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庭園の土を入れ替え始める第52話

「ヴァンくん、これから何をするの?」

流れで着いてきたものの、本当に何をするか皆目見当もついていない瑞希。

ヴァンが立ち止まったのを機に今後の予定もとい、仕事内容の確認をする。

「土の入れ替え作業だ。エレノア、出番だ。頑張るのだぞ」

『私、か弱い乙女よ。力仕事をさせるつもりなのかしら』

「すまぬ。ちと言葉不足であった。無論、土の入れ替え自体も手伝ってもらうが、その前にここにある作物を抜いてほしいのだ。株分けをする要領で植え直しもする故、下手に傷付けぬようにな。ついでに収穫も頼むぞ」

『それくらいならお安い御用よ』

「僕もエレノアの手伝いで大丈夫?」

「うむ。手が空くようならエレノアが作物を抜いた部分を掘削してもらえると助かる。柔らかい部分だけで良いぞ。爺が戻ればそこに新たな土を入れ替える。入れ替えた場所に再度作物を植える手順だ。エレノアは抜き終り次第、植え直し作業を頼むぞ」

スコップや猫車などを準備から開始。

オウキーニ達が使用していた大きめのシャベルではなく、エレノアでも使い勝手のよさそうな子供が砂場で遊ぶような大きさのスコップ3つとハサミ2つ、猫車1台が準備された。

そして、ヴァンの指示のもと順調に作業は進む。

エレノアが作物を抜き、瑞希が土を掘り起こす。

ヴァンは作業の指示を出しつつ、適時2人の手伝いをする。


幅5~6m程、土の掘り起こしが完了した頃、スチュワートがオウキーニとの話を終え、合流した。

「爺は土の搬出と搬入を頼む。瑞希は爺の補助をしてくれ」

「畏まりました。道具の準備をいたしますので瑞希様はしばらくお待ちください」

暫くするとスチュワートはシャベル2本入れた猫車を押して戻って来た。

先程まで瑞希たちが畑から取り除き小山になった土を指さしたスチュワートは「まずは土を運び出します」と短めの指示を出す。

瑞希はスチュワートの指示通り、猫車に土を入れる。

量が多くなかった事もあり、数回シャベルで抄くっただけで土の小山は猫車に収まってしまった。

現在掘り起こされている土は他にないので猫車を押すスチュワートの後に続き土を搬出する。

スチュワートが向かった先はヴァンがゴーレムとの戦闘を繰り広げた場所だった。

「先ずはこの周辺の修復をする為に土を運びます」

「割れている部分に流し込めば良いですか?」

「もっと雑で構いません。ある程度の土を撒いて踏み固める感じで結構です。以前は被害も甚大でしたが、幾度と修復を重ねた結果、地面も硬くなり、今では大規模な修復作業をしなくても良くなりました。割れて見えているのも表面だけで、少し多めの土を踏み固めておけば自然と馴染むようになっています」

説明をしながら猫車の土を凹みの中央に降ろす。

瑞希はシャベルで均等になるように軽く広げ踏み固める。

スチュワートは大規模な修復が必要はないと言ってはいたが、土の量が少なかった為、1回では足りなかったようだ。

仕方がないので2人はコロポックルが纏めてくれたゴーレムの土塊の山へと向かう。

途中でオウキーニ達の様子を見ると、大輔とオウキーニは何やら話し込んでいる。

コロポックル達は談笑をしているもののどこか暇そうにしている。

そんなコロポックル達の様子を眺めているとコロポックルの1人と瑞希の目が合った。

特に意味は無いが目の合ったコロポックルに軽く会釈をする。

会釈をしたのは日頃知り合いと目が合った時に会釈をする癖の延長戦上にある様なものだろう。

前を行くスチュワートの後に続き瑞希も土塊の山まで到着。

搬入する為の土を猫車に詰めている最中、コロポックル達が近づいてきた。

「てつだう、か?」

スチュワートにではなく、何故か瑞希が声を掛けられた。

何と返答して良いのか困惑したが、思った事を口にする。

「仕事するの嫌じゃないの?オウキーニにも手伝わせてたでしょ?」

「いや、ちがう」

「はたらく、ないやつ、いっしょ、はたらく、いや」

「オウキーニ、くちだけ、だめ」

つまりは働く気のない者と一緒に働く気はないと言いたいようだ。

「どうしましょう」

コロポックル達の言いたい事は理解出来たが、瑞希に決定権はない。

話を聞くだけ聞いた瑞希はスチュワートに返答を丸投げする。

「お給金は出ませんよ?」

「かまわない。いま、ひま」

「オウキーニ、かえらない」

「そうですね。では、お言葉に甘えて、オウキーニ様の準備が整うまで手伝っていただきましょう」

スチュワートの返答を聞いたコロポックル達は自分たちの道具を取りに戻る。

道具を手にしたコロポックル達は直ぐに戻って来た。

「なにする」

「しじだす」

「そうですね。では、ここにある土を敷地内に移動していただいてもよろしいでしょうか」

「「「あいあいさー」」」

コロポックル達は自分たちの猫車に手際よく土を積む。

土を積み終えたコロポックル達を連れ、ヴァンの下へ戻る。

ヴァンとエレノアの作業は遅々として進んでいなかった。

これはエレノアがサボっていた所為ではない。

思いの外、抜く作業が重労働なのだろう。

エレノアは作物を引き抜くのに一苦労しており、『深く根を張り過ぎなのよ』と文句を言いスコップを振り回すように作業を進めている。

瑞希が手伝っていた時は多少力任せに抜いていたが、そこまで苦労はしなかった。

エレノアの言う通り、深く根を張っているのも原因かもしれないが、もしかしたらエレノアが非力すぎるのも原因の1つなのかもしれない。

まあ、自分の身長以上の苗を抜いているのだから苦労するのも仕方がないのだろう。

「皆様、外の土はこの辺りに運び入れてもらってもよろしいでしょうか」

スチュワートは敷地内の空いている適当な場所に土の搬入をするようコロポックルに指示を出す。

「「「あいあいさー」」」

「瑞希様、坊ちゃま達の作業のお手伝いをしていただいてもよろしいでしょうか。こちらの作業は3名増えましたので十分な人員が確保されています」

「分かりました」

スチュワートの指示を受け、瑞希はエレノアの下へ向かう。

「エレノア、手伝うよ。エレノアは抜きやすいように土を掘り起こして。抜く作業は僕がやるから」

『あら、気が利くわね。力仕事はあなたに任せるわ』

瑞希の作戦は功を奏し、順調に作業は進んでいった。


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