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傍目八目?な第49話

「あれ?頭落とさないの?」

ヴァンの戦闘スタイルの変更に疑問を持った瑞希がつい口を出してしまう。

「お主は説明を聞いておらんかったのか?以前は核の前後の装甲を厚くしておったが、今回は全体の表層の装甲が厚くなったと言っておったろう。つまり、以前は首を落とすか腕を落とし、断面の柔らかい部分から核を狙うのが定石だった。だが、何処から狙おうと変わらぬ労力なら最短距離で直接核を狙うのが一番手っ取り早い。態々無駄な労力を割く意味も無かろう」

「確かに。それより1つ気になってた事があるんだけど、ヴァンくんって魔法使えないって言ってなかった?ヴァンくんの魔力を逃がさない為にってオウキーニも言ってたけど、どういう事?」

「うむ。余は魔法を使用する事は出来ぬ。詳しくは知らぬが勝手に攻撃に魔力が生じていると言う話だ」

『まあ、私を十分満足させるだけの魔力を垂れ流してるんだから当然よね』

「よう分からんが、そう言う事だ。よし、次来ても良いぞ」

瑞希の疑問を解消させたヴァンは次のゴーレムの要求をする。

「少し待つニャ。……仕事の時間ニャ。土の回収をするニャ」

「「「あいあいさー」」」

オウキーニの掛け声を聞き、ベヒモスの荷台から3名の小人が姿を現し、土塊を荷台に積み始めた。

「ドワーフ?」

「ノームかコロボックルだろ。身長から考えるとコロポックルだと思うが、コロポックルの身長も諸説あるから何とも言えん。小さいものだと5cmと言われてるし、大きいものだと1m弱で、昔、日本に住んでた先住民がコロポックルの話の元になったとも言われてるんだよな」

オウキーニよりも頭1つ分程小さい身長の小人を見た瑞希と大輔がそれぞれの推測を口にする。

身長はオウキーニよりも一回り小さい程度だが、横幅は……。

何故だろう、小人よりもオウキーニの方が格段に大きく見える。オウキーニに配慮し恐らく遠近法か何か所為だ……と言う事にしておこう。

「コロポックルで正解ニャ。えーっと……ダイスケはんは博識ニャ」

「褒めても何も出ないぞ」

「何をお仰いますニャ。正直な感想を言うただけですニャ」

「でもオウキーニ凄いね。名前覚えてるんだね。大輔とは大違い」

「商売人の嗜みニャ。名前を覚えられへんと出世出来ないニャ」

「だってさ。大輔も見習った方が良いね」

「うるせー。そもそも俺の名前は……」

「出世する名前でしょ。何回か聞いたから覚えてるよ」

瑞希が大輔の話を遮るように、大輔が話そうとしていた内容を代弁する。

「オウキーニ、はたらけ」

「うごかす、くち、ちがう」

土を荷台に運んでいたコロポックル達が話をしているオウキーニに注意をする。

それと同時にオウキーニにシャベルを持たせようと押し付けている。

だが、オウキーニは一向にシャベルを手に取ろうとしない。

「肉体労働はあんさんらの仕事ニャ。ワイは頭脳労働と指揮系統専門ニャ」

『グダグダ言ってないで手伝えば良いじゃないの。少し手伝えば良いだけでしょ』

「何言うてますニャ。ワイのこのプリチイボデエを見て動けると思うかニャ?」

オウキーニは自分の腹をポンッと叩く。

「「『たしかに』」」

「そこもまた愛い部分だがのぅ」

オウキーニの洋服から少しはみ出たお腹を見てヴァン以外の一同が納得をする。

「みっこく、する。はたらけ」

「こくはつ、する」

「ほうこく、する」

「何物騒な事言うとるニャ。分かったニャ。働く、働くニャ」

最終的にはオウキーニが折れる形で話がまとまった。


「えっさー」

「ほいさー」

みるみるうちに土塊は荷台に運ばれていく。

「オウキーニ、おそい。まけてる」

「何、勝手に勝負してはるニャ。肉体労働に慣れてへんワイが本職に勝てるわけないニャ」

オウキーニの体に鞭打ちながら15分ほどで2体分の土塊の処理が終わった。

「ぜぇぜぇ……。次、行くニャ」

「オウキーニ何か疲れてるみたいだな」

「何でだろうね」

「何でも糞もないニャ。あんさんらに目は節穴かニャ?それともその頭は飾りで脳みそ入って無いんかニャ?」

息を切らすオウキーニを茶化すように瑞希と大輔のふざけた発言に激怒するオウキーニ。

「何かどこかで聞いたようなセリフだな。しかも最近」

そんなオウキーニとのやり取りをしている間にも3体目、4体目のゴーレムが土塊と化していた。

「オウキーニ、しごと、できた」

「ヒィ……。勘弁してくれニャ……。今回は人手が足りひんかったけど、次からはいつもの面子メンツで来るようにするニャ……」

文句を言いつつも少しずつ手を動かすオウキーニ。

主にコロポックル達のおかげではあるものの、2回目の搬入作業も無事完了。

オウキーニの働きが鈍化したが、1回目と回収スピードが然程変わらないのは気のせいだろう……。

「ダンナ、最後はダンナの分ニャ。土はここに放置で良いかニャ?」

「問題ないが1か所にまとめてもらえると助かる」

「了解ニャ」

軽い確認の後、ヴァンが5体目、6体目のゴーレムと対峙する事となった。

「ヴァンくんの攻撃に魔力が発生してるって話なら荷台の上で壊して貰えば良かったんじゃない?態々ヴァンくんと戦わせる意味ってあるの?運ぶの大変だよね。あっ!戦闘中じゃないと魔力が乗らないとか?」

既に最終戦を終えようとしている中、ポツリと出た瑞希の疑問。

荷台に土を運ぼうとしていた全員の手が止まる。

「「「おまえ、てんさい、か!」」」

「もっと早く言ってほしかったニャ……。とほほ……」

「余の貴重な運動の機会を奪う気か?」

瑞希の疑問に対する反応はそれぞれ。

「いや、普通に思い浮かぶやろ。お前らの首から上は飾りか?」

大輔の冷静なツッコミ。

しかし、オウキーニ達は本当に気が付いていなかった様子。

ヴァンは他の者たちに比べ、何処かずれている感じはする。

「ウォーキングなりジョギングなりすればええやろ」

「お主、天才か!?」

「だから普通やろ」

「うむ。中々小気味よかったのでな。あ奴らの真似をして言ってみたかっただけだ。無論日頃の運動もそうだが、中々全身を使う運動は難しくてな。ある程度の力を発散出来る機会も少ない。貴重な機会なのだ。次からも強いゴーレムを制作頼むぞ」

「はいニャ……」

ヴァンからの返答は今のオウキーニにとっては死刑宣告に近い内容だった。

そして、次からはしっかりと働き、仕事を押し付けないメンバーを吟味して連れて来ようと一層強く心に誓うオウキーニであった────。


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