Episode2 Bird Parts~鳥人の超人~
「該当項目なし。やっぱり、二種類の異能力を持つ人間なんていない」
基地に撤退した後。恋歌は直ぐに、調査した。
地域や口調、犯行の手口から犯人は日本在住だと考えた。
日本に住むなら、必ず一回は異能力を登録する。特殊事例が記録されないはずがない。
「どっちかに絞って、個人を特定できないのですか?」
アリスがユウキの怪我の手当て中に質問をする。
傷は浅そうだが、戦闘に支障が出るレベルだ。
「私はあくまでデータにアクセスできるだけなので。データが紐づいていないと」
「そうですか……。異能情報に住所は書かれていませんからね」
「それに異能力だけだと、同じ能力のものが三桁出ます」
アリスは手当を終えて、机に座った。
恋歌の能力は便利だが、制約もあると改めて思い知る。
鳥人間は空を飛べる。更に異能力も未知数。
アリスは飛べないので、空に逃げられたら太刀打ちできない。
終えるのはユウキだけだが、電磁バリアの謎を明かさなければ勝ち目は薄いだろう。
「分離能力の特徴なら、調べてみました。こちらがまとめです」
恋歌が用意した資料を、アリスとユウキは覗き込む。
分離能力の特徴が詳細に書かれている。
「ふむ。分離した体を自在に操れるのですね。羽根が刺さった後も動きましたし」
「でも頭が本体で、一定の範囲しか動けない。だから被害地域が限定されているのか?」
「いや、本体を動かせば良いだけでしょう。わざわざ地域を固定する必要はありません」
アリスは犯人の言動を、思い出してみる。
明らかに若者に対する、憎悪が強い。
だがユウキをターゲットにしたので、地域の住民が狙いではない。
若者全般を狙っている。それなら人が多い地域に行かない理由は?
白昼堂々、警官隊の前で戦ったので。警戒心は薄い相手だ。
「恋歌。アクセス場所と紐づいた情報があれば。データを閲覧できますよね?」
「はい。データと言う形であれば、何でも調べられます」
「ならアクセス先は地元の警察。一カ月以内の事故、被害者が下半身不随になったものを調べて」
アリスの指示で、恋歌はアクセスを始めた。
とは言えハッキングとは別物なので。直ぐに分かる。
「一件だけ該当。地元の大学生が起こした交通事故が見つかりました」
恋歌はパソコンを使って、当時の事故を見せる。
彼女の能力と違い、警察のデータは見られないが。
概要を掴むには、丁度良い。
「若者を恨むには、十分な理由ですね……」
「姉ちゃん、なんで下半身不随?」
「まだ仮説なのですが、地域が限定されている理由は……」
アリスが説明すると、二人は納得する。
同時に恋歌が確証を与えるため、被害者の異能力を調べる。
「斎藤デンジ。大学の准教授。異能力は分離です」
「これで犯人は分かりました。でも電気の謎が解けないと……」
「次の被害者が出るな」
ユウキの言葉で、重苦しい空気が流れる中。
下のガレージから、声が聞こえてきた。
「ユウ! 苦戦しているみたいだし、即興でスカイボードの修理終えたよ!」
機械整備担当の蒼が、ユウキの装備を直した。
スカイボード。空を飛ぶボードで、ユウキの移動手段でもある。
空中戦を行うにはうってつけなのだが、突破口にはならない。
「ユウは異能力の汎用性高いのに、武器がないと戦闘力が大幅低下しますね」
「うるさいなぁ。戦士として異能力だけに頼らず、道具も……」
アリスの皮肉に言い返したところで、ユウキはハッとする。
遅れてアリスと恋歌も、気づいた。
「そうだ……。コネクタ犯罪は姿が変わるから、見落としていたけど……」
「ヒュメラは人間です。意識は人間のまま……」
「なら、道具を使う事が出来る!」
三人で電気の謎に気が付き、互いに指し合う。
同時にアリスの仮説の意味も変わる。
鳥人間を攻略する糸口が見つかった。
***
夜空の中、ユウキはボードに乗って飛んでいた。
スカイボードの乗り心地を確認しながら、現場に向かう。
今夜も襲撃を行う事は予想できた。飛んでいれば、鳥人間は見つかる。
アリスは諸事情あって、別行動をしている。
暗くて見えないので、カメラもつけていない。
ユウキ一人で、鳥人間を捜索して。直ぐに見つける。
「ヘイ、鳥人間! 折角飛べるんだから、湖でも飛んだ方が良いぜ!」
『またお前か! ターゲット変更、今度こそ貼り付けてにしてやる!』
鳥人間は空を舞いながら、羽根を飛ばしてきた。
両者ともに、空中を移動しながら戦闘が始まる。
ユウキは銃を使って、接近する羽根を撃ち落とした。
「やっぱり、他に芸がないんだね。準教授さんよ」
『テメェ……。俺様の事調べやがったのか!』
ユウキはリロードしながら、分身剣を放った。
六本の剣が、鳥人間に向かって飛んでいく。
『芸ならあるぜ! とっておきのがな!』
鳥人間は電磁バリアを、周囲に発生させた。
分身剣はバリアに阻まれて、砕け散る。
「それ、今朝見た。逆恨み君らしい、学習能力のなさだ」
『逆恨み君だと……?』
「ああ。事故の詳細は調べた。運転手は事故後に適切な動きをしている。違反もない」
アリスの提案で、事故の詳細を恋歌に調べてもらった。
車の運転手は見通しの道で、速度制限も守っていた。
事故後に病院にも向かっている。警察にも連絡している。
「歩道もあったらしいじゃん。なんで事故が起きたんだろうね?」
ユウキは中指を突きつけて、少し冷酷な目線を向けた。
