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今夜の寝床を決めただけの第69話

「良い返事だ。……では、早速明日から働いてもらおう」

「あのー……、労働契約の書類などは?賃金、労働環境、労働時間など諸々を書面にしないと」

働くとは言ったものの、それ以外の事は決まっていない。

大輔の指摘も尤もである。

しかし、商会長からの返答は……

「その辺りは何も決まってないからな。お前らの能力なども明日見極めるとしよう。……と言う事で細かい事は明日だ」

「まあ、そう言う事なら」

「よし、では解散だ。……とその前に、お前ら、宿は決まっているのか?」

商会長の質問を聞き、瑞希と大輔はスチュワートの顔を見る事でスチュワートに回答を丸投げする。

「まだ決まってはいませんが、いつもの所にしようかと思います」

「こいつらもか?」

「その予定にございます」

「うーむ……」

スチュワートの返答を聞き、何やら悩む商会長。

「何か問題でもあるのか?」

「いや、問題は無いが、明日以降をどうするつもりなのかと思ってな。坊やの資金頼りか?」

「坊ちゃまが資金を工面するよう記述していたのであれば問題ないかと」

「まあ、そうだが……。……よし、商会の寄宿舎を貸し出そう。部屋は明日見学させるとして、清掃に2、3日ってところだな。オウキーニ、こいつらが寄宿舎に入るまでお前の家で面倒を見ろ」

「にゃ!?」

唐突に話を振られ驚愕の声を上げるオウキーニ。

完全に寝耳に水なうえ、かなりの無茶振り。

突然客人を迎え入れろと言われても困るのは無理が無い。

オウキーニにも事情があるだろう。

「何を驚いている?何故妾がお前を態々残したと思った?」

商会長の発言から瑞希と大輔を働かせるのは既定路線だったようだ。

「嫁の許可貰わへん事には何とも言えんニャ」

「「え?オウキーニ結婚してんの!?」」

オウキーニの思わぬ発言。瑞希と大輔は同様の反応を見せる。

「じぶんら失礼な反応やニャ。ワイに嫁はんが居ると悪いかニャ?」

流石のオウキーニも2人の反応に不快感を露わにしている。

「ま、まあ、人から見たらデブ猫かもしれないが、猫又界ではイケメンの類なのかもしれないしな」

「なるほど」

「そんな事はないぞ。猫又の中でもデカい方だ。……無論、横にな」

大輔の考察に納得しかけた瑞希だったが、その考察も商会長の一言で真っ向から否定される。

「失礼すぎる物言いニャ。顔や見た目が全てじゃないニャ」

「お、おう……」

「ごめんねオウキーニ」

オウキーニの言う事が尤もである。

大輔は反論する事が出来ず、瑞希は素直に謝罪する。

「そんな事はどうでも良い。アイツを説得すれば良いのだな?よし、妾が直々に交渉しにいこう」

「ニャ!?」

商会長の発言を聞き、尻尾と耳をピンと立て驚愕の表情を浮かべたまま硬直するオウキーニ。

かなり動揺しているのが手に取るように分かる。

漫画やアニメならダラダラと滝のような汗が出ているような光景が目に浮かぶ。

そんな表現が似合いそうな分かり易い動揺の仕方だ。

「どうした?準備せい。直ぐに向かうぞ」

「いや、それには及ばないニャ。ワイが何としてでも説得するニャ!」

何としてでも商会長を自宅に招きたくない様子のオウキーニ。

何か疚しい事でもあるのだろうか?と勘繰ってしまう。

「そうか。なら今日は解散だ。お前らは明日、オウキーニと一緒に出勤せよ」

こうして一同は解散する流れとなった。


商会を出て、スチュワートと別れようとすると、スチュワートが何かを思い出したかのように瑞希たちに声を掛けた。

「瑞希様、大輔様、オウキーニ様、1つお頼みしたい事があるのですがよろしいでしょうか?」

「僕たちに出来る事なら言ってください」

「依頼内容を確認せず、了承するのは良くないニャ」

「いや、オウキーニはそうでも俺と瑞希はヴァン達には世話になったし、可能な事なら了承するのが普通だろ。それにスチュワートが非常識な頼みをするとは思えん」

オウキーニの指摘は尤もであるが、今回ばかりは大輔の意見の方に分がある。

「申し訳ありません。大した事では無いのですが、エレノア様の寝床でもある鉢をエレノア様に届けてはいただけないかと……。それと明日、昼前に迎えに行く旨を伝えていただければ幸いです」

「分かりました」

スチュワートの依頼を快諾する瑞希。

大輔も瑞希同様断る気は一切ない。

「2つに増えとるニャ」

大輔はオウキーニの頭を軽くはたく。

「任せとけ。オウキーニ、エレノアの居る場所まで案内頼むぞ」

「仕方ないニャ」


馬車を停めた場所まで移動をし、エレノアの鉢を降ろす瑞希と大輔。

「皆さま、よろしくお願いします。……瑞希様、大輔様、明日はご挨拶する時間があるか分かりませんので、この場を借りて……。お二人の今後の御健勝をお祈りしております。それと機会があれば坊ちゃまの下を訪ねてください。坊ちゃまも喜ぶと思います」

「スチュワートさん、短い間ですがお世話になりました」

「最後まで世話になりっぱなしだったな。ヴァンにもよろしく言っといてくれ。スチュワートも元気でな」

こうして、瑞希と大輔はスチュワートと別離するのであった────。


次回投稿は2025年3月1日と2日(20時予定)

2話のみ予定


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