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言葉が通じなくてもジェスチャーで何とかなった……と思う第91話

「購入方法もオウキーニのおかげで大体理解出来たし洋服は何とかなるだろ」

「そうだね。たまたまだけどオウキーニが通りかかってくれてよかったよね」

「なんだかんだ言ってオウキーニって有能だよな」

「僕はなんだかんだ言った覚えはないけどね」

第四倉庫から第三倉庫までの道すがら、オウキーニの評価をする瑞希と大輔。

第三倉庫は第四倉庫の目と鼻の先。雑談する間もなく第三倉庫へと到着。

早速倉庫内へ入る。

「第四倉庫から来るとより一層広く感じるね」

第一倉庫以外の倉庫の構造はすべて同じになっている。

だが、倉庫内の商品の大きさが段違いなのである。

第四倉庫のインテイリアは大型の物が多いのに比べ、第三倉庫は衣類や装飾品であり、大きい物と言っても高が知れている。

結果として商品が遮蔽物になる事もなく、倉庫の端から端まで見渡せる上に商品の大きさも相まって多くのスペースが発生している。結果として広く感じてしまうのである。

「そうだな。ここまで広いと探すのが一苦労だよな。第四倉庫の商品なら遠目からも分かるけど、服は実際に手に取ってみない事には判断が難しいからな」

「クッションよりもこっちの方がオウキーニの案内が必要だったかもね」

「とは言ってもオウキーニ帰ったしな。どうする?ミクとかオウキーニとか内情に詳しい人を後日連れてくるか自分たちで回ってみるかだな」

「どっちか選ぶ必要も無くない?自分たちで回ってみてダメそうだったら後日誰かに案内を頼めば良いと思うよ」

「そうれもそうだな。じゃあ、軽く見て回るか」

瑞希の提案を受け入れた大輔。

2人は見た場所を忘れない様に端から順番に見て回る事にした。

実際に手に取り、サイズなどの確認をする。

「そう言えば服には番号付いてないね」

「付いてないって言うか、これじゃないのか?」

瑞希の指摘に対し、洋服に貼られている文字と番号を指差しながら大輔は主張をする。

「でも、同じ物あるよ?似た物ならそうかもしれないけど、コレとコレって全く違うデザインだけど同じ物じゃない?僕が異世界の文字に慣れてなくて同じに見えるだけ?」

大輔の主張に対し、瑞希も瑞希なりに反論をする。

「うーん……確かに。まあ、そこまで大きい物でもないし嵩張るものでもないからな。購入したら持って帰れって事なんだろ」

大輔も瑞希の示した2つの服を見比べてみたものの、AやBと言った感じのアルファベットに似た雰囲気の文字の羅列と1桁の数字は同じものに見える。

付近にある他の服を眺めてみても同様の物や文字列は同じだが、後半の数字だけが違う物などが確認出来る。

分かる事と言えば、5~7つほどの文字列と1桁か2桁の数字の組み合わせであると言う事だ。

考えても分からない上に聞ける相手もいない。大輔は文字列の存在を無かった事にして勝手に解釈する事にした。

「そうなのかな?」

大輔の言い分は分からないでもない。

理解は出来るが、納得は出来ないと言った様子の瑞希。

「そんな事よりデザインが独特な物が多すぎないか?」

大輔としては番号以上にデザイン面が気になるようだ。

確かに今まで手にしてきた服はどれもこれもが何処かの民族衣装なのではないかと疑問を抱かせるような独特のデザインセンスの物ばかりで、瑞希や大輔が着用しているようなシンプルな物は今の所見受けられない状況である。


その後も服を見て回ったが、中々思うような服が見つけられず……。

最終的に動き易そうでサイズが合い、尚且つ控えめなデザインの服を見つけた時点で服探しに疲れ果てた2人は半袖のシャツを1枚ずつ手にして会計へと向かうのであった。

「麻かな?」

「合成繊維ではなさそうだよな。あとはウールっぽくないってのは分かるけど、それ以上の事は分からん。普段、洋服買う時も触り心地は多少気にするけど、素材までは見ないからな。触ったところで何も分からん」

会計までの道すがらは服の話。

だが、2人とも服に関しての知識は乏しい。

会話をひねり出そうとするものの、単発の受け答えで終了してしまう。

広い倉庫とは言え、商品を避けて回り道をしたところで会計までの道程は100mにも及ばず、あっという間に会計までたどり着いた。

「あ、あの……」

会計場所で座っていた亜人に瑞希が声を掛ける。

「Rjiy ud uy?」

瑞希の声に反応をし、瑞希と大輔を観察するように凝視した後、何かを話した。

無論、瑞希と大輔には何を言っているのか理解出来ない。

「コレとコレ、着るから買いたい。持って帰る。大丈夫?」

瑞希は自身が持っている服と大輔が持つ服を指差した後、服を広げ、体にあてがうと外を指差す。

何とかジェスチャーで察してもらおうと言う作戦である。

「Nep……?」

亜人も瑞希のジェスチャーから何かを察しようとしているようである。

だが、瑞希のジェスチャーの内容を理解しているのかは不明である。

「コレ」

更に瑞希は服に貼られている文字と数字の羅列部分を指差し、何かを記入するジェスチャーをする。

瑞希としてはコレが商品の管理番号かは半信半疑であったものの状況を打開する為に賭けに出たのであった。

「Aj,Nep!」

瑞希の賭けが功を奏し、受付の亜人は全てを理解したようだ。

瑞希と大輔の服の番号を紙に書き写し、瑞希たちに見せる。

瑞希は大きく頷く。

「OK、OK」

双方納得したように感じた瑞希は亜人に手を振り、倉庫を後にする。

そして、大輔も瑞希の後に続く。


「本当に大丈夫か?」

倉庫を出た2人だが、大輔は瑞希と亜人とのやり取りに不安が残るようだ。

「追ってこないし大丈夫じゃない?万引きだったら誰か追いかけてくるでしょ?」

瑞希は第三倉庫を振り返りながら大輔に返答をする。

「うーん……。そうか……な?」

納得は出来るが、不安は残る。

「じゃあ、明日、ミクさんに今日購入した物を報告すれば良くない?もし、服の購入が記録されてなかった場合は事後報告って事で」

「まあ、今はそれしかないか……」

最終的には明日、ミクに確認を兼ねて報告する事で意見は一致。

思いの外、買い物で時間を使った瑞希と大輔。

倉庫周辺は住宅も無く、等間隔に街灯が配置されているだけで辺りは既に真っ暗である。

倉庫エリアを抜け出し、街明かりを頼りに旅館を目指すのであった────。


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