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単純なお使いクエストだったとしても物をタダで貰える訳ではない第42話

そんな悪路を歩く事2時間弱……。

「到着したぞ。ご苦労であった」

「やっと着いたか」

「疲れたー」

ようやく目的地に到着した。

当初ヴァンが予定していた時間よりも早く目的地に着いた。

早く着いたのには理由があった。

ヴァンとしては瑞希と大輔の体力の事を考え、何度か座って休憩するつもりだったのだが瑞希が頑なに休憩を取ろうとしなかった為だ。

休憩を取るとしても水分補給の為に数分間立ち止まる程度のもの。

ヴァンも2人の体力が問題ないならばと瑞希の案を了承し、進み続けた。

結果として予定よりも早く目的地に着いたのもの、2人の体力は限界に近い。

目的地に着いた途端、座り込んでしまっている。

そして、目の前の大きな泉の中央に聳え立つ巨木と言った神秘的で感動的な光景に全く目が届いていない。

「Είναι η Δρυάς εκεί?」

座り込む2人を他所にヴァンは巨木へと向かい声をかける。

ヴァンの声に呼応するように巨木が発行し始めた。

巨木を包む光が1点に集中すると光の中から緑色の髪の美女が姿を現した。

その一部始終を目にしていた瑞希と大輔。

暫時、呆然としていた大輔の口から声が漏れる。

「そうか……ドライアドだ……」

その声は近くに居た瑞希が辛うじて聞き取れる程度の音量。

しかし、瑞希は大輔の呟きを聞き逃さなかった。

「ドライアド?木の精霊だっけ?ドリュアスさんがドライアドって事?」

「そう……。いや、違う。ドリュアスって言うのがドライアドを指す言葉なんだよ。何で今まで思い出せなかったんだ……」

「どういう事?」

「日本人って言うかJapaneseって言うかの違い。ドライアドは元々ギリシャ神話に出てくる精霊で、ギリシャ語ではドリュアス表記って言えば分かるか?」

「なるほど」

「ちなドリュアスの複数形はドリュアデス、ドリュアスの英語読みがドライアド、フランス語がドリアードな、ドリュアスと区別は無いが、時としてハマドリュアスって呼b────」

