⑤受賞!
——あれから、半年。
昼休みの教室には、僕と和也がいた。
窓から見える景色には、暖色が増し、季節はすっかり秋めいていた。
半年前、高知から戻った僕達は、人気者だった。
ニュースで話題となった『コンビニ強盗撃退高校生』が、僕達だと、皆が知ったからだ。
他のクラスの生徒や下級生までが、毎日教室に押しかけ、僕達の武勇伝を聴きたがるのだ。
連日、チヤホヤされた僕達は、まさに有頂天だった。
しかし半年も経てば、誰も話題にしなくなり、次第に僕達はまた二人でいる事が増えだした。
教室には、窓際に座る僕達の他に、後方に三人の女子達がいた。
死神と原始人、そしてボスの横綱。
例の三銃士だ。
その三銃士を一瞥した和也が、重い溜め息をつく。
「俺達、高知から帰った時は、あんなに人気者だったのになぁ……」
落胆しながら、愚痴る和也。
だが僕は何も答えず、黙って震えていた。
和也が、訝しげな顔をする。
「どうしたんだ、圭太? なんか今日、朝から様子が変だぞ」
「ふっふっふ……実は昨日、届いたんだ。これ」
僕はリュックから、A4サイズの封筒を取り出した。
それは△△社から、僕宛に届いたものだ。
封筒には、賞状在中と書かれている。
「え? まさか、これ……」
「その、まさかだよ! あの小説が、賞を取ったんだよ!」
僕は、朝から抱えていた秘密を、遂に口にする。
これだけは、和也と二人で見たくて、昨日から開封せず取っておいたのだ。
「凄え! 凄えよ! おい、早く開けようぜ!」と、和也が急かす。
「わ、分かったよ、落ち着いて!」
僕は震える手で、ぎこちなく封筒を開け、中の賞状を確認した。
——ペンネーム・岡本圭地殿。
あなたの作品『高知奮闘記』は、評価のしようも無いほど最悪です。劣悪です。
史上最低の小説です。
よって選考委員、満場一致で【史上最低賞】に決定。ここに、賞状を贈らせて頂きます。
追伸……同封されていた魚は何でしょうか?
編集部室が臭くなり、とても迷惑しました。
もう二度と、絶対に作品を送らないで下さい——
……?
……?
僕と和也は、意味が分からず、無言で何度も読み返した。
しばらくして、和也がプッと吹き出した。
「だっはっはっはっ! 史上最低賞だって! 何だよそれ!」
僕もつられて、アハハと笑った。
いや、笑わずにはいられない。
正気を保てないからだ。
「だっはっはっはっはっはっ!」
「アハハハハッ!」
なぜだろう、笑いながらも、涙が溢れてくる……。
ふと、三銃士が視界に入った。
大笑いする僕達を、怪訝な顔で見ている。
和也は苦しそうに、ヒィヒィと腹を抱え、僕の肩に手を乗せてきた。
「なっ! 俺の言った通りだろ! 賞を取っただろ!」
「本当だね、和也! 確かに賞を取ったよ! 間違いなく取ったよ!」
「史上最低賞だけどな、だっはっはっはっ!」
「アハ、アハ、アハハッ!」
「マジうけるぜ! あぁ腹いてぇ。なあ圭太、またヒッチハイクで、何処かへ行こうぜ!」
その瞬間、僕の中で何かが、プチンと切れた。
教室の窓ガラスが割れるほど、大声で叫ぶ。
「二度と行くか、バカヤロォォォォォォォォォ———————‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
おわり




