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異世界への誤解を多少解きつつ、今後についての話し合いを始めそうな第57話

再度屋敷内に戻るとスチュワートがワゴンを押して食堂に戻る最中だった。

「スチュワート、ヴァン起きたか?」

「はい。今しがた食事を終えたところです」

「話に行っても大丈夫ですか?」

「恐らく問題ないかと。坊ちゃまは自室に戻られていると思います」

「ありがとうございます」

スチュワートから許可とヴァンの居所を入手した2人は早速ヴァンの自室へ向かう。


ヴァンの自室前に到着した2人。

大輔が代表してノックをする。

「ヴァン居るかー?」

ノック後程無く扉は開いた。

「何じゃ騒がしい」

軽く開いた扉から顔を覗かせたヴァンの第一声がこれだ。

特に大輔の声量が大きかったわけではないのだが、ヴァンとしてはノックのみで事足りると言いたいのだろう。

「ごめんね。ちょっとヴァンくんに聞きたい事があって。いいかな?」

「爺ではなく余にか?何用だ」

瑞希は「スチュワートさんでも良かったんだけど」と前振りをした上で、オウキーニの居る町へ行きたい事。

理由として人の多いところの方が元の世界に帰る為の情報や手掛かりがつかめるかもしれない事。

そして、町の事や道程についての情報や説明を求める旨を端的に伝えた。

「相分かった。色々と準備する故、食堂か自室にて待つが良い」

ヴァンの返答を聞き、顔を見合わせる瑞希と大輔。

長年の付き合いだけあって、互いに言いたい事はアイコンコンタクトで理解が出来た。

「じゃあ、食堂で待つ事にするわ」

代表して大輔がヴァンに返答をした。

返答を聞いたヴァンは「今時分なら爺も食堂に居るだろう」と言い、待てと言いつつも3人一緒に食堂へと向かう事となった。


食堂に就いた3人。

ヴァンの予想通りスチュワートは厨房に居り、ヴァンの食事の片づけの最中だった。

瑞希、大輔、ヴァンの3人は近場の適当な席に座る。

3人が着席したのを確認したスチュワートが透かさず水を差し出す。

「爺、書庫から地図を頼む。それと紙とペンも用意するのだ」

「畏まりました」

スチュワートは軽く一礼をすると食堂を後にした。

「書庫なんてあるんだな。何処まで広いんだこの屋敷は」

「あれ?大輔知らなかったの?地下にあるよ。あ、地下って言っても前に見学した外にある炉がある場所じゃないよ。前に見たけど、文字が読めなくて断念したんだよね。日本語の読み物があれば暇つぶしになると思ったんだけどね」

どうやら書庫の存在を瑞希は知っていて、尚且つ足を踏み入れた事があるとの事だ。

「うむ。確かに日本語の文献や書物は少ないがあるにはあるぞ。余もそう言ったもので日本語を勉強したものだ。言ってくれれば何冊か用意したのだがな」

「もう少し早く知ってれば……。ってか、瑞希も瑞希でそんな面白そうな場所があったなら教えろよな」

「ごめん、ごめん。読めないなら意味が無いかなって。でも、そんなもの何処で手に入れるの?やっぱりオウキーニから購入?」

「そうだな。商人経由でお主らの世界からの漂流物を購入する事もある。あとはお主らと同様にここへ流れ着いた者が不要だからと譲渡された物もあるな」

「へー。ヴァンくんが一番日本語の好きな本って何?」

「一番と言って良いのかは微妙だが『国語』と言う短編集が読みやすいな。特に平仮名の多いものは読みやすくて良い」

「……ヴァン、少し言い難いんだが、国語は短編集じゃねーよ!いや、短編集と言えば短編集だが……」

ヴァンの少しずれた発言にツッコミを入れた大輔だが、呆れを通り越して脱力してしまっている。

「むっ?そうなのか?」

「あのね、国語って言うのは僕たちの国の言葉って意味で、国語って書いてあるヴァンくんが短編集だって思ってる物は学校って言う子供たちが集まる場所で言葉を勉強する為に使う教科書って言う物なんだよ。平仮名が多いのは学年が低い人が使うやつだね。小学1年とか中学1年とかもしかしたら1、2、3みたいな数字だけかもしれないけど書いてあったはずだよ。数字が小さい方が基本的に簡単だよ。あとは小、中、高の順で難しくなるよ。小1が一番簡単で小6まで行くと中1、中3まで行くと高1ね」

元居た世界と今いる世界で何処までの共通認識があるのか不明だった瑞希が国語の教科書について態々回りくどいが丁寧な説明をした。

「ふむ、なるほど。そうであったか。あれが教科書か。余は学校に通った事が無い故、無縁な物であった。勉強になったぞ。例を言う」

「学校あるのか?」

「あるにはあるのだが、任意な上に専門的な技術や知識を得る場であり、言葉を教える場ではないな。それに適正が無ければ入学の資格すらない場も多いと聞く」

「所謂専門学校か。もしかしたらもっと限定的な物かもしれないな。どちらにせよ俺たちには関係のない話だな」

スチュワートを書庫に向かわせた事で思わぬ方向へと話題がそれてしまっている。

本来ならスチュワートが戻るまでの間に予備知識としてこの世界、延いては今から向かう予定の町の情報を聞いておくのが理想だったのだが、時間的な制約は無いに等しいのでそこまで気にする必要はない。

そして、そのまま雑談はスチュワートが地図と筆記用具を準備して食堂に戻るまでの間続くのであった────。


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