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案の定な展開な第84話

翌朝────。

大輔はノックの音で起こされる。

スマホを見ると午前2時……。

(……誰だ?こんな時間に)

一瞬、訝し気な表情を見せた大輔であったが、次の瞬間には全てを理解した。

(……あ、朝食か)

瑞希と違い、大輔は昨夜スマホの時間をこちらの世界の時間に合わせていなかった。

しかし、十分な睡眠時間のおかげもあり、起床後すぐではあったものの頭は働いたのだ。

「はーい。今、開けまーす」

ある程度声を抑えつつ、外に聞こえそうなギリギリの声量で返事をする。

ドアを開けると予想通り朝食をカートで運んできた仲居の姿が目に入った。

「向こうはどうでしたか?」

「まだお声掛けしておりません」

仲居の返答を聞いた大輔は瑞希の部屋のドアをノックする。

「瑞希―、朝だぞー」

普通に話すよりも少し大きめの声量。

大きい声を出すのは他の客の迷惑になる可能性がある為、憚られたが仲居から何も注意されないので許容の範囲なのだと勝手に解釈する。

……しかし、瑞希からの反応も無い。

先程よりも少し強めにノックする。

「みーずーきー」

ノックは強めにしたものの、声量は先程と同じ程度に抑えている。

……やはり瑞希からの返事はない。

「すみません。開けてもらって良いですか?」

瑞希が起きてくる可能性にさっさと見切りをつけ、仲居に頼み瑞希の部屋のドアを開錠してもらう。

仲居は大輔に言われるがまま瑞希の部屋のドアを開錠する。


瑞希の部屋に入った大輔の目にまず飛び込んできたのは口を半開きにしたまま間抜け面を晒し気持ちよさそうに寝ている瑞希の姿。

案の定、自力での起床は出来なかったようだ。

「起きろ!」

逡巡する事無く瑞希のおでこを叩く。

大輔としては掛け布団を剥ぎ取りたかったのだが、仲居の目がある。

せめてもの情けとして、これ以上の無様な姿を晒さない起こし方を選択したのだ。

「んぁ?なに?」

相も変わらず間抜けな声を出し起きる瑞希。

おでこを軽くさすりながらなのが滑稽さに拍車をかけている。

だが、起きたは良いものの未だに状況を理解していないようだ。

「朝だ」

「あさだ?」

起き抜けでもある程度頭の働く大輔と違い、瑞希の思考回路は壊滅状態のままだ。

大輔の言った事をオウム返しするも、単語の意味さえ理解出来ていない様子である。

「あーさーだーぞー。おーきーろー」

取り敢えず状態を起こした瑞希の両肩を掴み、揺すりながら瑞希の覚醒を促す。

「起きた。起きたから」

流石の瑞希もここまでされると目が醒めたようだ。

「すみません。朝食はこっちに2人分運んでもらえますか?」

瑞希の返答を聞き、大輔は仲居に朝食の準備をお願いする。

仲居は仲居で何事も無かったかのように朝食の準備を開始する。


朝食の準備が完了した仲居。

食べ終えた食器類は廊下に出しておけば良いとの説明をし、一礼をした後退室した。

仲居が退室したのを確認した瑞希と大輔は配膳された朝食の前に座り、食事を開始。

昨晩とは違い、緊張した様子はない。

「昨日の夜の話なんだが……」

唐突に大輔が口を開く。

「ん?」

大輔の話に耳を傾けようと瑞希の箸が止まる。

丁度ご飯を口に運んだ瞬間だったので、なぶり箸をしているような形で止まっている。

何か重要な話をしていたかと記憶を辿るが思い当たる節が無い。

「明日の朝は自力で起きると自信満々に言った知り合いがいたんだがな……」

この時点で瑞希は自分の事を言っているのだと理解した。

その後の展開も予想は出来る。

大輔の小言のお時間だ。

しかし、瑞希が自力で起床出来なかったのも事実。

結果的に大見得を切った形になってしまった以上、大輔からの批判は甘んじて受け入れるつもりだ。

大輔が何を言おうとしているのか理解した瑞希は口に入れたままだった箸を口から出し、そのまま食事を続ける事にした。

「今朝、そいつの部屋に行っても返事が無いし、開錠して入ってみたら、口開けて、爆睡して、やがったんだよ」

一言一言聞き取りやすいようにと丁寧に重要な部分を区切りながら話す大輔。

勿論、聞き取りやすくしている訳ではなく嫌味でそうしているのである……。

「……」

返す言葉も無い瑞希は無言のまま大輔の小言を聞き続ける。

「スマホのアラームは?」

瑞希としては何も言わず黙って聞き続けるつもりではあった。

しかし、瑞希からの反応が無い事に痺れを切らしたのだろう。

大輔が瑞希に質問をする形で瑞希の反応を見る。

これで瑞希が返答しなければ大輔の話を聞いていないと判断される。

「おかしいよね。アラームはセットしてたんだけどね。勿論、スヌーズ付きで」

反応は見せていないが大輔の話はしっかりと聞いているようだ。

だが、瑞希の返答を聞いた大輔は頭を抱えたくなる。

「じゃあ、何で起きてないんだよ」

「不思議だよねー」

「……」

糠に釘。暖簾に腕押し。とは正にこの事で、瑞希に注意しているつもりなのだが、全く手ごたえが無い。

真正面から問い詰めても無駄だと悟った大輔。

それと同時にこれ以上の追求は無駄だと理解し、「はぁ……」と軽く溜息を吐く。

「でもね。これだけは信用してほしいんだけど、一応は反省してるんだよ。それと、起きないといけないってのも理解はしてるんだよ。だけど、無意識に目覚まし止めちゃうから起きられないんだよね」

「さいですか」

「あー、信用してない」

「今までの言動で信用出来る要素が1つもねーよ」

「確かに」

大輔の言い分に納得してしまう瑞希なのであった。


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