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各々が自分の主張をしただけの第44話

ドリュアスの下へ帰還した一行。

ヴァンが代表をし、これまでの経緯を説明する。

勿論、説明をするのはヴァンであり、瑞希と大輔は見守るばかりで何を話しているのかさえ理解出来ない状態である。

偶にエレノアが合の手を入れるが説明しているヴァンとしては有難迷惑と言うか鬱陶しそうだ。

「……Αυτό εννοώ」

『と言う訳なので、ヴァン様の所へ嫁がせていただきます』

「お主は何を言うておるのだ。誰もそんな話はしておらぬぞ」

拍車の掛かり始めたエレノアの暴走をヴァンが一蹴する。

「Κατανοητό」

「Επίσης, θα ήταν εντάξει αν σας μιλούσα στα Ιαπωνικά?Αυτά τα δύο άτομα μπορούν να επικοινωνούν μόνο στα Ιαπωνικά」

「Βλέπω……『エリーを参考にさせていただきました。これで通じますか?』

黙って傍観していた瑞希と大輔だったが、いきなり女性の声が脳内に聞こえ、一瞬驚きの表情を浮かべる。

しかし、エレノアとの会話で慣れていた事もあり、直ぐにドリュアスの声だと認識が出来た。

ドリュアスが念話に切り替えたのはヴァンのおかげである。

ヴァンがドリュアスに頼み、瑞希と大輔も理解出来るようにと念話の使用を依頼したのだ。

もしかしたら通訳を頼まれるのが面倒と思い先手を打っただけかもしれないし、エレノアの暴走を2人に止めてもらう為にも会話に参加してほしかったのかもしれない。

何にせよ、これで瑞希と大輔も会話に参加する事が可能となった。

「はい。ありがとうございます。ちゃんと通じています」

「そう言う訳だ。エレノアに与える魔力量を増やしてはやれぬか?」

『ヴァン様ってば恥ずかしがって可愛いですわ……。エリーでよろしくってよ』

『領主様のご命令とあらば出来る限りの事はしたいのですが、やはり魔力量の問題でしたか。それは困りましたね……』

「命令をするつもりは毛頭無いが、何か問題でもあるのか?」

『はい。私自身の魔力量ではこれ以上の供給は難しいのです。勿論、エリーへの供給量を増やす事は可能ですが、そうなると私の魔力が枯渇してしまい、マンドレイク達を利用した情報ネットワークが使用不可能になる可能性もあり、いざと言う時に対応が出来なくなる可能性が出てきます』

エレノアの妄言を無視し、会話を続けるヴァンとドリュアス。

完全に会話の妨げにしかなっていないので2人の選択は最善と言えるだろう。

そしてエレノアも自分の思っている事を口にするだけで満足しているらしく、無視されている事に関しては何の反応も見せていない。

「ふむ……。それは困るのぅ。森の管理を任せている身としては看過出来ぬ問題だ。ドリュアスには余裕を持った行動を望んでおる」

「マンドレイクの情報ネットワークって何?」

ヴァンとドリュアスの会話を傍観していた瑞希だったが、聞きなれない言葉につい口を出してしまっていた。

『マンドレイク達には森の状況を定期的に、そして森に異変があった場合は速やかに報告するよう指導しています。報告は今の様な念話の長距離版と考えていただければ分かりますか?』

「それって今みたいにエレノアが抜けても大丈夫なの?」

『エレノア様よ』

『はい、全く問題が無い訳ではありませんが、エリーの報告範囲は他の者もカバーしています。勿論、エリーのみならず報告範囲は複数人がカバーし合えるように配置しております。ですのでマンドレイクの量自体は半分以下になっても情報ネットワークは機能します。ですが、複数人から同様の情報を得られる事は重要で、1人に任せると誤報の恐れも高まります』

