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異世界での初仕事が始まる第86話

第四倉庫前に到着した瑞希と大輔。

「勝手に入って大丈夫なのかな?」

前回はミクが同行していたので気に留める必要も無かったが、商会の関係者が居ない今、2人きりで、更には無断で侵入しても問題が無いのか不安になる。

「ミクは何も言ってなかったな。そう言えば購入方法も聞いてねーな。倉庫の人に言えとは聞いたが……。金についてはヴァンの資金頼りだな」

来たまでは良いが、肝心の倉庫前で困惑した様子の2人。

「とりあえず入ってみる?何か言われたら、その時はその時って感じで」

立ち止まっていても時間が過ぎるのみ。

移動に要した時間を考えると始業時間(予定)まで1時間を切っている。

「だな。グダグダと話した所で何か進展する訳じゃないしな。それと今はめぼしい物だけチェックしておいて購入は後だな。日本語が通じて尚且つ取り置き可能なら予約してから仕事に向かうか」

始業時間までの方針が固まった2人は意を決し倉庫の中へ。


入口付近に数名の社員らしき亜人はいたものの、瑞希たちに声を掛ける者は1人もいない。

「勝手に入って問題なかったみたいだね」

「話しかけられても日本語しか分かんねーし、内心結構ドキドキしてた」

緊張感から安堵感に変わり、口も軽くなる。

2人は雑談をしながら家具を見て回る。

「どの程度まで買えば良いかな?」

「大きさか?部屋見た限りだと特に気にする必要はないんじゃないか?」

「そうじゃなくて、物?何て言えば良いのかな?えーっと……あれでしょ。いつまで滞在するか分からないし、どの程度必要なのかなって。棚とかは必要そうだけど、タンスまでは必要なさそうでしょ?ベッドと布団とか最低限の家具ってどの程度なのかなって」

「あー……。そう言う事か。寝具と服、下着類が数着、照明はあったから良いとして、棚は必要か?あとはテーブルとイスは……。確かに少し考えた方が良さそうだな。ヴァンの資金に頼りすぎても何だし、足りない物は必要な時に働いた金でだな」

「配送もどうするんだろうね。自分たちで運ぶとしたら結構大変だよ。ベッドにしても布団だけ敷いて寝るにしても」

「そうだな。料理は出来なくても冷蔵庫的な物があれば飲み物は入れておきたいし、そうなると結構重いよな」

2人で話し合いをした結果、今は見学のみに止め、後程ミクに相談をした上で助言を受けた方が良さそうだと言う結論に至った。


結局、第四倉庫の半分程度ですら見学する事も出来ずに始業時間が迫って来た。

「倉庫広すぎ」

「全部回るだけでも骨が折れそうだな。効率的な回り方も含めて後でミクに相談だな」

倉庫の広さに文句を言いつつ、2人は小走りで第一倉庫へと向かうのであった────。


予定時刻数分前。

ギリギリの時間で滑り込むように第一倉庫の扉を潜る。

第一倉庫に行って受付に話せと言われたのみで、その後についての説明は受けいていない。

「オマエラがミズキとダイスケか?」

どうするべきかと顔を見合わせた瑞希と大輔の下に近づいてきた亜人が片言の日本語で話しかけてきた。

「はい。僕が瑞希でコッチが大輔です」

「話、聞いている。仕事、教える。着いてくる」

「「よろしくお願いします」」

一瞬困惑した2人だが、状況を理解し、亜人の跡に続き第一倉庫内へと移動する事となった。


「コレ、運ぶ。番号、倉庫の番号。置き場、入口ある。運ぶ終わる戻る」

大量のカゴ台車の前に到着した亜人は説明を始める。

「この荷物を倉庫の入り口まで持って行って戻って来るって事?」

何故か責任者(?)の亜人ではなく大輔に質問をする瑞希。

質問をされたところで大輔も初仕事なので答えに困るだけだ。

「それで良い」

瑞希と大輔のやり取りを聞いていた亜人が瑞希の質問に対し回答する。

「カゴ車はどうするんだ?カゴごと置いてきて良いのか?荷物だけ降ろして台車は持って帰るのか?それともここで荷物を降ろして荷物だけを運ぶのか?」

「置くの物だけ。コレ、持って帰る」

「了解、了解」

1回(いちかい)、オマエラ2人(ににん)で行く」

「うぃーっす。瑞希、行くぞ」

「う、うん」

速攻で順応している大輔に困惑する瑞希。

言われた通り2人で1度荷物を運ぶ事となった。


「数字はローマ数字で僕たちにも理解出来るし助かったね」

「そうだな。数字も読めない状態だと、まずは数字覚える所からだったな。とは言っても倉庫で働くうちは第七倉庫までだし1~7まで覚えれば出来そうな仕事だから、直ぐに出来そうではあるがな」

カゴ台車の横に貼ってある番号の話をする瑞希と大輔。

2人が言うようにカゴ台車には大きく「3」と書かれた物が貼られている。

数字の通り第三倉庫入口まで移動をする。


第三倉庫入口に到着した瑞希と大輔。

「着いたは良いが、何処に置くんだ?」

周囲を見渡したものの、積み荷を置くスペースも荷物を置いている他の者の姿も確認出来ない。

「大輔、中。入ってすぐの左手側」

カゴ台車の前を引いて歩いていた大輔の疑問を後ろから押していた瑞希が解消する。

瑞希の指示通り倉庫内に入り、左手側に視線を移す。

そこには乱雑に置かれた荷物が確認出来た。

「あー……。ここか。ってか瑞希何で知ってたんだ?」

「さっき買い物の下見に来た時にコレ押してる人が荷物降ろしてるの見たからね。さっきは第四倉庫だったけど、置き場は同じかなって。まあ只の推測ではあったんだけどね」

「なるほど。確かに倉庫ごとに置き場が違ったら効率悪くなるし、瑞希の考えは理にかなった考えではあったな。と言っても倉庫の数も第一倉庫除いた6個だし、違ってもさほど問題ではないがな。何にせよ置き場が見つかって良かった。分からなかったら誰かに聞く必要があったからな」

無事に持つ置き場を発見出来た瑞希と大輔。

2人は早速指定のスペースに積み荷を降ろす。

他の荷物と違い、2人が降ろした荷物だけが無駄に整っている。

2人の性格と言うか几帳面さが表れている一場面とも言えよう。

そして、積み荷を全て降ろし終えた2人はカゴ台車と一緒に第一倉庫へと戻る。


「出来たか?」

2人が第一倉庫に戻るや否や先程の指導係(?)の亜人が声を掛けてきた。

「多分大丈夫だ」

「入ってすぐの左手側の場所ですよね?」

瑞希は自身の左手を軽く上げながら指定されていた場所の確認をする。

「そう。問題ないな。次から1人(いちにん)1個(いちこ)。一緒の場所選ぶ。重い荷物2人(ににん)で協力して降ろす。戻ると次運ぶ」

「1人1個のカゴを持って行く。2人同じ倉庫に向かう事。重い荷物がある場合は協力して降ろせ。後はその繰り返しって事か?」

亜人の言っていた事を自分が理解した通りの言葉に直し、確認をする。

万が一齟齬が生じていた時の為の保険の様な物だ。

「そう」

「了解。行くぞ瑞希」

亜人からの同意を得た大輔は瑞希に声を掛け、2人で作業に戻るのであった────。


次回投稿


6月1日(20時予定)です。


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