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購入報告が上がっていた事を確認出来た第93話

翌朝────。

大輔の部屋のドアがノックされる。

昨晩、瑞希と解散した後、朝食の話を受付に通した事を思い出す。

「今、開けます」

昨日の朝同様、大輔の部屋へ朝食を届ける序でに瑞希の部屋の鍵も携行するように頼んでおいたのだ。

そして、これまた昨朝同様に大輔は瑞希の部屋のドアをノックする。

「だれ?」

寝惚けていそうな声質ではあるものの珍しく起きているようだ。

但し、瑞希の事なので本当に起きているのかは不明である。

「俺だ」

「なに?」

「朝食届いたぞ」

「うーん……」

応答は出来ているので起きてはいるようだ。


……しかし、暫く待っていたが一向に出てくる気配が感じられない。

「鍵、開けちゃってください」

律儀にも隣で瑞希の起床を待っていた亜人にドアの開錠を願い出る。

亜人は無言で頷くと瑞希の部屋のドアの開錠をした。

部屋に入った大輔の目に留まったのは瑞希の姿ではなく、こんもりとした布団の山。

瑞希は頭を含めた全身を布団の中に納め丸まっているようだ。

いつも通り、布団を退けようと軽く持ち上げようとしたものの、少し持ち上げたところで引っかかる。

恐らく、瑞希が布団を掴んで離さないのだろう。

「あと五分……」

「いい加減にしろ」

瑞希のふざけた発言を耳にした大輔は力を込めて瑞希から一気に布団を剥ぎ取る。

布団を剥ぎ取られても丸まったまま動かない瑞希。

その光景を見た大輔は敷布団に手を伸ばし、瑞希を転がすように敷布団を持ち上げる。

瑞希を転がし、布団の敷いてあった場所に適度なスペースの確保も完了。

手際よく布団を畳むと瑞希を無視して亜人に軽く謝罪をすると食事を運び入れる様にとお願いをする。


朝食が並び、亜人も退出。

折を見て大輔が口を開く。

「何でそうまでして起きないんだ?」

「いやー……。今日、起きられなかったのには深い事情があって……」

瑞希は自分の朝食の前に移動をしながら言い訳をする。

「何だよ、事情って」

「実はですね……。物凄く腰回りが痛くって……。筋肉痛ってやつだね」

浅い……。物凄く浅い……。

大輔は瑞希の言い訳を聞いて呆れる。

「荷物降ろす作業は腰に来るからな」

然も当然と言いたげな返答。

瑞希のみならず、大輔自身も同様の作業をしているので同情の余地はない。

そもそも筋肉痛になるのは瑞希の運動不足が原因である。

但し、ヴァンの館での畑仕事の時ほど重症ではなさそうではある事については一安心である。

あの時と同程度の筋肉痛だった場合、仕事にならない。

「筋肉痛にならない方法ってないのかな?」

「慣れだな。あと、鍛えろ。軽度の筋肉痛なら問題ないだろ。それと体動かす前にストレッチはした方が良いぞ。筋肉痛とか関係なしに急に動かすと腱とか筋とか痛めるからな。ぎっくり腰とかアキレス腱が切れたとかは悲惨だぞ」

「体育の授業の前にやるようなやつ?屈伸とかアキレス腱とか?」

「まあ、それでも良いしラジオ体操なんかも良いな。あっ、それと重い物を持つ時は持ち方に気を付けないとぎっくり腰になるからな。持ち方も気を付けろよ。特に持ち上げる時な」

