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どんな相手だったとしても見ず知らずの人間を車に乗せる事に恐怖心はないのかと考える第9話

その後は何事もなく目的地周辺に到着した。

「この山の中腹あたりが目的地だね。途中から廃道になってるって話だから少し歩く予定だよ」

「車止める場所はあるん?路駐する感じ?」

「情報では廃道に入って20mくらいの場所にバリケードがあって立ち入り禁止になってるから、廃道って言うか、旧道の20m分は車を止めても他の車の交通に支障はないって書いてあったよ」

「了解。山道って見通しが悪いから路駐はしたくないって思ってたから安心した。まあ、夜中で車通りも少ないから杞憂に終わるかもしれないけどな」


他愛もない会話をしながら山道をしばらく走ると大輔が何かに気が付く。

「あれ?」

「どうかしたの?」

「いや、チョット何か見えた気がしたんだけど……。気の所為かな?」

山に沿ってS字に作られた道。谷を挟んだ向こう側の道を顎で指しながら何かを見たと主張する。

瑞希は大輔が示した方を凝視する物の、何も見つける事が出来なかった。

「うーん……。特に何もないようだけど……。幽霊?」

「気の所為かな?十数秒もしないうちにあっち側につくから何かあれば確認出来るから良いか。たぶんビニール袋とかゴミが木の枝に引っかかってるってオチだと思うけどな」


そして、大輔が何かを見たと主張する場所手前のカーブに突入。

少しスピードを落とし、周囲を確認するも何も無い。

「何もないね。ガードレールの反射板とかかな?」

「かもな……。って、瑞希、アレ!前!前!」

大輔は運転に集中しようと前を向き直った瞬間、何かを発見し瑞希に知らせる。

それと同時に大輔は車のヘッドライトをハイビームに切り替えた。今までロービームで走らせていたのは単に大輔が運転に不慣れだったに過ぎない。前方に何かを発見した事でハイビームの存在を思い出したのだった。

ハイビームに切り替えた事で先のカーブ付近に白い人影がくっきり映し出される。

「女の人?」

「どうする?声掛けてみるか?」

「足はあるからお化けではなさそうだよね。でも、こんな時間にこんな場所で女の人が1人で歩いてるって明らかに異様じゃな?」

「足の有無は一旦置いといて、変だよな。でも、彼氏と喧嘩して山道で置き去りにされたとか何か理由があって困ってる可能性も無くない?」

徐行以下、止まるか止まらないかのギリギリまでスピードを落とし、今後の動向について作戦会議をする2人。

最終的に窓を少し開け、声を掛けてみて変な人だった場合は直ぐ様逃げる。という意見で一致。

15km/h程度までスピードをあげ、女性まで追いつき大輔が声を掛ける。

「あのー……突然のお声掛けすみません」

「はい?」

「夜遅くにこんな場所を歩いてるなんて何かありましたか?」

「この先に少し用事がありまして」

やや細身で腰まである長めの髪、服装は白のワンピースで靴は普通のスニーカー。

会話も成立していて特に不自然な様子はない。時間と場所を除けば……。

「先……?もしかして旧笛吹トンネルに肝試し?僕たちも今から行く予定だよ」

「えぇ……そんな感じです」

勝手に女性の用事を予測し、少し身を乗り出すようにして会話をする瑞希。

女性の返答も瑞希の予想を否定するものではなかった。

しかし、返事の仕方から瑞希の予想が的中した訳でもなさそうな雰囲気。

大輔は多少の違和感を覚えながら会話を続ける。

「では、誰かに置き去りにされたとかではないんですね?」

「はい。自分の意志でここを歩いています」

「それなら良かった。何かあったのかと思って声をかけたんですが問題なさそうですね」

「そうでしたか。お気遣いありがとうございます」

「いえいえ、お気になさらず。……そうだ。目的地まで大した距離ではないにしろ、徒歩では少し時間が掛るでしょう。良かったら送りますよ。一緒に行きますか?男2人の車で不安が無ければですが」

「本当ですか?じゃあ、お言葉に甘えて。よろしくお願いします」

瑞希と大輔の乗る車に何の躊躇いもなく後部座席に乗り込む女性。

少しは考えるかと思っていた大輔は女性の無防備な行動に対して逆に不安感を持つ。

「怖くないんですか?俺たちが何もしない保証はないんですよ」

「それはお互い様です。こんな山道を夜中に歩く人を車に乗せるのは怖くないんですか?話し方や仕草で貴方達が無害な事は推測出来ますよ」

女性は上品に微笑みながら大輔の質問に返答をする。

「確かに。じゃあ、出発します」

言うまでもなく、大輔が納得したのは女性の返答の前半部分の事だ。

後半の話し方や仕草云々の部分については多少の疑問を持つが初対面の人間に対し、あまり深く追及するのも失礼だし、否定的な意見を言い過ぎても乗せたくないのか?と疑問を持たれる可能性もある。

これ以上、この会話は不要だと感じ、大輔は車を発進させる。

「再度確認ですが、トンネルまで行って問題ないんですよね?他に目的地があるなら送りますよ。流石に女性が夜中の山道を一人歩きするのは危険すぎるので」

幽霊の存在を否定しているものの女性の行動が怪しすぎる為、万が一の可能性も考え、ルームミラーで女性の姿を確認しながら会話を続ける大輔。

「いえいえ笛吹トンネルまでで問題ありません。私も笛吹トンネルまで行く予定でしたので」

「やっぱり肝試し?」

大輔とは違い、車の運転に注意をする必要のない瑞希は体を乗り出し直接女性と対面する形で会話をする。

シートベルトがあるので体制が厳しいが心霊スポット関連の話の為にはと多少の我慢をしている。

危ないからと普通に座るよう注意を促す場面なのだが、車とすれ違う可能性も低い事もあり、運転席まで侵入しなければ良いと瑞希を放置する大輔。

「そうですね。でも、肝試しをする側ではないですね。(いざな)う側と言えば良いんでしょうか……?」

「驚かせる側って事?確かにThe・日本の幽霊!って感じのいかにもな衣装だよね。心霊スポットに白い衣装で黒髪ロングの女の人が居たら普通の人は腰を抜かす可能性高いね」

「大輔、今度僕たちも驚かす側で心霊スポット巡りしようよ」

「あぁそうだな。考えておく」

瑞希が女性との話で盛り上がり、後ろを向いている為、監視の必要はないと感じた大輔は暗い夜道の運転に集中する。

瑞希への返答がおざなりになっているのも慣れない山道を走行している所為もあるだろう。

「うふふ……。楽しそうですね。怖い場所は好きですか?」

「怖い所って言っても高い所とかは興味が無くて、スリルを味わいたい訳ではないんだよね。心霊スポット……、幽霊とか妖怪とかの類が好きって表現した方が正しいかな」

「まあ、そうなんですね。それは丁度良いです。笛吹トンネルを通れば沢山の妖怪に出会う事が出来ますよ。なんせ、神隠しで有名なトンネルで、あのトンネルは妖怪たちの住む世界と繋がってますからね」

「神隠し……。確かに行方不明になるって有名だね。事故も多いって話だよね。妖怪の世界か―……。行ってみたいなー」

今から行く予定の心霊スポット関連の話で盛り上がっている2人を横目に大輔は車を走らせる。


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