「あ、その情報はいらない」

妖怪オタクの無駄知識に移行し始めた雰囲気を察した瑞希が大輔の説明を早々に拒否する。

そんなドライアドの情報を話している2人を気にする素振りも見せず、ヴァンとドリュアスは何やら話し込んでいる。

しかし、日本語を使用していないので瑞希と大輔の2人には何を話しているのか理解出来ない。


暫くヴァンとドリュアスの会話を眺めていた瑞希と大輔。

唐突にヴァンが瑞希を手招きする。

「大輔来るのだ」

「俺?」

「他に居らぬ」

「だよな」

大輔は立ち上がり、ヴァンの下へ移動をする。

瑞希は呼ばれていないのだが、大輔の後に続く。

「で、何だ?」

「マタタビの絵を描くのだ」

そう言うとヴァンは大輔に気の枝を渡す。

大輔は指示通りマタタビを地面に描く。

「こっちの丸いのが実でこっちは葉っぱ。これが花だな」

「大輔、お主絵心が……」

「皆まで言うな。確かに美術の成績が悪かったのは認めるが、マタタビの実も葉も花も特に特徴が無いんだよ。これでも結構似てる方だと思うぞ」

「確かにこんな感じだったかも」

横で見ていた瑞希が大輔の意見に同意する。

「Καταλαβαίνεις?」

ヴァンの問いに首を横に振るドリュアス。

どうやら大輔の絵ではマタタビを理解出来なかったようだ。

「……仕方ない。大輔よ、少し思考を読み取っても良いかのぅ?」

「プライバシー保護の観点からちょっと……」

「何を言うておる。マタタビを思い浮かべれば良い。他の事は読み取らん」

「あ、そう言う事なら」

「Δρυάς Κάνε το」

ドライアドは軽く頷くと大輔の顔に手を添え、顔を近づける。

「わっ!ちょっ!何!?」

大輔は突然の事に動揺を隠せず、顔を赤らめ数歩後退りしてしまう。

「何をしておる」

「いや、ちょっと驚いただけだ。気にすんな」

数回深呼吸をしてからの返事。

気を取り直して再度ドリュアスが大輔に近づく。

勿論、大輔が想像する様な事は一切起きず、数秒ドリュアスの額と大輔の額を突き合わせるだけだった。

何もなかったとは言え、美女に両頬に手を添えられ、額を突き合わせる行為。

短い時間だったものの、大輔は緊張のあまり硬直してしまっていた。

危うくマタタビの事が頭から抜け落ち、あらぬ妄想で思考が支配されそうだったものの、ギリギリの所を理性で抑え込んだ。

正直に言うと理性ではなく、ドリュアス本人に厭らしい想像を読み取られる危険性を考えたからだ。

ヴァンは他の情報は読み取らないと言ってはいたが、マタタビの事を全く思い浮かべていなかった場合、例外も考え得る。

もしかしたらヴァンが言っているだけで本当は想像している事を全て読み取られる可能性もある。

色々な憶測が頭をよぎる中、邪念を払うように目を瞑り、タタビの事だけを考えるよう全身全霊かけただけの話だった。


数秒間の出来事だったが、大輔にとっては物凄く長い時間に感じられた。

「Νομίζω ότι δεν υπάρχει πρόβλημα.Καταλαβαίνετε την ταξινόμηση?」

大輔の側から離れたドリュアスがヴァンに何やら話しかけている。

ヴァンは大輔の方に向き直ると大輔に質問をしてきた。

「マタタビ科マタタビ属ツバキ目と言っておったな?」

「あぁ、記憶違いがあるかもしれないが、そう記憶してる」

「Λέγεται ότι ανήκει στο γένος Actinidia、στην τάξη Camellia、οικογένεια Actinidae」

大輔の返答を聞き、ヴァンはドリュアスに伝える。

ドリュアスはヴァンの目の前に両手を差し出す。

すると両手から光が溢れる。

暫くすると光の中央から何かが出現し、ヴァンの両手にパラパラと落ちる。

何かの種子。恐らくマタタビの種だろう。

「出来たのか?」

「うむ。あとはこれを蒔けば良い。株を分ければ増産も可能だ」

「すぐに帰るの?」

「いや、こやつに要請されていな。一種の交換条件だ。少し寄る所がある。それよりもお主ら腹は減っておらぬか?」

「減ってないって訳じゃないけど、昼にはまだ早いって感じかな。数時間なら余裕で持つな」

「僕もそんな感じ。お昼にするって言われればお昼にしても良いかなってくらい」

「そうか。では、余がこやつの依頼を熟してから食事にするとしよう。お主らはどうする?ここで待機しておくか?ついてくるか?」

「何するの?」

「マンドレイクを1人見てほしいと言われただけだ」

「マンドレイク……?」

「マンドラゴラだな」

「あー……。そう言われるとマンドレイクって聞いた事あるかも。……って大丈夫なの?マンドラゴラって抜く時に悲鳴を上げて、その悲鳴を聞いた人は死ぬとか正気を失うとかって言われてる植物でしょ?」

「何を言うておるのか知らぬが問題は無い」

ヴァンの口ぶりからするに瑞希がするような心配はないようだ。

今回も元の世界の常識が通じないパターンなのだろう。と瑞希は割り切る。

「安全ならマンドラゴラ見てみたいから行きたい」

「俺も興味ある」

「では決まりだな。場所は近く故、無駄な荷物は置いて行っても構わぬぞ。Πάω να τελειώσω μια δουλειά.Θα φάμε μεσημεριανό όταν επιστρέψουμε」

「Το έπιασα.πρόσεχε」

ドライアドに見送られ、3人は再度森へ入るのであった────。


次回投稿は2024年年末(予定)です。

恐らく12月29日~31日のどこかで再開。

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