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心霊系の恐怖体験は怖い怖いと言いながら楽しんでいる時が華。科学的にと言い始めると急に冷める第7話

ダムに到着した2人。

大輔は売店の駐車場に停車をする。

売店は夜には閉店しており、大輔がヘッドライトを消すと辺りは一瞬で真っ暗になってしまった。

「場所が場所だけに俺もライト付けるからな。あと、さっきみたいな悪ふざけは厳禁な」

「そうだね。足元注意しないとね。でも、明るさは少し絞ってね」

「オケオケ」

スマホを瑞希に見せながら同意を求める大輔。

瑞希も大輔の意見を反対する理由は無い。

懸念点を挙げるならば明るすぎると雰囲気が失われる1点のみだ。

大輔も瑞希が指摘する点に対しての理解はある。瑞希の指摘を受けライトの強さを調整している。


準備を整えた2人は外へ。

少し歩くとダムの外周へ繋がる道へ出た。

これより先は車の乗り入れが不可能となっている。

瑞希の案内で先に進む。

「そう言えば、ここは心霊現象あるんだよな?どんな心霊現象が目撃されてるんだ?」

「んー……。ラップ音なのかな?水に何かが落ちる音が聞こえるのとオーブと偶に飛び降りる人が見えるとか、人影が見えたと思ったけど誰もいなかったとかの類の書き込みが多かったよ」

「ラップ音ねー……。そう言えば、何処かにご当地戦隊のテーマ曲みたいなの流してるダムなかったっけ?」

「あったね。肝試しする人に対する嫌がらせみたいな対策した所。えーっと、確か、埼玉のダムセイバーだったかな?あっ、ダムセイバーはご当地ヒーローの名前ね。そう言うのも面白そうだから逆に行ってみたいよね」

「そうそう埼玉だ。で、話は戻るんだけど、実際ここって自殺とかあるん?」

「年に数件飛び込みの目撃とかでの通報はあるにはあるみたいだよ。でも、実際に遺体が上がるのは数年に1回って話。飛び込みする人は昼間にも見える人がいるみたい。目撃スポットは逆側?帰り道の方だね。フェンスを乗り越えて飛び込むって書いてあったし反対側っぽいね」

他愛のない話をしながら外周を回る2人。

今の所、ネットに掛かれている噂の様な現象は起きていない。

夜道を散歩しているだけの状態だ。


「ここが放流するのを見る事が出来るスポットだね。今は暗いから何も見えないけど、車を止めた場所から丁度反対の場所だし、記念撮影もここにしようか」

瑞希は大輔の返答を聞くことなく撮影の準備をし始める。

大輔としても反対意見は無い。

心霊スポットでの記念撮影に然程興味が無いとも言える。

例の如く、毎度毎度変わらぬ構図での撮影。

撮影も無事完了し、折り返す。

ここから先は瑞希が検索した自殺スポットに突入する事になる。

「何で時計回りにしたんだ?反時計回りなら速攻で自殺スポットに行けただろ?」

大輔の素朴な疑問。

駐車場所から逆方向へ進んでいれば目的の場所まで遠回りをする必要はなかった。

「特に理由は無いけど、前半怖い場所を回ってから後半何もないより、前半何もなくて後半怖い場所回った方が良くない?ドラマとか漫画でも後半盛り上がる方が面白いでしょ?」

「いや、行きも帰りも同じ道通れば良くない?わざわざ1周する必要もないんだし、記念撮影した場所から折り返して同じ道通れば2度おいしいやん?」

「……なるほど!大輔天才!」

瑞希の返答を聞き、肩をガックリと落とし、呆れる大輔。

「何か頭痛くなってきた……」

「えっ?もしかして霊障?」

「誰の所為だと思ってんだよ!!」


そんなこんなで話をしながら歩を進めていると瑞希が話していたフェンスが見えてきた。

「何でこっちだけフェンス付けたんだろうな?反対側も同じようなつくりなのに。転落防止とかなら反対側もつけるべきだよな」

「そうだねー。自殺もこっち側が多いみたいだけど、自殺する人ってフェンスを越えたい欲求とかあるのかな?」

大輔の疑問に適当な相槌を打ちながらフェンス越しにダムの底を覗き込む瑞希。

「他の人に見つかって止めてもらえるかもしれないって思ってるんじゃない?最後の最後で生に執着してるって言うか。自殺しなかった言い訳が欲しいって言うのかな。本当は心の底では死にたくないんだろ……。で、何か見える?」

