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職場見学が始まる第77話

「台所はないのか?」

一通り室内を確認したが、間取りは収納付きの2部屋とトイレ、バスルームと洗面所のみ。

キッチンは見当たらない。

「食事するだけなら外食か社員食堂もあるぞ。料理がしたいなら社員食堂の料理長に頼めば調理道具等も借りられるだろう。必要なら七輪などもあるぞ」

瑞希は料理をするつもりが一切なかったので今回の件については商会長の説明だけで事足りた。

一方、大輔は少し考える。

キッチンを借りられるとして、ここまでの距離が約20分。

つまり、帰宅してから夕食の準備をしたくなった時、料理をする為だけに20分の移動を余儀なくされる。

これは考え物である。

1.仕事終わりに料理をしてから帰宅。

2.帰宅してから20分かけて料理をしに戻る。

3.自炊を諦める。

4.七輪……あればの話だがバーベキューグリルを購入または七輪を改造。の4択。

仕事時間や仕事量、外食の値段や味など諸々を考慮して考えたいところだ。

「どうだ?他の部屋も間取りは全く一緒だ」

「僕は問題ないです」

「自炊出来ないのが少し引っかかるが住む場所としては問題ないな」

「まあ、直ぐに答えを出す必要も無い。労働条件等も踏まえ働くか否かも最終的な判断で良いぞ。部屋については空き状況を確認せねば正確な事は言えんが、希望があるなら遠慮なく言うが良い」

商会長も急ぐ必要はないと言っているので判断は後回しにし、部屋を後にする一行。

鍵を管理人に返却し、次の目的地へと移動を開始した。


町の中心部から見ると寄宿舎から約90度方向にある寄宿舎とは別の町外れ。

巨大な建造物がいくつか並んでいる。

その中でも一際大きい建造物の中に入る。

「ここが第一倉庫。各地で仕入れた物を一時的に集積しておく場所だ。後に項目ごとに仕分けして各倉庫へ搬入する」

商会長の説明によると

第二倉庫が生鮮食料品。

第三倉庫が衣服や装飾品などの身に着ける物全般。

第四倉庫がインテリアやエクステリア、日用品などの生活に関連する物全般。

第五倉庫がハンマーやドライバーなどの工具。武器や防具は第三倉庫ではなく第五倉庫に分類されるのだと言う。

第六倉庫が鉱石。

第七倉庫がその他。

と分類されているとの事だ。

商会長が説明をしている後ろでは作業員が忙しなく動き回っている。

そんな中、悠長に話をしている瑞希たち3人の姿は傍目には異質に見える事だろう。

しかし、現場の人間からすると商会長の顔を知らぬ者が居るはずも無く、何となく現状を理解しているのだろう。

誰一人として瑞希たちに近づく者も商会長の説明の邪魔をするような者は居ない。

単に各自の仕事が忙しいだけなのかもしれないが……。


一行はその後、第二倉庫~第七倉庫までを順に巡り、商会長による倉庫の説明が完了した。

第一倉庫は積み下ろしや出入りの多さから2階建てで十分な広さが確保され、第二~第七倉庫は地下1階から地上3階の構造になっているとの事だ。

第一倉庫が広く、低く作られているのは他倉庫へ仕分けする前の一時保管場所である事と上り下りが多いと荷物の出入りが多い第一倉庫では重労働になる事が主な理由との事だ。

「とまあ、倉庫はこんな感じだ。何か必要なものがある場合は各倉庫の出入り口に販売員が居るからそいつらに必要な物資を伝えれば購入可能だ。……と言いたいところだが、お前らは日本語しか話せなかったな。一応、全ての商品に番号は振ってあるが日本語を話せるヤツと一緒に来るのが無難だな」

第七倉庫の出入り口付近にあるカウンターを指差し最後に商品購入時の説明をする。

「そう言えばヴァンくんも言ってたよね。共通の言語があるって。tadda qite zohoqo boutだっけ?」

瑞希がヴァンとの会話を思い出しながら発音をする。

「赤くて丸い野菜4つだな。それが話せるなら問題ない」

「実はこれ1つしか聞いてないので他には話せません」

「ってかよく覚えてたな。俺なんてそんな話があったこと自体忘れてたぞ」

商会長に照れながら真実を話す瑞希。

大輔は覚えていた瑞希を素直に称賛する。

「言語についてはここで暮らすつもりなら行く行く覚えれば良いだけの話だ。ここまでで何か質問があれば答える。……と言いたいところだが、そろそろ昼食の時間だ。食事をしながらで問題ないか?」

「はい、大丈夫です」

「あぁ、問題ない。……が、俺たち金持ってないぞ」

「心配するな。昼食くらい奢ってやる。それに、当面の資金なら坊やの許可もある事だし、遠慮なく使用するが良い。妾の懐は痛まんからな」

商会長は冗談交じりに笑いながら言っているが、自分たちでどうにかすると決めた以上、他人のお金に手を付ける事に対し多少抵抗のある2人は「考えておきます」と曖昧な返事をし、商会長にお相伴にあずかる為、商会長の後に続くのであった。




次回投稿


5月1日(20時予定)です。


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