「持ち方?」

「腰で持ち上げない。重い物を持ち上げる時はしっかりと屈んで屈伸運動で持ち上げる。あと、荷物は体にくっつけるとかそんな感じだな」

大輔は手首を腰に見立て、手首を曲げ伸ばししながらのジェスチャーを交え、瑞希に説明をしているものの、大輔の手振りはあまり説明の意味をなしていない。

正直、ジェスチャーだけでは何を現しているのかが理解出来ない。……いや、口頭の説明込みでも理解出来ない。

「腰で持ち上げない。屈伸運動で持ち上げる。荷物を体に付ける」

瑞希は大輔のジェスチャーを無視し、言われた事を反芻する。

何度かブツブツと呟いて納得したのか、瑞希は食事を再開。

その後は筋トレの話やストレッチの話など体を痛めずに働くコツなどを大輔から教わるのであった。


食事も終わり、昨日同様に準備が出来次第、フロントに集合とだけ伝え、大輔は部屋を後にした。

瑞希は筋肉痛の所為で腰に違和感が残るものの、特に準備する事も無いので気にする程でもない。

軽く片付けをしてから。とも考えたのだが、瑞希の寝起きの悪さから今日は布団を畳む手間も省けていた。

これは瑞希が意図した訳ではなく、大輔が瑞希を起こす序でに布団も畳まれてしまっただけである。

一通り部屋中を見渡し、退室する瑞希。

大輔の部屋を素通りし、フロントで大輔を待つ。


程無く、大輔もフロントに到着。

大輔と一緒に受付の亜人へ部屋の鍵を一時的に返却。夕飯は昨日同様、帰宅後に時間指定する事を告げ旅館を後にする。


旅館を後にした瑞希と大輔は寄り道をせず、ミクの部屋へと向かう。

いつも通り部屋のドアをノックし、中からの返事を待ち、入室。

ミクに挨拶をし、これまたいつも通り待機の指示をされる。

これまで何度か繰り返された一連の流れ。瑞希と大輔の2人も慣れた様子でソファに座り、ミクの作業が一段落着き、話を振られるのを黙って待つ。


ミクは手にしていた書類を机の上に置くと瑞希と大輔の方を向く。

「今、色々と準備させている最中だ。楽にして良いぞ。2人で雑談していても良いぞ」

大人しく待つ2人に気を使ったのか、作業を一旦止め、話しかけてきた。

2人に一言言い終わるや否やミクは再び資料に目を通し始める。

「準備って何を準備してるんだろうね?」

ミクの言葉に甘えてなのか沈黙に耐え切れなかったのか、瑞希が大輔に少し声量を抑えて問いかける。

「さあな。昨日の買い物の総額とかじゃないか?」

「そう言えば、服の事も聞き忘れてたね」

「そうだな。準備とやらが終わったら聞くとするか」

「何の話だ?」

資料に目を通しているはずのミクからの質問。

どうやらミクにも瑞希たちの会話は聞こえていたようだ。

まあ、室内には瑞希と大輔、ミクの3人しかいないのだ。いくら声量を抑えたとしても聞こえて当然とも言えよう。

「昨日、買い物をした時の話なんですが、家具は偶々オウキーニと出会ったので色々とお願いをしたのですが、その後、オウキーニと別れてから洋服を買おうって事になって購入したのは良いのですが、しっかり報告されてるか明日……昨日から見ての明日なので今日、確認しようって話をしていたのですが、収支は付けてありますか?」

事のあらましを説明する瑞希。

「そう言う事か。報告は上がってきているから問題ない」

「サイズとか分からんくて大変だったよな」

「サイズ?棚に凡そではあるが書いてあるだろう」

「だから、文字読めねーんだよ」

「……そうだったな。不満なら返品や交換も受け付けるぞ。何なら後で妾がついて行ってやっても良いぞ」

「交換は不要だな。今着てるしな。それはそうと、サイズ感がバラバラ過ぎて探すのが大変だから、そっちをどうにかした方が良いと思うぞ」

不満はないので交換の申し出は丁重に断る。

代わりと言っては何だが、不満に思った点をミクに伝える。

「大中小で大雑把ではあるが分けてはいるのだがな……。あー……大中小と言っても、大型種から小型種と言う話で大型種の中の大中小と言う話ではないぞ。一応、下の方が小さくて上の方が大きい場合が多い。基本的に身長が低ければサイズも小さい。逆もまた然りで配慮はしてあるのだがな。オウキーニの様な体型などは例外だ」

「棚毎に管理してないのか……。初見だと、それが探すのに苦労する原因だろ。それに、その分け方だと小型種の中でも取分け大きい種と中型種の中で取分け小さい種でサイズ選びに困らないか?」

「……どうだろうな。自分の目線を基準にして探せば難は無いような気もするが……。今までそのような苦情は上がってきた事が無いから分からんな。とは言え、今、苦情として挙がって来たのも事実。後程、倉庫の管理を取りまとめている者に話を持ち掛けてみよう」

多少、考える素振りを見せたミク。

長年の慣れで不便を感じた事が無いミクにとってはコレが精一杯の回答。

瑞希と大輔……。特に大輔としては近寄る機会も少なそうだと判断したのだろう。「そこまでせんでも俺たちが慣れれば良いだけの話だから気にすんな」と受け答えをし、一応の決着とする事とした。


そんな雑談紛いの会話をしていると1人の女性の亜人が入室してきた。

その亜人はミクに何かを手渡し、二言三言瑞希たちの知らない言語で会話をした後、ミクに一礼をして退出するのであった。

「待たせたな」

ミクは亜人から手渡された物を確認しながら瑞希たちに声を掛ける。

瑞希と大輔も立ち上がり、ミクに近づく。

「えーっと……。こっちが瑞希でこれが大輔だな」

ある程度3人が近づいたところでミクがカードの様なものの表裏を確認し、瑞希と大輔に手渡した。

「これって食堂とかでミクさんが使っていたやつですか?」

「そうだ。証明書だな。お前らの物には部屋の鍵も登録してある。次に登録と使用方法の説明だが────」

社員証代わりのカードを確認する瑞希と大輔。

そんな2人を他所にミクは説明を続け、瑞希と大輔もカードの確認を後回しにし、ミクの説明に耳を傾ける。

2人はミクの指導の下、順番にカードの登録に取り掛かった。

声紋登録と指紋登録、もしくは双方の登録が可能との事だが、必要な場合は後に変更可能との事だったので、2人は取り敢えず指紋登録のみをする事にした。


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