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社内見学が終わり宿も決まる第82話

実験室を出た後、瑞希たちは営業、販売、会計、庶務、総務etc.と各部署の見学を続けた。

オウキーニは販売部門との事だったが、販売部門の者たちは外に出払っているものが多く、部署内はほぼ無人状態だった。


そして全ての部署を回り終わる頃には夕刻となっていた。


案内も終了し、ミクの部屋に戻った一行。

「凡そこんな感じだ。何か質問などはあるか?」

「特には無いです」

「俺も別に無いな」

「そうか。では、改めて聞くが、働く意思はあるのか?」

「ある。……と言うか、働かないと元の世界にも帰れそうにないと言うか伝手が無いと言うか、此処に留まって情報収集するのが今の所最善かなって感じだな」

「だね。でも、何処で働くんですか?見学しかしてないんですが……」

瑞希の疑問は尤もである。

「そうだな……。希望はあるか?」

「俺は頭より体動かしたい。倉庫か庶務で雑用が良いな」

「うーん……。僕は最近体動かしてなくてなまってるから肉体労働はちょっと……」

「いや、逆に体動かせよ。畑仕事で筋肉痛になってるようだと今後何かあった時に大変だぞ」

「なるほど……。因みに2人は一緒の場所の方が良いのか?」

「どっちでも良いかな。働き始めたら雑談してる暇ないだろうしな」

「知り合いは居た方が安心出来るよね?日本語通じないと不安だし」

「大輔は問題なさそうだが、瑞希は多少難がありそうだな。そうだな……」

2人の返答を聞き、しばらく考え込むミク。

「では、こうしよう。明日から数日ずつ各部署2人一緒に研修で回ってもらう。言葉の壁など働き易さ等を考慮して再度選択してもらう。但し、希望しても各部署の責任者の評価、判断によっては拒否される恐れもあるから第3候補くらいまで決めると言うのはどうだ?」

「それなら良いかも」

「俺もそれで問題ない。職場の雰囲気が分かれば尚良しだしな。給与についてだが、働きを見てからと言いたいところだが、1時間で今日の昼食の1.5倍程度で考えているのだが、不満はあるか?」

「少し多い気もするが、多い分には困らないし、俺は構わないぜ」

「んー……昼食って社食ですよね?他より安いと思うんですが、他の食堂で食べる場合とどの程度差がありますか?」

「それは食堂によるが、同程度の料理を提供する食堂の八掛け程度と考えて良いだろう」

「八掛け?」

「8割って事だろ。だからこの場合、社食が他の食堂より2割程度安いって事だな」

「……つまり1食の1.25倍か。確かに高めだね」

「何で1.25?1.2じゃね?」

「え?だってx×0.8=1って事でしょ?」

「え?」

瑞希の回答を聞いても理解出来ずにいる大輔。

「え?だから80円に1.25掛けると100円でしょ?」

大輔は改めて説明された瑞希の解説を聞き、指を折りながら計算をする。

「……おぉ!本当だ」

「盛り上がっている途中で申し訳ないのだが、1つ注意点がある」

「但し使用期間中は給料も八掛けになるとかか?」

「違う。その給与なのだが、基本的にこの町でのみ使用可能と考えておいてくれ」

「他の場所では使えないって事ですか?」

「まあ、そう言う事になる」

「へー……。仕入れとかどうしてるんだ?共通の通貨が無いと不便だろ」

「それはそうなのだが、基本的には物々交換だ。商会との取引も基本は物々交換で過不足分は妾たちの通貨単位で出納を付けて調整管理しているが、部外者が外で同じ物を手に入れる場合はほぼ例外なく物々交換するほかないだろう」

「なるほど。当面は此処で暮らすつもりだし俺は良いと思うぞ。瑞希は?」

「僕も問題ないよ」

「よし。では契約内容は後日書面にまとめておこう。今日は解散。また明日ここに来たまえ」

こうして解散する流れになったのだが……。

「ちょっと待て」

大輔が制止する。

「何だ?」

「家が無い!」

そう、今夜宿泊する場所が無いのだ。

「そうだったな。今、寄宿舎の鍵を用意させよう」

「待て待て」

「どうした?」

「家があっても家具が無いだろう。床で寝ろってか?体バキバキになるぞ」

「……確かに。では宿を手配しよう。暫し待て」

瑞希と大輔に待機の指示を出したミクは部屋を出て何処かへ行ってい絞まった……。


ミクの指示通り、暫く待つとミクが戻って来た。


「待たせたな。では行くとしよう」

「何処にだ?」

「宿に決まっているだろう。今まで何の話をしていたと思っているのだ?」

「それもそうだな」

ミクの返答で全てを納得する大輔。

「スチュワートさんが宿泊してたから分かってたけど、宿泊施設もちゃんとあるんだね。ほとんどが商会の関係者って言ってたし需要あるのかな?」

「そこまで多くは無いが、直接取引しに来る者も居るからな」

「なるほど」

「さて、無駄話はこの辺で切り上げ、移動するとしよう」


本館を出てしばらく歩き、宿泊施設へ到着。

宿泊施設は他の建造物とは違い異彩を放っている。

何故かこの施設だけ和風。

The旅館と言った佇まいで落ち着いた雰囲気である。

みくず様、お待ちしておりました」

入って早々、出迎えを受ける。

しかし、出迎えたのは女将ではなくスーツ姿の亜人である。

施設の内装も外装も旅館そのものなだけにギャップが凄まじく、異世界感を際立たせている。

「急な宿泊依頼で申し訳ない。この2人だ。3日~5日程世話を頼む」

「畏まりました」

瑞希と大輔の違和感を他所にミクたちは会話を始める。

瑞希と大輔にとっては違和感があるものの、ミクたちにとっては当たり前の光景なのだ。瑞希たちが違和感を抱いている事に気が付かないのも当然である。

「お金は勤めてからでも大丈夫なんですか?」

違和感はあるものの、こちらの世界に来てから幾度も経験してきた事。

瑞希は頭を切り替え、疑問を口にした。

「いや、坊やの資金から払うぞ」

「それをしない為に働くって話だった気が……」

「妾は頼りっきりにする事を否定しただけで多少使用する分には構わんと考えている。坊やも当面の資金は了承しているからな。それに、妾の腹は痛まん」

「まあ、資金0でってのは無理な話だしな。ヴァンの資金に頼らないにしてもミクに頼むかホテル側に後払いにしてもらうか。結果はどうあれ誰かに頼る事に変わりはない。今回は素直にヴァンの資金に頼った方が丸く収まるだろ」

「賢明な判断だ。そう言う事で支配人、2人を頼んだぞ」

「畏まりました。お部屋へ案内いたします」

支配人と呼ばれた亜人は瑞希と大輔を部屋へと案内しようとした。

2人を見送り、帰ろうとしていたミクが何かを思い出し、声を掛ける。

「そうだ、言い忘れていた。日本語の通じる旅館を選んだからここに滞在している間は日本語で問題ない。困った際は気兼ねなく日本語で相談すると良いぞ」

ミクは2人にそれだけを伝えると旅館を後にするのであった。


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