今後の話をしつつ、得た情報の共有をする第54話
夕食を済ませ、自室にて大輔が訪れるのを待つ瑞希。
食後一緒に戻り今後についての話をしようと提案したのだが、シャワーで汗を流したいとの大輔の要望により却下された。
元々の原因は瑞希が先にシャワーを使用していた為に大輔がシャワーを浴びるタイミングを逃し、食後になってしまった事にある。
大輔はオウキーニと話していた時間も相当あった為に瑞希程汗をかいていなかった。よって、多少べたつきが気になるものの食後でも良いと判断したのだった。
そのことを理解している瑞希は大輔の提案を快諾し、今に至っている。
食後すぐにシャワーを浴びていると仮定するとそろそろ部屋に来ても良い時間帯。
大輔の訪問までの時間に余裕があるならヴァンやエレノア、スチュワートとの雑談やスマホのタイマーをセットしてベッドに横になる事も可能だった。
暇を潰すにしても微妙な時間なのである。
「さて、どうしたものか……」
やる事が無さ過ぎて独り言ちる。
スマホの電波が届いていればゲームをするなりSNSを見るなりと幾らでも暇は潰せるのだが異世界ではそれも叶わない。
ドアの前にメモを置いて散歩か誰かと雑談でもしに行こうかと悩みながら部屋の中を彷徨いている。
意を決し、紙とペンを取ろうとした時、唐突に部屋のドアがノックされる。
「瑞希、起きてるかー」
タイミング良く大輔が戻ったようだ。
「うん、起きてる。今開けるね」
バッグに向けていた足をドアに向け、大輔を招き入れる。
部屋に入った大輔は早速今後の予定について話し始めた。
「で、さっそく本題な。オウキーニに聞いた話なんだと、町までの距離は近くもなく遠くもなくって感じだな。徒歩で2~3日だけど、途中で山越えをしないといけないらしい」
徒歩で2~3日の距離を『遠くもない』や『山越えがある』とサラッと言ってしまうあたり、異世界に来てから色々と毒されている感が否めない。
「山越え?道は分かってるの?」
そして、距離や山越えの事に対しツッコミを入れず受け入れてしまう瑞希も同類である。
「道は分かってると言うか、一本道?道なりに進めば行けるらしいぞ。ベヒモスが通ってきた道が繋がってるって話だ。それと、山越えと言ってもそこまで高い山ではないって話だな。高さは分からんが、ヴァンかスチュワートに聞けば詳しい事は分かるんじゃないか?」
「なるほど。……で、行くんだよね?」
「もちろん」
「いつ頃出発するつもり?今からって事はないでしょ?」
「なるべく早い方が良いけど、準備も必要だよな。最低でも3日分の食事を準備するか途中で入手する術がないとな。3日なら飲まず食わずでもギリギリ大丈夫だって強行突破する訳にもいかないしな」
「だね。途中で何があるか分からないし万全の準備をしてからじゃないと危ないよね。食べ物なら多少は携帯食料があるけど、問題は飲み水の確保だよね。量を確保すれば重くなるし……。あの水筒あったら便利なんだけどね」
あの水筒とはドリュアスの下へ行く途中に使用していた水筒の事だろう。
大輔も瑞希の意見に賛同をする。
「そうだな。水筒の件も含め明日ヴァンに相談しても良いかもな」
その後も町までの道程、注意点、必要な物などの話は続いた。
そして、夜も更けた頃、瑞希の眠気も限界に近づき解散するのであった────。