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昼休憩の平凡な一コマな第78話

商会長の後に続き歩き続け、本館(?)まで戻って来た一行。

商会長は本館横の建物の中に入る。

瑞希たちも商会長の後に続き建物内に入る。

中に入ると大量のテーブルとイス。そして、厨房にカウンターが目に入った。

どうやら食堂のようだ。

まあ、商会長が食事にすると言っていたので食堂で間違いないだろう。

「何をしている。早く来い」

出入り口付近でキョロキョロと観察するように辺りを見渡している瑞希と大輔に向かい商会長が声を掛ける。

声に反応した2人は商会長に近づく。

そして、商会長に倣い列の最後尾に並ぶ。

「此処って食堂ですよね?」

「あぁ、社員食堂だ。と言ってもこの町の者はほぼ全員が妾の商会の関係者だからな。社員食堂の体は成しているものの形骸化しているが問題ない。赤の他人が入ってくる事は稀だし、入ったとしても何らかの関係者だ。目くじらを立てる必要も無い。厳密に言ってしまえばお前らもまだ部外者だからな」

「それもそうだな。ほぼって事は無関係の奴は何してんだ?」

「寄宿舎や住宅地近くの食堂や病院、育児施設、建築関係が主だな。それでも妾の下で働く者の為の職業故、ここで食事しても問題ない。寧ろその者たちが居る事で安心して働けるなら歓迎すべき者たちとも言えるし、妾が願い出て出港してもらっている部分も大いにある。無下にする事は出来ん」

「なるほどな」

そんな話をしながら列に並んでいると商会長の前に居る亜人から声を掛けられた。

勿論、声を掛けられたのは商会長であり、瑞希と大輔は眼中にない様子だ。


言葉は理解出来ないものの、仕事の話か?と思いながら商会長たちの様子を眺めていたが、どうやら違うようだ。

商会長と亜人の身振り手振りから推測するに、亜人が自分の前を譲ろうとし商会長が断っている様に見受けられる。

「何かあったんですか?」

言葉が理解出来ない以上、推測するか質問する以外に疑問を解消する術はない。

今回は言葉を理解出来る者……と言うより、当事者がいるのだ。質問するのが一番手っ取り早く確実な解決策と言えよう。

瑞希たちに伝える事で差し障りが出るような内容ならそう言われるだけの話だ。

「なに、大したことではない。妾を先に行かせようとしたから断った。妾たちよりも現場で働く者たちの方が優先されるべきだと言い聞かせただけだ」

凡そ瑞希たちが予想していた通りの会話内容だったようだ。

しかし、大輔はバイト先の店長の顔を思い出し、商会長の考えに感心をした。

何せ大輔のバイト先の店長は何者よりも自分最優先とし、それでいて、弱い者には強く当たり、自分よりも立場が上の者に対しては媚び諂う。

典型的な人間のクズ。

大学付近で時給が一番高いと言うだけの理由で働いてはいたが、他に良いバイト先があるなら即バイト先を変更していただろう。と思わせる様な人物だったからだ。

バイト先の店長と比べ、商会長は器が広いと感じてしまう。

「何だ?急に見つめて。気持ち悪い。美貌すぎる妾に見惚れたか?」

そんな大輔の羨望の眼差しを一蹴する商会長。

声の調子から大輔を揶揄っている事は想像に難くない。

しかし、その言葉を聞いた大輔は心の中で先程までの想いを訂正するとともに、商会長の評価を下方修正した。

「き……、失礼な。現場第一主義に感心しただけだ」

商会長の言葉が冗談半分だとは理解している。

しかし、『気持ち悪い』の一言に動揺した事実は隠せなかった。

歯に衣着せぬ態度に評価を下方修正したとはいえ全体評価はプラスであり、感心した事に違いはない。

何とか平静を装いながら、誤解を与えない程度に羨望の眼差しで商会長を見つめた理由を述べる。

「そうなのか?当たり前の事であろう。お前らの世界でも働かざる者食うべからずと言うのであろう?如何なる理由であれ働いていないものは居ない。故に皆、食する資格を有していると言う事だ」

「確かに働かざる者食うべからずとは言いますが、意味は違います。この場合の働かざる者は働かない者であり、働けない者ではないです。健常者でありながら働く気のない者、つまり怠け者を指す言葉で、怠け者は食べる資格が無いと言う意味になります。何らかの理由で働けない人は対象外です」

「「そうだったのか」」

瑞希の指摘に対し何故か商会長のみならず大輔が返事をする。

「何で大輔まで初めて聞いたような反応してんの?」

「いや、実際初めて知ったからな。今まで働かないなら食うなってニートに向けた言葉だと思ってたしな」

「うーん……。ニート云々は冗談だと思うけど、強ち間違いとも言い難い……」

そんな雑談をしているうちに列は進み続け、気が付けば瑞希たちが列の先頭付近に到達していた。


86話まで1日1話連日投稿予定(更新は20時設定済)

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