「酔っぱらったお前が、いきなり歩道から飛び出してきたからだ」
『ああん? 日本じゃ歩行者優先だろうが! 反応しなかった奴が悪い!』
「お前はルールを守らず、事故にあった。被害者は適正な処置をした。お前はそれを逆恨みした」
声に冷たさが籠って来る。
「それどころか、若者の未来を奪ってやろうなどと、コネクタに手を出した」
『俺様の明るい未来を奪った罰だ! 幸せな若者から、未来を奪ってやる!』
「返答どうも。オブラートに包んでも、クズ未満だね」
リロードが終わった銃が、青い光を纏った。
ユウキは銃口を、鳥人間に向ける。
「正義や裁きって言葉は嫌いだけど。お前みたいなやつは、もっと嫌いだ」
『ハン! なにをしようが、俺のバリアは突破不可能だ!』
「ちなみに、この会話は囮だ。接近を気づかれないためにね」
ユウキが言い切った直後、電磁バリアが消滅する。
同時に鳥人間の体が、妙な動きをする。
バリアが消えた先を、ユウキはライトで照らした。
『わあ! なんだテメェ! どっから入ってきた!』
『窓からです。その無様な体の運命、私が決めてやりましょう』
鳥人間からアリスの声が、聞こえてきた。
更にライトに照らされて先に、小型のドローンが見つかる。
「油断したよ。異形の怪物だから、僕達は異能力と身体特徴だけで戦うと思い込んでいた」
ユウキは引き金を引いた。
同時に発射された弾丸が、空中のドローンを破壊する。
「ドローンでバリアを張っていたなんてな。電気ショックは、帯電させた羽根を飛ばしたんだろう」
『ユウ、思った通り! 上半身こと本体は、自宅に居ました!』
「うん、マイク越しに声が聞こえてるよ」
鳥人間は声も発せず、空中で制止している。
「お前は自分の異能力を使って、上半身と下半身を分離した」
『下半身のみにDNAコネクタを刺して、体の一部だけをヒュメラにしたんですね?』
「コネクタは遺伝子情報を書き換えるから。コネクタが足りない肉体を自動で作り出したんだ」
アリスは被害地域の狭さから、鳥人間の移動制限を疑った。
異能力の説明で確信を持った。
「自宅なら安全に、隠れてドローンを操縦出来るからね」
『後は動けなくなった、下半身へのコンプレックスでしょうか?』
鳥人間は合わせた様子で、住宅街に降りていく。
たった一軒の家に向かった、急降下する。
「パーティタイムは終わりだ。手品の続きは、檻の中で!」
ユウキは複数の分身剣を生成した。
刃の部分だけを重ねて、ドリルのような形にする。
重なった分身剣を回転させて、鳥人間に目掛けた飛ばす。
急降下中の鳥人間は、分身剣が胴体に刺さった。
分身剣が刺さったまま、地面に落下する。
「チェックメイト! セイヤァ!」
ユウキはスカイボードから飛び降りて。
急降下キックを、分身剣に行った。
回転している分身剣が、ユウキの右足に押されて鳥人間の体を貫通する。
ユウキも鳥人間を貫通して、地面に着地する。
鳥のヒュメラは、空中で爆散した。
ユウキの足元に、カメラとスピーカー。そして壊れたコネクタが落ちる。
「強いダメージで、肉体は本体に戻るっと。調査済みだぜ」
***
アリスはディスクで報告書を書いていた。
鳥人間、斎藤デンジは逮捕された。
罪状の重さと情状酌量のなさから、重い判決が下されるだろう。
取り調べによると、元々斎藤は下半身を動かしたくてコネクタを手に入れたらしい。
だがある日、ニュースで未来ある若者の言葉を聞いた途端。憎悪が抑えきれなくなった。
ユウキはコネクタの副作用だと、推測している。
「人を狂暴な怪物に変える、悪魔のアイテムですね」
報告書を書き終えて、アリスは一息ついた。
そこへユウキが、コーヒーを持ってくる。
「大分様になってきたね。部隊長様」
「どうも。今回の一件で、より感じました。DNAコネクタの恐ろしさをね」
コーヒーを飲み、これからの思いをはせる。
これからも、こんな事件が続いていくのだろう。
それを止めるのが、自分達の部隊の役目だ。
「でも、前線で戦っている方が、姉ちゃんっぽいかも」
「自分でもそう思います」
二人が会話していると、ガレージへの扉が開いた。
そこから作業着姿の、茶髪ショートの少女が出てくる。
「やっと整備終わりました。やっと始動って感じですね」
「蒼、ずっと何の整備をしてたんだ?」
「ふふふ……。それでは、ガレージに来てください!」
草月蒼は胸を張って、ユウキとアリス、恋歌をガレージに招待した。
階段を下りて、地下室に向かう。
山の中が空洞になっていて、ガレージは相当な広さがある。だから基地は山奥なのだ。
四人は蒼が立ち入り禁止にしていたエリアに、足を踏み入れた。
そこにはまるで戦艦の様なものが置いてある。
「空、海、陸。あらゆる場所に対応した、広域移動マシンです」
「凄いですね……。たった四人の部隊にこんなものを?」
アリスはマシンをジッと見つめた。
大きさはそこまでではないが、車一台くらいなら入りそうだ。
恐らくガシェット運搬を、想定したものだろう。
コックピットには丁度、四人分のスペースがある。
軽い前線基地として、使えるだろう。
「凄い! 凄いよ、姉ちゃん! 本格的だよこれ!」
ユウキが子供の頃に戻って、興奮している。
「ねえ、蒼! これどうやって使うの?」
「スゥ……。スゥ……」
蒼は壁にもたれかかって、寝息と共に目をつぶっていた。
「って、ここで徹夜のツケが発動してる!」




