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お使いクエストが完了したので帰還する第45話

「時にドリュアスよ、今回も食事の提供を要請しても良いか?」

『勿論です。何かご希望の食べ物はございますか?』

「余は従来通り、主に任せる。瑞希と大輔は何か食したい野菜か果物があれば所望するが良い」

「うーん……。生で食べられるものだよね?そうなると果物になるけど、果物ナイフが無いと皮ごと食べられる物になるよね」

「火は熾せるぞ。鍋などはないから本格的な調理は無理だな」

そう言うとヴァンは懐からナイフを取り出す。

瑞希に血の提供を願い出た時のフォールディングナイフである。

「じゃあ、梨かな」

「ナイフを貸すと言っておるのに要望は無いのか?」

「あ、違う違う。梨って言う果物があってそれが食べたいなって」

「なるほど。分類は分かるか?」

「大輔分かる?」

「リンゴと同じだからバラ科かな?他は知らん」

「ドリュアス頼む。瑞希よ、梨と言う果物を思い浮かべるのだ」

『かしこまりました』

ドリュアスは瑞希に近づくと額を合わせ瑞希の思考を読み取る。

瑞希から離れたドリュアスの手からゴトゴトと数個の梨が現れ地面に落ちる。

「種じゃないんだ」

「あれは余が培う為の物だからな。種でも実でも花でもドリュアスならある程度対応は可能だ」

「はえー。便利。大輔は何頼むの?」

「えーっと俺は……。ってかまたアレやるの?正直、恥ずかしいんだけど」

大輔の言う『アレ』とはドリュアスと額を合わせる行為の事だろう。

「大輔、そんなんじゃハーレムは程遠いね」

恥ずかしがる大輔を小馬鹿にするような発言。

にやける瑞希の頭を軽く叩き「うるさい」と一言。

女性慣れしていない事を大輔も気にしているのだろう。

図星を突かれ動揺している所為かのか、ツッコミにいつもの様なキレはない。

「因みに何が良いの?」

「どうせなら普段食べない様な高級な物が良いよな。メロンとかシャインマスカットとか。高級じゃないものなら無難にイチゴかな」

「メロンはウリ科?シャインマスカットは葡萄だよね?葡萄って何科?」

「メロンはウリ、シャインマスカットは何だろ?ぶどう科ってあるのかな?イチゴはバラ科だな」

「ドリュアスさん、2つお願いしても問題ありませんか?」

『はい。問題ありません』

「じゃあ、メロンとイチゴお願いします」

そう言うと瑞希は大輔に代わりドリュアスに願い出る。

再度、額を合わせる事数秒……。

ドリュアスの手からメロンとイチゴが出現した。

「すまんなドリュアス。残りは主が適当に見繕ってくれ」

『かしこまりました』

『私は新鮮な水が良いです』

『では皆様、ごゆっくり堪能ください。……エリー、貴女にはお話しがあります。こちらに来なさい』

『うへぇ……』

こうして瑞希、大輔、ヴァンの食事タイムとエレノアへの説教タイムが始まったのだった。


そして食事中、何とは無しにヴァンの館の老人の話題になった。

「ヴァンくんはお爺さんの仕事量を減らしたいんだよね。あのお爺さんって1人で館の仕事全てこなしてるの?僕たちも少し手伝ったけど相当な仕事量だよね」

「うむ。爺にはいつも感謝しておる。爺が居なければ余の生活も儘ならぬ」

「爺さんって言えば、呼び名だよ。前に呼び名決めようぜって事になったんだけど、ヴァンに話付けてからって言ってたけど、どうした方が良いんだ?」

「む?そのような話は聞いておらぬぞ?」

「えーそうなの?案としてはセバスチャンかセバスか……あと何だっけ?」

「スチュワードかスチュワート」

「そうそう、それそれ。ヴァンくんはどれが良いと思う?」

「どれがと言われてもな。余が呼ぶ訳でもないからな。主らの好きにすれば良いし、今決めるのなら帰還した時に余から爺に伝えておくぞ。今でなくとも戻るまでに決定すれば対応する」

