Episode4 Game Hedgehog ~完全クリア~
「さあ、ゲームスタート!」
エルは早速、メダルを一枚投げ飛ばした。
高速メダルを体内に取り込み、高速移動を開始する。
一瞬でハリネズミに近づき、鎌で二連撃を与える。
「え? 近接して良いのですか?」
アリスが首をかしげていると、エルはニヤリと笑った。
「アイツの弱点は掴めている。俺はピンピンしているぜ!」
戻ってきたエルは、特に異常はない。
レジェンダリーと呼ぶだけあって、鎌の威力は絶大だ。
ハリネズミの針を、何本か折ってる。
「奴はどのデバフを送るか、判断している」
「で、デバフ……?」
「ようは頭で呪文を唱える前に、攻撃するだけだ!」
エルは鎌を投げた。鎌は回転しながら、ハリネズミに近づく。
体の前で制止し、彼女の周辺を回り始めた。
「表面が堅い敵は、腹部が弱い。ゲームの定席だ!」
ハリネズミの周囲を、鎌は高速化で周る。
発生した風圧が、ハリネズミを吹き飛ばした。
「晒された腹部を、総攻撃だ!」
「ゲームは分かりませんが、そう言う事なら……」
アリスはカードをスキャンした。
肉体強度を上げるメタルと、突進の威力を高めるタックルを組み合わせる。
「ああ。そうそう。奴が物心変換させたエリアに触れるなよ」
「先に言ってくれたことは、感謝します」
アリスはエルの忠告を受け、変化した床を避けた。
そのまま着地前のハリネズミに、タックルを食らわせる。
吹き飛ばされたハリネズミは、針が壁に刺さった。
ハリネズミは短い脚で、バタバタ暴れている。
このヒュメラの弱点は、手足が背中に届かない事だろう。
「前回と同じパターンですね」
「同じじゃないさ。アイツはもう、逃げられねえ!」
エルは三枚のメダルを、アリスは三枚のカードを使用した。
それぞれが武器に取り込んで、必殺技を発動させる。
「スピニングスラッシュ」
「ソニックスラッシュ」
エルは緑の風を、周囲に纏う。
風の力で浮遊しながら、体を高速回転させる。
鎌を構えたまま、切り裂く竜巻がハリネズミに向かった。
ハリネズミの左右を、行き来する竜巻。
すれ違い様に次々、腹部を切り裂いていく。
「ウェエエイ!」
アリスは電気を纏った剣を構えた。
一瞬でハリネズミの懐に入り、連続斬撃を加える。
エルが下がったのを確認して、彼女も一旦背後に下がる。
エルは回転したまま、ハリネズミに蹴りを与える。
足がドリル代わりとなり、その胴体を貫いた。
傷口にアリスが追撃の、突進突きを与える。
『ぐっ……。まだ……。まだ私は……』
変化した壁や床から、袋が飛び出した。
袋は癒しの光を放ちながら、ハリネズミに飛んでいく。
「回復薬か。そうはさせるか!」
エルは紫のメダルを、ハリネズミに投げ飛ばした。
直後に回復薬の光が、ハリネズミに注がれる。
だが傷口が塞がるどころか、余計に広がり始めた。
『ギャア! な、なにを……?』
「アンデッド化のデバフをかけてやった。アンデッドは聖なる力が弱点だ!」
エルは鎌を地面に刺した。人差し指で、ハリネズミ指す。
「カンストダメージだ。お前はもう、クリア済みだぜ!」
『そんな……! アアア!』
ハリネズミは赤い電流が、胴体に流れた。
もがき苦しみながら、その場で爆散する。
元の女性の姿に戻り、砕かれたコネクタが床に落ちる。
「文句も暴れたく気持ちも分かりますけど……」
エルは引っ込み、元の恋歌が姿を現した。
「危害を加えるのは、ダメです」
「シンプルですが、もっともな意見ですね」
***
『ほう、貴方も中々しつこい男ですね』
病院の屋上で、ユウキは蛇のヒュメラ。九頭と戦っていた。
砕かれた瓦礫が宙を浮き、不規則に飛んでくる。
どういう訳か、瓦礫をユウキの念力で掴むことが出来ない。
「欲張りか。お前、何個能力持ってやがるんだ?」
飛んでくる瓦礫を、分身剣で迎撃する。
蛇は巨体の割に、俊敏な動きだ。
狙いを定めるのも困難な上、病院で暴れられるわけにもいかない。
『異能力ではありません。これもコネクタとの、適合で進化した力です!』
九頭は口から、赤い破壊光線を放った。
病院が崩れるように、わざと角度を調整している。
ユウキは分身剣を複数生成して、盾にした。
『コネクタはDNAを変化させる。そして異能力もまた、個人の遺伝子そのものだ!』
「遺伝子とDNAは、専門家曰く違うらしいぜ。恥かく前に、訂正しな!」
『やれやれ……。この状況で、よくそんな軽口が叩けますね』
九頭は呆れたように言いながら、光線の威力を高めた。
ユウキは内心、彼の狂気に触れた気がする。
角度的にユウキが回避しないようにした。それは分かる。
だが九頭は病室が壊れる事に、何のためらいもない。
この下には、身動きが取りづらい人が、寝ているというのに。
「お前……。なにが目的なんだ?」
『ただのビジネスですよ。コネクタ販売は、良い商売になります』
両者、光線の吐き出しと受け止めを続けながら会話をする。
『故に宣伝しているのです。大した力のない人間を、進化させてね』
「悪趣味なコマーシャルだね」
