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当事者にとっては当然の事なので事の重大さに気が付きにくい第39話

獣道を抜けると広く開けた空間が出現。

その中央、台座に突き刺さる剣が鎮座する姿を確認する事が出来る。

「アレがそうか?」

「うむ」

「何かRPGに出てくる伝説の剣って感じだね」

「だな。神秘的って言うか何と言うか。上手く言葉に出来ないけどスゲーな」

瑞希の言う通り、RPGに出てくる聖剣のような神々しさを感じる事が出来る。

月明りが台座を照らしている事も相まって、より一層神聖さを際立たせているのだろう。

この光景を目にした瑞希と大輔はヴァンの言っていた『世界を統べる強大な力』の話も強ち嘘ではないのではなかろうか。と感銘を受ける程の美しい光景であった。

「よし。では、ここで一夜を明かすぞ」

「剣は抜かないの?」

「翌朝で良い」

「大丈夫なのか?」

「何がだ?」

「野生の動物が襲ってきたりしないか?」

「問題ない。この周辺で余の脅威になるような生物はおらぬ」

「ヴァンくん夜行性じゃないの?」

「普段はそうだが、昼行性の生活でも問題は無い。何なら数日寝なくとも問題は無い。明日も移動で歩く事になる。お主らは余の事は気にせずゆっくり休息するが良い」

そう言うとヴァンは手際よく枝などを拾い集め、焚火を完成させた。

「慣れてるな」

「数年に一度とは言え戻ってくるのだ。周囲の清掃も兼ねて毎度やっておるからな」

始めのうちは気が付かなかったが、良く観察するとヴァンが焚火をしている場所は他の場所より数cm低く周囲には大小さまざまな石が円形に積んでいた形跡がある。

流石に数年に1度なので前回の焼け跡は残っていないし、風などの影響なのだろう、石で作られた円も所々崩れている部分や欠損している部分もある。

「だから戻ってくるのかもね」

「それなら、ここまでの道程の雑草も切りながら進めば良かったんじゃないか?」

「あー……。それは昔はやっておったんだが、数年経つと元通りになってしまうからな。面倒になって強行突破するようになっただけだ。流石に余が通れぬ場合は切るなり折るなりするがな」