フェンスに顔を当て、ダムの底へ必死に光を当てようと頑張る瑞希に様子を確認する。

大輔はフェンスに近づこうとはしない。

決して霊が怖い訳ではない。

高い所が少し苦手なだけだ。

とは言え、高所恐怖症ではない。四方が壁に囲われている場合は割と平気でビルなどの高層階や飛行機の窓から地上を見下ろす事は普通に出来る。

但し、高層階のベランダや観覧車など揺れの多い場所、風を感じる高所、足場の不安定な場所などはNGだ。

今回、フェンスはあるが、大輔の考えとしてフェンスは揺らせば結構な動きのあるものなので安定性に掛ける。

よって苦手な高所に分類される。

「んー……。真っ暗で何も見えない。……見えてるのかもしれないけど下は水だから水が見えてるのかも分からないって言った方が正しいのかなー」

言うまでもなく、大輔が聞きたいのは風景の話ではない。

霊的な何かが見えているかどうかの話をしているのだ。

しかし、物理的な物も何も見えていないと言う事は霊的な物も見えていないと言う事だろう。

人影が見えていたなら人影が見えたと言うだろう。

大輔は瑞希の返答を勝手に解釈し、納得をしたものの1つ気になる事があった。

近くにあった少し大きめの石を手に持ち、フェンスを越えるようにダムへ向かい投げ入れると耳を澄ませた。

4~5秒後……。ドボンッ。

微かに聞こえる入水音。

(水までの距離は60m~70mくらいか?)

碌に計算もせず適当にダムの深さを推測している大輔だが、瑞希に声を掛けられる。

「今、何か変な音しなかった?」

どうやら瑞希はダム底を覗き込もうと必死になり過ぎていた所為で大輔の行動に気が付かなかったようだ。

「えっ?どんな音?」

面白がった大輔は白を切る。

「何か水に落ちたような音だったけど、大輔が聞こえなかったんなら気のせいなのかな?」

「マジで言ってんの?幽霊居るんじゃない?よく探してみろって」

先程よりも必死にになり音源を探そうとする大輔。

その姿を見てとうとう大輔は吹き出してしまった。

「プッ……。ハハハハハハ。ごめんごめん。ダムの深さが知りたかったから石投げただけ」

「なんだよ、もぅ……。期待したのにー」

少し頬を膨らませ、拗ねたような態度を取る瑞希であったが、必死になりフェンス越しに除いていた所為で顔には薄っすらとフェンス跡がついてしまっている。

「ハハハハハハッ。ごめんって。そんなに怒るなよ」

その事で一層笑いに拍車がかかってしまう瑞希。

謝ってはいるものの、全く反省の色が見えない。

今日に限れば瑞希に何か言われたとしても『病院での悪戯のお返し』で反論出来るのが大きいだろう。

(はつ)心霊現象を期待したのに」

数多の心霊スポットを巡った事のある2人だが、霊を見た事は疎か心霊写真の1枚も取れた試しがなかった。

今回、ネットで調べた上に目撃証言なども複数あって期待していただけに裏切られた感も一入なのだろう。

しかし、ネットにある情報は偽りのものも多い。

特に心霊系の話などは面白半分での創作や作り話への便乗、誇張なども多々ある。

瑞希のように信用し過ぎる方にも問題があるだろう。

「まあ、今のは俺が悪かったけど、本当に何かあるかもしれないから騒がない方が良いんじゃないか?」

何かあると言うのは近所迷惑や祟りの話ではない。

何かが聞こえたり、見えたりする可能性の話である。

大輔の一言でハッとした瑞希は瑞希への追及を止め、耳を澄ませる。

しかし、虫の音が遠くで聞こえるのみで静まり返っている。


数分間極力物音を立てず、何かあった時に霊の存在を確認出来るよう、そして即座に反応が出来るように努めたが何の成果も得られなかった。


その後もネットで自殺スポットと記述されていた場所近くを雑談しながらウロウロしていたが、何の変化もない。

「何でいつも何も起きないんだー!」

フェンスを鷲掴みするようにしながらダム底に向かい叫ぶ瑞希。

ついに壊れたか……。などと考えながら大輔は冷ややかな目を瑞希に向ける。

「まあ、霊体験なんて人それぞれだから。家鳴りだって心霊現象だって言う人もいれば、温度の変化だって言う人もいるだろ。『幽霊の正体見たり枯れ尾花』じゃないけど、俺たちは後者。そもそも幽霊を幽霊だって認識するつもりが無い。疑いの目を向けてるからだと思うぞ」

暫くの間、幽霊への苦情を叫んで気が済んだのか大輔の理論で冷静になったのか瑞希は気を取り直す。

「そうかもしれないね。無駄な知識を得すぎてるのかもしれないね。金縛りになっても脳だけが起きてるだけで、体が動かない状態だって思うし……。ここは何もなかったし次行こう。次。最後のスポットはマジモンだよ。交通事故多発地帯だし、情報の裏付けで新聞も探したけどマジで事件になってるものもあったからね。きっと今までとは違うよ」

「へいへい。そうですかー。期待してますよー」

目を輝かせ熱弁する瑞希に反し、大輔は全く期待していない様子だった。

期待していないと言うよりは雰囲気を楽しめればそれだけで良く、本当に妖怪や幽霊などには出会う事は無いと諦めているのだろう。


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