「うむ。人員をぎりぎりに抑える必要はない。……いや、寧ろ抑えてはならぬ。それこそエレノアの様に不測の事態が起きた場合、対処に困ってしまうしのぅ」

『領主様のおっしゃる通りです。そこでご提案なのですが……領主様の下でエリーを預かってはいただけないでしょうか?』

ドリュアスの提案を聞いたヴァンの顔が一瞬歪む。

一瞬の表情の変化だったものの、ドリュアスは見逃していなかった。

『やはりダメですか……』

「いや、ダメと言う訳ではないのだが……」

老人との平穏な暮らしを邪魔されるのを嫌ったのだろう。

最後までは語らず濁した返事をしたものの、エレノアの言動を鬱陶しく思っているであろう事は想像に難くない。

『つまり、ドリュアス様御公認で嫁ぎ先が決定したって事ですね!?』

『エリー、口を慎みなさい。そう言う所ですよ。冗談では済まない問題です。あなたの生涯にかかわる事……延いては森全体の問題です。自重しなさい』

今までは対応すれば面倒になりそうだと言う理由でエレノアの言動を無視し、会話を続けていたがエレノアのはしゃぎ様を到頭叱り付ける事となった。

エレノアをヴァンが引き取らない場合、ドリュアス自身の負担が増える一方なのでタイミング的には当然とも言えよう。

『私の所為だと仰るのですか?』

『他に何の理由があると言うのですか』

「お爺さんも人手が足りなくてお墓まで手が行き届かないって言ってたし、下働きなり使用人として雇ってあげれば良いんじゃない?」

『確か中埜瑞希って言ったわね。アンタなかなか良い事言うじゃない。特別にエレノアと呼び捨てで呼ぶ事を許可してもよろしくってよ』

当人ヴァンの気持ちを考えず、空気の読めない発言をする瑞希。

そして、ドリュアスの説得も空しく瑞希の案に乗るエレノア。

先程まで咎められていた事を反省する素振りは一切ない。

「うーむ……。お主、何が出来る?」

『空中浮遊……』

「電球の交換に便利そうだよね。LEDなら交換する頻度が低いから出番は少なそうだけどね」

『自動翻訳、念話……』

「通訳向きだな。まあ、ヴァンは日本語も流暢だし今の所は不要だな」

『あんたたち煩いわね……。少しは役に立ちそうな事言いなさい。……あっ!あとはマンドレイクのネットワークに介入出来るわ。ドリュアス様に伝えるだけでなく、盗聴や他のマンドレイクとの会話も可能よ。声真似をすれば情報の改竄もお手の物よ』

自分の煩さは棚に上げるエレノア。

『そんな話、伺った事ありませんよ。あとで話をする必要がありそうですね』

『あ……、やばっ……。今の無しで』

ヴァンに良い所をアピールしたいと思うあまり余計な発言をしたようだ。

エレノア自身その事に気が付いていなかったが、ドリュアスの反応で全てを察したのであったが、時すでに遅し。

「マンドレイクとの会話か……。エレノアよ、主は植物の育成などは得意か?」

『植物?他のマンドレイクやドリュアス様の様な意思を持った者とのコミュニケーションはともかく、そこかしこに生えている草花の話なら気持ちが多少分かる程度ですわ。水が足りてないとか日が当たってないとか、その程度なら可能ですわよ』

「ふむ……。それで十分だ。よし、主を庭師として採用しようではないか」

『ほ、本当によろしいのですか領主様。今ならまだ考え直す事が可能ですよ?』

ヴァンの突然の発言にエレノアを預けたかったのか預けたくないのか謎な発言をしてしまう。

エレノアと言う不安要素を払拭出来る事への安堵感とヴァンに迷惑をかけてしまうのではないかと心配する感情とで葛藤するあまり混乱してしまっているのだろう。

「問題ない。瑞希の言う事も一理ある」

「電球交換?」

「否、爺の事だ。余も爺に甘えて全てを任せている節があるのは理解しておる。爺の負担を減らすべきと余も常々懸念しておったのだ」

『領主様がそう仰るなら……。エリー、失礼の無いよう領主様に仕えなさい』

『はい!これからはヴァン様と1つ屋根の下で……むふふ』

エレノアの返事を聞き、心配が絶えず、頭を抱えるドリュアスであった────。


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