「なるほどな」

思い返してみると、ヴァンの身長よりも高い位置の枝葉は多かったものの、それ以下の部分は藪から延びる雑草が大半だった。

特に理由は無いが、瑞希と大輔も開けた空間内の清掃を手伝う事にした。


一通りの清掃を終え、焚火の近くに一纏めに。

「ご苦労であった。後は余の仕事だ。主らは休め。明日に響くぞ」

「じゃあお言葉に甘えて」

「2人ともおやすみー」

焚火を囲み3人は休憩を取る事となった。

瑞希と大輔は眠り、ヴァンはゴミの焼却が終了するまで焚火にゴミをべ続けたのであった────。


翌朝……。

瑞希と大輔は木々の間から刺す光で目が醒める。

ヴァンはゴミを焼べ終えた後、眠りについたらしい。

今も座ったままの状態で身体を丸めて眠っている。

気持ちよさそうに眠っているヴァンを起こすのを躊躇った2人は極力物音を立てないように気を使い少し離れた場所に移動をする。

移動をしたのは剣が突き刺さっている台座付近だった。

「せっかくだし記念撮影がしたいな。大輔、1枚撮ってもらって良い?」

「良いけど何撮るんだ?」

瑞希は大輔にスマホを渡すと質問に答えず台座に昇ると剣の柄を両手で握る。

「こんな感じの1枚。聖剣を抜く伝説の勇者な1枚でお願い」

「りょーかい」

瑞希もまだまだガキだな。と心の中で呟きながら撮影をする。

撮影した画像を瑞希に確認をさせたところ、瑞希も満足したようだった。

瑞希の事を『ガキ』だと心の中で馬鹿にはしたものの、いざゲームの一場面のような台座の上に立つと瑞希の気持ちも何となく理解が出来てしまう。

「俺も1枚撮って」

少年心をくすぐられた大輔も我慢出来ず、記念撮影をする事にした。

「どんな感じにする?」

「そうだな……。どうせなら剣を抜いて天に掲げる感じにしようかな」

そう言うと大輔は剣に手を掛け引き抜こうとする。

「……抜けない」

始めは片手で簡単に抜けるものだと思っていたのだが、剣を両手で掴み精一杯の力で引き抜こうとしたのだが、一向に抜ける気配がない。

「え?本当に?冗談じゃなくって?」

大輔が瑞希の事を騙そうと一芝居打っているのではないかと疑い、瑞希自身も剣を抜こうと試みる。

「本当だ」

「だろ」

瑞希も大輔同様、剣を抜く事が出来ない。

剣か台座のどちらかに何らかの仕掛けがあって施錠されているような状況にあるのだと考えたのだろう。2人は記念撮影の事を忘れ、剣と台座の観察を始める事となった

瑞希は剣を大輔は台座を重点的に観察している。

「この剣カッコイイよね。鍔の部分は蝙蝠を模してるのかな?特殊なデザインだよね」

剣を観察していた瑞希は剣を抜く事すら諦めたのだろう。

剣についての感想を述べ始めた。

「分かる。やっぱり剣とか銃って男のロマンだよな」

台座にも仕掛けが見つからず、大輔も剣を抜く事を諦め、瑞希の意見に賛同しつつ剣の鑑賞をする事にした。


そんな折、瑞希と大輔の立てる物音で目が醒めたのだろう。

ヴァンが2人の下へ近づいてきた。

「ヴァンくん、おはよー」

「うむ。お主ら何をしておるのだ?」

「暇だったから剣を抜こうと思ったんだが無理だった」

「勝手にごめんね。もしかして触ったり抜いたりしたら駄目だった?」

「いや、問題は無い」

ヴァンは徐に剣に手を掛けると片手で軽々と剣を引き抜いてしまった。

「「!?」」

驚きで声を出せずにいる瑞希と大輔。

簡単に剣を引き抜いたヴァンに驚いたのもあるのだが、それ以上に驚く光景を目の当たりにした。

それは剣が形状を変化させたのだ。

台座に刺さっていた時は鍔の部分が特徴的な以外は何の変哲もないブロードソードの様な真っ直ぐな剣だった。

しかし、今、ヴァンの持っている剣は刀身が赤黒く変化し、形状はファルシオンのような曲線を描いている。

1つ残念な事があるとするなら、ヴァンの体格だろう。

小柄なヴァンが持つには不釣り合いな大剣。

剣自体の格好良さはあるものの、お世辞にも様になっているとは言い難い。

「驚かすではない。普通に抜けるではないか」

ヴァンが台座の上に剣を無造作に置く。

ヴァンの手を離れた剣は再度ブロードソードの形状に戻っていた。

「「……」」

状況の整理が追い付かない瑞希と大輔は口をポカンと開けたまま硬直している。

「そう言えば爺が朝食を持たせたのだった。食事にするが良いか?まだ早いか?」

「あー……ありがとう。朝食で大丈夫……だよね、大輔」

「うん。問題ない」

剣について必死に思考を巡らせていたのを諦め、機械的に返事をする瑞希。

大輔も瑞希の意見に同調する。

2人の返事を聞いたヴァンは3人が寝ていた場所に引き返していった。

瑞希と大輔はヴァンの後を追う前に少しだけ剣に触れる事にした。

「普通の剣。軽くはないけど鉄の塊だと考えれば妥当な重さ」

「だな。……考えても分からんし行こうぜ」

剣と台座に仕掛けらしい仕掛けはない。

瑞希たちには知りえない仕掛けがあるのか、ヴァンが見た目に反して怪力なのか、あるいは他の理由があるのか……。

考えるだけ無駄と判断した2人は考察を諦めヴァンの後を追い朝食をする事にした。


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