「大輔、どうする?」

ヴァンの話を聞く限り、老人は呼び名について真剣に考えていないようだ。

もしかすると瑞希たちの事も数日で居なくなる客人と考えているので無意味だと思っているのかもしれない。

そのこと自体は否定出来ないが、瑞希たちが滞在している期間は不便なので解消出来るものなら解消したいと言うのが瑞希と大輔の意見なのだろう。

老人が呼び名について考えていなくともヴァンからの指示があれば老人も拒否する事はないと思う。

そう考えた瑞希が大輔に話を振る。

「うーん……。正直言うと俺もどれでも良いんだよな。強いて言うならセバスかスチュワートだな」

「じゃあ、スチュワートで」

「理由は?」

「大輔がセバスかスチュワートって言った時の印象かな。セバスだと上から目線って言うか威圧的に聞こえたからだよ。スチュワートの方が柔らかい感じに聞こえる」

「そりゃ敬称付ければ解決するだろ。セバスさんとかセバスちゃんとか」

「セバスちゃんを言いたかっただけでしょ?思いついたからって何でも言えばウケるて訳じゃないからね」

「バレたか。爺さんがちゃん付けは嫌だって言ってたしな。まあ、瑞希がそう感じたならそれで良いんじゃないか。適当な呼び名が無いと不便だってだけだし、俺としては呼び名が決まれば何でも良い」

「ヴァンくん、と言う事でお爺さんの呼び名はスチュワートさんって事で」

「うむ。承知した」

こうして無事、老人の呼び名が決まり、食事も終えようとした頃……。


『つ、疲れた……』

ドリュアスにこってりと絞られていたエレノアが合流した。

心なしか花も萎れ本体もゲッソリしているように感じる。

そして、さも当然かの様な違和感を抱かせない自然な動きで胡坐をかいているヴァンの太腿に頭を預けるようにして倒れこむ。

所謂、膝枕の様な状態である。

「エレノア痩せた?」

「大輔、エレノアだって一応女の子?なんだよ失礼でしょ。それに痩せたんじゃなくてやつれたでしょ」

『本当、あんたたちは好き勝手言って。一応じゃなくて歴とした女の子よ。私のグラマラスでパーフェクトなボディラインを見てそんな妄言を吐けるなんて瑞希の首の上についているものって飾りで中身入ってないのかしら?……それにしてもヴァン様のお膝は癒されるわ~』

エレノアは瑞希たちの発言に訂正とツッコミを入れるとヴァンの膝を撫で回し、太腿に頬擦りをしている。

念の為、エレノアの体系は胸もくびれもなく手足も短いパーフェクトな幼児体型とだけ付け加えておく。

「よさぬか」

膝枕までは許容していたヴァンだが、エレノアの行動が度を越し始めたため、頭を軽く叩き注意を促す。

「恐ろしく速いツッコミ。俺でなきゃ見逃しちゃうね」

「僕としてはエレノアの流れるような動きのセクハラの方が見逃しちゃいそうけどね」

「うん……えー……、まあ、そうなんだけど、そうじゃない」

「?」

自分のボケが瑞希に伝わらず、説明をするのも少し長くなりそうなので流したものの、代償としてモヤモヤした気持ちを抱える事となった大輔なのであった。


エレノアの疲労が回復したのを見計らい、帰宅するための準備を始める。

「よし、そろそろ帰還するぞ。ドリュアス世話になった」

『こちらこそエリーをよろしくお願いします』

「ドリュアスさん、ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」

『ドリュアス様、今までお世話になりました。私、幸せになります』

果物を食した時に出た皮などのゴミを一か所にまとめ、ドリュアスにお礼を言う。

エレノアのみ見当違いの発言をしている。

『エリー、領主様のご迷惑にならないよう細心の注意を払いなさい。それと、領主様には敬意を表しなさい。我々が平和な生活を営めるのは領主様のおかげなのですから』

エレノアの発言を聞き、頭を抱えそうになるドリュアスだが、ヴァンに失礼が無いようにと釘を刺す。

『はーい』

「ドリュアスは大袈裟だのぅ。また何かあれば見回りがてら来るかもしれん。その時はよろしく頼むぞ」

『はい、我々は常に領主様の来訪を歓迎いたします。道中気をつけてお帰りくださいませ』

エレノアの言動に若干の不安を抱えているドリュアスに見送られ、一行は帰路に就くのであった────。


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