


 トカゲは砲口から、火炎放射を吐き出した。

 通常の弾丸はユウキに通用しないと、学習したのだろう。


『正義の裁きを邪魔するな! 正義の妨害もまた、悪だ!』

「正義でも悪でも良いけど。お前、自分がなにしたのか分かってる?」


 ユウキは正面に、四本の分身剣を作った。

 十字に分身剣を重ねて、扇風機の様に回転させる。

 炎を風で吹き飛ばして、トカゲ人間に近づく。


「答えはどうでも良いけどな!」


 十字の分身剣を、ユウキは飛ばした。

 火炎放射を飛ばしながら、剣がトカゲを切り裂く。

 体に切り傷が出来るが、即座に再生する。


「尻尾以外も再生? ワンちゃんと同じで、変異体か。斬撃は有効じゃないね」


 ユウキは剣を納めて、格闘戦に移行した。

 トカゲ人間を蹴って、怯ませた後。

 サイコガントレットで、連続で打撃を与える。


 トカゲは砲口をユウキへ向けて、煙を放った。

 至近距離でスモーク弾を放たれて、ユウキは後ずさりした。


「あああ! モクがぁ! モクが目に入ったぁ!」


 目をつぶりながら、ユウキは首を振った。

 目つぶしに成功したトカゲ人間は、リーダーの男に走った。

 

「悪いな、嘘だ!」


 ユウキはテレポートを使って、トカゲの前に移動した。

 左手でトカゲを受け止めて、右手に力を籠める。

 サイコガントレットが、青い光を放つ。


「再生能力持ちには、コイツが効くんだ! バスター!」


 ユウキは右の掌を、トカゲ人間につけた。

 強烈な光が、サイコガントレットから放たれる。

 その直後、トカゲ人間が仰け反った。


『何だ? 体が衝撃を吸収しない……。内部から殴られているような……』


 トカゲ人間の体が、膨れ上がっている。

 膨大なエネルギーを体内に打ち込まれて、体が崩壊していく。

 

『があああああ!』


 トカゲ人間はその場で爆散した。

 コネクタが地面に転がり、人間の姿に戻る。

 遺伝子の書き換えのおかげで、ヒュメラは爆発しても人間に戻るだけだ。


「正義とかどうでも良いけど。やったことの責任はとれよ」


 ユウキは尻もちをついていた、リーダーの男へ振り向いた。

 彼はその場から動けずにいた。

 ユウキが放った、分身剣が彼の足に刺さっていたからだ。


「アンタも、罪を犯した責任をとれよ」


 冷たい眼差しで男を見下げた後。

 ユウキは男を殴り飛ばした。


***


 アリスは今回の報告書をまとめていた。

 正式な任務ではないが、仕事の範囲内だ。

 終わったことを上司に報告するのは、彼女の仕事だ。


 和久利根と共犯者は逮捕された。

 リーダーの男も、余罪を調べられている。

 和久たちの罪が、皮肉にも別の罪を暴くことになった。


「隊長たちが良い事したみたいに見えますが、罪は罪です」


 たとえ周囲から感謝されようが、正義と言われようが。

 やったことの責任は、取らなければならない。

 殺人は立派な犯罪だ。その裁きを怠れば、法律に拘束力がなくなる。


「大丈夫ですか、アリスさん? 恩師があんな事になって……」


 恋歌が心配しながら、コーヒーを入れた。

 アリスは微笑みながら、書類の整理を終える。


「こんな仕事なので。こんな事いくらでもありますよ。もう慣れました」


 アリスは本当に気にしていない様子だった。

 確かに元隊長の変貌に、ショックはあるが。

 割り切らなければ、隊長は務まらない。それを教えてくれたのが、和久だ。


「結局、今回の正義も。悪人を攻撃しただけだな……」


 ユウキはソファーで本を読み、皮肉を口にする。

 この部隊のみんなは知っている。彼が最も嫌いな言葉。

 それが正義と言う事を。


「事件を解決しても、誰も被害者に手を差し伸べない。裁きを望むばかりだ」

「裁きは裁判所に任せましょう。私達の役目ではありません」


 アリスも自分達の仕事が、罪人と戦う事だと理解している。

 それでも自分達が、正義だとは思えない。正義と名乗ることは出来ない。

 あくまで法の番人であり、裁く権利はない。師匠である父の教えだ。


「改めて、私は隊長としての自覚が出来ましたよ。私情を挟む暇がないということが、分かりました」


 コーヒーを口につけて、アリスはジッとユウキを見つめる。

 

「な、なに……?」

「自覚を持ったので、隊長として部下に一言」


 アリスは箒を持って、ユウキに近づいた。


「戦闘中にペラペラ喋らない! その根性を叩き直してやります!」

「お、おお……。隊長として、部下の個性を認めるのも大事じゃないかな……?」


 ユウキは立ち上がって、アリスから距離を取る。

 

「ハッキリ言いましょう。喋れば喋るほど、ちょっとイラつきます!」

「おい! 思いっきり、私情が入ってるじゃないか!」

「それは、それ! これはこれです!」


 ユウキは基地から飛び出して、逃走した。

 アリスも箒を持ったまま、後を追いかける。


「こらぁ! 待ちなさい! 今日と言う今日は……」

「勘弁してくれ! 姉ちゃんが相手だと、ヒュメラと戦うより危険なんだよ!」

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