異世界で商品の初購入に成功した第90話
「ここニャ」
寝具コーナーの片隅にある布団類や枕などが置いてあるスペースの更に片隅。
クッションが山の様に積まれている。
「あったね。何で見落としたんだろうね」
「まあ、そもそもベッドしか眼中になかったしな。序でだし布団と枕も買っていこうぜ」
「案内も終わったニャ。ワイはこの辺で……」
「まあ、慌てんなって」
忍び足で距離を取ろうとしたオウキーニの服の袖を掴みオウキーニを開放する様子を見せない大輔。
「用は済んだニャ」
大輔の腕を振り解こうと必死なオウキーニ。
「案内してもらったんだし、離してあげたら?」
瑞希はオウキーニに同情的な反応を見せる。
「瑞希はんもこう言うてるニャ。離すニャ」
「まあ、待てって。直ぐ選ぶから会計も頼む。番号伝えるだけで良いって言われてるけど、言葉が通じなくて不安なんだよ。布団とクッション選んだら終わりだから。な!」
オウキーニの服から手を放し、両手を合わせ拝むように懇請する大輔。
「なら、さっさと選ぶニャ」
素直に懇願されると断れない性分なのだろう。
オウキーニもその程度なら。と納得をし、2人に購入商品の選定を急がせる。
「藁?」
布団を選んでいた瑞希が布団コーナーには似つかわしくない物に目が留まる。
それは乾燥させた草の様なものの束。
「主に有翼種族が寝床に敷き詰める事があるニャ。稀に獣人でも寝床に敷き詰めるのが好きな種族も居るニャ」
「へー……。なるほど。そう言う所は異世界って感じだね。品揃えとかね」
オウキーニの説明に納得と感心をしつつ、元の場所へと戻す。
「瑞希はん達はこっちが良いニャ。羽根布団ニャ。今は季節外れやけど、特に冬は重宝するニャ」
「何の羽使ってるの?」
「グリフォンだったりハーピーだったり、コカトリス、ガルーダとか色々ニャ」
「何か夢のある名前が大量だな。因みに敷布団のおススメはどれだ?」
「バロメッツの毛をふんだんに使用したコレなんかが良いニャ」
瑞希と大輔はオウキーニに進められるがまま、布団一式を選択。
序でに枕とクッションの選定もオウキーニに任せる事にした。
オウキーニも急かしていた割に真摯に受け答えをしてくれている。
瑞希は青や緑を基調とした寒色系の物を。そして、大輔は赤やオレンジと言った暖色系の物を中心として購入する事となった。
無事、布団一式とクッションの選定を終え、一行は会計をする為に第三倉庫入口へと向かう。
オウキーニが何やら会計担当と話をしているが、瑞希と大輔の2人には何を話しているのか理解は出来ない。
「商品の番号を書くニャ」
オウキーニは瑞希と大輔に紙とペンを手渡す。
2人はスマホにメモをした番号を渡された紙に書き写す。
紙とペンをオウキーニへと返却した。
「商品はどうするニャ?何か持って帰る物はあるかニャ?全部後日配送かニャ?」
「まだ部屋が決まってないから全部後日配送でお願いします」
「了解ニャ。部屋番号が分からんなら商品番号を書いた紙に名前を書くニャ」
「部屋が決まったらどうすれば良い?勝手に配送されるのか?」
「知らんニャ。その辺は姐さんが手配するはずニャ」
会計担当に対応しつつ、大輔の質問への回答も欠かさないオウキーニ。
会計担当が番号の確認をし、商品の購入が完了した。
「時間取らせちゃってごめんね。でも助かったよ。ありがとうオウキーニ」
「全くニャ。ワイはさっさと帰宅したかったニャ。次からは自分たちで何とかするニャ」
憤慨している様子を見せているものの、半分は冗談である事は容易に想像出来る。
「おう、ハニーによろしくな。また遊びに行くって伝えてくれても良いぞ」
「大輔はんがハニー言うのはおかしいニャ!あと、遊びに来なくて良いニャ!」
今の発言は本心のようだ……。
「ハハハッ、冗談だって。じゃあ、またな」
こうして、オウキーニは帰路に就き、瑞希たちは衣類探しに第三倉庫へと別れるのであった。