『DNAコネクタを量産すれば、私は大きな利益を上げることができます!』
ユウキはニヤリと笑った。
光線の太さで、彼の表情は九頭から見えない。
『コネクタの設計図が流通した時、これだっと思いましたね』
「とんだクズ野郎だな。だがおかげで、手加減する理由が完全になくなったよ」
ユウキの右腕が、青く光った。サイコガントレッドから、何かが飛び出す。
彼は飛び出した何かを、右手で掴んだ。
普段使っているものとは違う。青く光るロングソード系の剣だ。
「もっと……。力を!」
天に向かって、青い光柱が放たれた。
ようやく気が付いた九頭は、動揺の声を上げる。
『な、なにをしたのです!?』
破壊光線が切り裂かれる。光の刃が、九頭に斬撃を加える。
光線の煙と、光柱が消えてユウキの姿が現れた。
彼の瞳は青く光り。背後に守護霊の様な、青い人型の光が現れる。
騎士の様な鎧を纏っているが、赤い瞳を光らせている。
どちらかと言えば、禍々しい雰囲気を感じさせる存在だ。
「魔人召還。僕の力への渇望が、具現化したものらしい」
『バカな!? サイキッカーにこんな能力、ありません!』
「だろうね。異世界での戦い中、覚醒した力だから!」
ユウキは二本の剣を、前方で交差させた。
その動きと同期する、背後の魔人。
「It's Show Time! と見せかけて、Partyは御開きだ!」
ユウキか九頭の眼前に、瞬間移動した。
そのまま青く光る剣で、九頭を斬る。
背後の魔人も同時に攻撃し、一撃で二発となる攻撃が九頭を切り裂く。
『い、一撃でなんという破壊力……!』
「残念だが、悪趣味ビジネスは開店前に終わりだ」
ユウキはもう片方の剣で、九頭を斬りつけた。
バツ印の切り傷が、九頭の胴体に出来る。
九頭は口を閉じて、後ずさりをした。
「これで、Finishだ!」
ユウキは空中で、ドロップキックを行った。
念力が加わった勢いで、九頭は空まで蹴り飛ばされる。
ユウキはそれに追いついて、空中浮遊を始めた。
「セイヤァ!」
ユウキは高速で空を飛び回りながら、九頭を何度も切り裂いた。
二本の剣で、次々斬撃を加え。トドメの一撃に入る。
頭上で両手の剣を重ねて、天に向かって光を放つ。
二本の剣が、巨大な一本の剣に融合した。
ユウキは巨大な剣を振り下ろす。
『おのれ! こんなところで、私のビジネスは終わらん!』
剣が通過した蛇の胴体が、空中で爆散した。
ユウキは地面に着地し、周囲を確認する。
「脱皮しやがったのか……。逃げられたな……」
九頭は土壇場で、蛇の脱皮能力を発動した。
最後の一撃を避けて、元の姿に戻ったのだろう。
だが顔も名前も入手した。動きは大きく制限されるだろう。
「次はチェックメイトまで、追い詰めるさ」
***
アリスは報告に、悩んでいた。
今回は恋歌のわがままに、付き合っただけだ。
正式な任務を、言い渡されたわけではない。
「昏睡状態だった人達、回復してきたみたいですよ」
恋歌が基地の壁にもたれかかって、ゲームをしている。
「それは良かったですね。でもこっちは全然良くないです」
アリスは溜息を吐いた。
「私情で動いて、報告を怠ったと。"私"が説教されました」
「あ、ああ……。はい。ごめんなさい」
「謝罪が軽い! 大体貴方はですね……」
アリスが説教モードに入ろうとすると。
ガレージに続くドアが、急に開いた。
勢いよく開かれたドアに、アリスは額をぶつける。
「ふわぁ~。やっと完成した……。私達の新しい、戦力が……」
「あ、草月さん……。今回やっと出番ですね」
ここ最近、ガレージに寝泊まりしていた蒼。
なにか開発しているとのことだが、アリスも良く知らない。
「確認しますか? 凄いの出来ましたよ」
「ま、まあ隊長として、戦力の確認くらいは……」
蒼の押されて、アリスは恋歌に説教しそびれた。
不服な表情をしながらも、彼女達と共にガレージへ降りる。
そこには、巨大なアーマーが立てかけられている。
二メートルはサイズがある。更に重装備だ。
何故か胸部に顔があり、背中に三日月のカッターが装備されている。
「なんですか? これ?」
「最高級のゴッドボディ。マックスくんです」
「いえ、それは説明になってません……」
アリスは観察して、これが着るものだと理解した。
少し動きずらそうであるが、防御力は高そうだ。
真面目に考察していると、背後からドアが開く音が聞こえる。
基地に行くには、ガレージのエレベーターを通る。
少し遅れたユウキが、入ってきたようだ。
「あー! マックスくん! マックスくんじゃないか!」
ユウキが凄い興奮気味に、食いついた。
その態度と声の出し方で、アリスは冷汗が流れる。
「蒼! 使いたい、使いたい! マキシマム大変身したい!」
「まずい! 恋歌、止めますよ!」
「はい! ユウがこのテンションだと、大暴走を始めます!」
アーマーに近づくユウキを、アリスと恋歌で必死で止めた。
興奮状態のユウキは、暴れて抵抗する。
「邪魔なんだよ! まとめてゲームオーバーになりたいか!」
「ああ! もう! お前ら全員説教!」




