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始めてやる事には失敗がつきものだと思う第95話

昨日同様、第一倉庫へと到着した瑞希と大輔。

「ねえ、大輔。ストレッチしよう」

第一倉庫へ入ろうとしていた大輔に対し、瑞希が唐突に声を掛けてきた。

荷降ろし以外は重労働ではない。その荷降ろしさえも数が多いものの1つ1つの荷物は然程重くはない。

一瞬考えた大輔であったが、稀に重い荷物を運ぶ事もあるし運動不足が否めない瑞希の身体は心配である。

「体育の授業の初めにやる程度な」

大輔は瑞希の提案を快諾。

早速準備運動を始める。

まずは手首、足首、首、肩、腰などをグルグルと回したり、腕やアキレス腱などの柔軟をしたり1人で出来る軽い準備運動から開始。

一通り1人での柔軟運動が済んでからは2人でのストレッチに移行。

手を取り合って引っ張り合い、脇腹のストレッチ。背中合わせで腕を組み、背中のストレッチなどなど。

10分程準備運動をし、良い感じに体が温まって来たところで2人は仕事を開始する為に第一倉庫へと入っていった。


第一倉庫へ入ると直ぐに昨日、仕事を教えてくれた亜人が近づいてきた。

「来たか。今日も同じ。昼まで同じ。昼後ひるあと終わる時間違う」

「終業時間が違うって事か?」

「そう。18時まで」

「了解。時間確認する方法が無いから終わる頃にまた声かけてもらえるか?」

確認する方法はある。

だが、いちいち確認するのが面倒だった為に言ってみただけだ。

拒否されるようなら瑞希にアラームをセットさせるまでである。

「分かった」

亜人は考える素振りも見せず、大輔の提案を快諾した。

「じゃあ、早速作業に取り掛かって大丈夫か?」

「問題ない」

「よし、瑞希行くぞ」


作業内容は昨日と同じ。

倉庫から倉庫へと運ぶだけの単純作業。流石に1日あれば覚えられる内容である。

昨日とは違い、荷物の運搬先や使用済みの道具の収納場所などを覚えただけあって作業は順調に進む。

途中、2人で運ぶ機会も何度かあったが、その時に大輔は瑞希が荷物を持ち上げる際に膝を意識している事が確認出来た。

中腰の姿勢で物を持ち上げるのに慣れている瑞希は今の持ち上げ方に慣れていないのか多少のぎこちなさが残る。

しかし、試行錯誤を繰り返しながら自分なりの腰への負担を軽減出来る持ち方を物にするだろう


その後は何事も無く作業を続ける瑞希と大輔。

昼近くになり、第一倉庫に瑞希が戻ったタイミングで声を掛けられる。

「休憩入れ。相方にも言え」

一瞬、相方?と思ったが、恐らく大輔の事だろう。

瑞希は大輔が戻るのを待ち、大輔が戻って来るのを見つけるや否や「休憩に入って良いって」と伝える。

それを聞いた大輔は瑞希に「今、片付けるから少し待って」とだけ伝えると空になったカゴ台車を所定の位置に片付け、瑞希の下へと駆け寄って来た。

「よし、飯行こうぜ」

瑞希は軽く返事を返し、2人で昼食へ向かうのであった。


「今はまだ良いけど、そのうち昼食が出来る場所のレパートリー増やした方が良さそうだよな」

「昼食だけじゃないよね?カード情報に部屋の鍵が登録されてたって事は夕食と朝食も食べられる場所探さないと……。あれ?いつから寮に引っ越すんだろう?ミクさん言ってなかったよね?」

「あー……。そう言えわれればそうだな。今日、仕事が終わったら聞いてみようぜ」

「お昼食べ終わってからで良くない?」

「休憩時間なくなるかもしれないけど良いのか?俺としては少し昼寝したい」

雑談をしながら移動していた2人。

ひょんな事から重要な事を聞いていない事に気が付いた。

大輔の意見を聞き、瑞希も少し悩んだが、結局、仕事終わりにミクの所へ向かう事を同意した。


食堂内に入るといつもと同じ程度の込み具合。

瑞希と大輔は列の最後尾に並ぶ。

「そう言えば、注文もおまかせ以外出来ねーな。ってか俺覚えてないんだけど」

「そこは任せて。僕、覚えてるから」

「食券制にしてくれれば楽なんだけどな」

「文字読めないじゃん」

「一回教えてもらって場所を覚えれば不可能ではない。全部の料理を注文する訳じゃないからな」

そんな他愛もない雑談をしていると瑞希たちの順番が回って来た。

「ふぃゅーずゅっ。2つ」

瑞希は宣言通り、注文を行う

自分と大輔を交互に指差し、2本の指を立てて同じ物を大輔も同じものを注文していると言う意思表示をする。

「fiuzp?」

「そうそう。YesYes」

注文を受けた亜人が瑞希と大輔を指差し注文の確認をする。

恐らく伝わったのだろうと認識した瑞希は日本語と英語で返事をしながら赤べこのようにブンブンと大きく何度も頷く。

言語については全く伝わっていないだろう……。

その後は亜人に促されるがまま、瑞希が機械にカードをかざし亜人から引換券をもらう。

「ごち」

そう、瑞希が2人分を注文し、瑞希が支払った。

つまり、昼食は瑞希の奢りになった。

「あれ?えーっ!駄目だよ。奢りじゃないよ」

瑞希は支払いのやり直しを訴えようとしたが、言葉が分からない以上不可能である。

かと言って、オウキーニやミクの様に日本語も話せる知り合いも近くに居ない。

その場でグダグダと言っていても埒が明かない。

そう考えた瑞希は取り敢えず大輔と関の確保に向かう。


2人分の席を確保し、着席。

「奢りじゃないからね。後で返してよね」

「返せって言われてもやり方が分からん」

料理が出来上がるまで瑞希が文句を言い、大輔はのらりくらりと瑞希の追及をかわす。

大輔も本気ではない。大輔としては返金方法が分からなかった場合でも明日奢れば±0だろうと考えている。

単に瑞希の反応を楽しんでいるだけだ。

そんな中、引換券から音が鳴る。

料理が出来上がったようだ。

「おっ、出来たようだな。取りに行こうぜ」

「大輔、冗談じゃないからね。絶対に返してよね」

「わーったって。仕事終わりにミクに聞いてみるって。ダメだったら明日の昼食奢るから其れで良いだろ」

いい加減同じ会話の繰り返しに飽きてきたのでネタばらし。

瑞希も大輔の案で納得をしたのであった。


103話まで1日1話連日投稿予定(更新は20時設定済)

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